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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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良い休日の一コマ


『人間、死ぬ気になればなんでもできる』


そんな、向こうの世界のどこかの誰かが言った言葉がある。

突然だがそれについて、是非とも俺個人の考えを述べさせてほしい。


…死ぬ気でやるなんて、そんな事何度も繰り返していたら、命が幾つあっても足りないよ?

何事も、程々が一番だと思うのです…。


先程までの自分が、ちょうど死ぬ気で事に臨んでいたという認識がある為か、そんなことを頭に思い浮かべていた。


では、現に死ぬ気で事を成し遂げた結果、俺がどうなったかというと、草むらで大の字に寝転がりながら魂の抜け殻と成り果てていたのだった。

命が一つで足りて感謝しなくてはならない。


「つ、疲れた…」


そんななんの捻りも面白みもない言葉が溢れてしまう。

というのもそもそも。

徹夜からの軍隊式行進をこなし、更には大量の料理を妥協なく作り上げるというハードスケジュールをこなした直後な訳だ。

こんな格好になるのも、流石に致し方ないと許してほしい。


それにしても、最後の方は半場ヤケクソになりながらも、なんとかやり通すことができた。

改めて我ながらよくやったもんだと感心する。


しかし、困ったことに限界まで稼働していた反動なのか、食欲もまったく沸いてこない。

いっそこのままふて寝でもぶっこいてやろうかと考え、次第に襲ってきた睡魔にまどろみかけていた。

そんな時の事だった。


「…はがっ?!」


突然何かを口に放り込まれ、驚きのあまり咄嗟に身体起こしてしまう。


「……ん??」


一度落ち着いて口から飛び出ているものを確認する。

すると、どうやらメェーチェル(フランスパン)をそのまま口の中に突っ込まれていたようだった。

きっとこの時の俺は、傍から見ればさぞ間抜けに見えたことだろう。


「はがはが?」


「……」


パンを噛み切るようにして、もぐもぐと口を動かしながら視線を向けてみると、ミラがいつもの無表情でこちらを伺っていた。


「…これからやることがあるから、食べておいて」


いまだもぐもぐとしていた口を動かしながら、コクリと顔を頷くようにしてそれに答える。


その後、言われた通りパンを平らげた。

不思議なことに、食欲がなかった筈なのに何故か美味しく食べれてしまった。

結局は気分の問題とは、我ながらいい加減な腹をしていて困る。


「そういや、あいつらはどうしたんだ?」


ふと昼食後から姿が見えなくなっていた二人に関心がいった。

ミラはその質問に対して、教会に向かって指をさすようにして答える。


なるほど。教会を探索中ってとこか。

まあ、年齢の割にやたらと大人びているあの少年はさておき、ラルあたりの男の子といえば、好奇心の塊みたいなものだろう。

それを考えれば無理もない。


「そっか。…それにしても、ここに来るのも久々だな」


宿り木亭での忙しく充実した日々が過ぎ去っていく中で、あの時のミラとの衝撃的な出会いも、昔の事のように感じられていた。 


「…そうだね」


そう小さく呟いたミラは、嬉しい事と嫌な事が同時に訪れたかのような、複雑な表情を浮かべていた。


果たして、そこにあるのはどういった感情なのだろう。

まったく、そんなことも理解できないなんて。きっとミラマスターを名乗るのも、まだまだ程遠いレベルなのだろう。


「さてっ………うーーーん」


気分を切り替えるようにその場に立ち上がり、両腕を空に高くつき出すように、大きく伸びをする。


「よっしゃ。ミラも本来の予定があることだし、俺もさっさとたくさん飯食って、あいつらと合流しなくちゃだな。ミラも付き合ってくれるか?」


「うん」


そう呟くミラは、ほんの一瞬だけ笑顔を浮かべたように見えて、思わずハッとしてしまう。


「…ミラ、今のもっかい。リピートプリーズ」


「………りぴいとぷりいず?」


いけない。思いがけずミラに新たな知識を授けなくてはならなくなってしまったようだ。


まあいい。いくらでも説明してあげよう。

今はひたすら気分が良いし、時間もあるはずだ。

うん。今日はとても良い日になりそうだ。

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