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俺の異世界転生が完全にやっている件  作者: 箸乃やすめ
二章 俺の異世界転生は前途多難
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後悔先に立たず


宿り木亭の怒涛の1日が、今日も終わる。


明日の仕込みなども一通り終えた俺は、部屋で横になりながらくつろいでいた。


「マズったよなぁ…」


それは、完全な失敗だった。

せっかく入ってきた新人に接する先輩としては、最悪の部類に入るだろう。


「はぁ…」


これがいったい何回目の溜息になるのか。

どうにも落ち着かず、寝返りも何度も繰り返していた。


しかし、いい加減情けない自分を切り替えなくてはならない。

そんな事も当然頭では理解していたのだが、どうにも気持ちが納まらない。

思えば、向こうの世界でも他人との距離を測り間違えてしまうことは度々あった。


その都度俺といえば、自分を正当化したり、誤魔化したりをして、気づけば人間関係というもの自体から逃れ、自分の世界に没頭していたものだった。


いい加減、この世界でもそんなことを繰り返すわけにはいかない。

こうやって転生する機会に恵まれたのも、何か意味があるはずだ。

ここでウジウジしている暇があるのなら、少しでも行動に移すことにしよう。


そんな風に思い至った俺は、さっそく下の階に移動して、少年との和解の為に事前準備を行うことにしたのだった。



階段を下る途中、1階のフロアに人の気配があることに気づく。


「そっとしていてね。すぐにやっちゃうから」


この声は、ミントちゃんのものだろうか。

なにやら下でやっているようだが、このまま俺が出て行くと、なにかと邪魔になってしまうかもしれない。

はて、どうしたものかと考えてしまう。


そんな迷いの中にいた俺は、盗み聞きのような罪悪感に苛まれながらも、二人の会話に耳を傾けてしまっていた。


「余計なお世話だっつーのによ…」


「ダメだよ?お客様だって身なりは気にするものなんだから。このままの格好で仕事をする事は、この経営責任者が許しません」


「こんな事までするなんて、経営責任者様は随分と権限があるんだな…くそっ」


「ふふっ。分かったら観念して動かないでね?」


そこまで聴いて、流石に盗み聞きしている事に我慢がならなくなった俺は、その場にのこのこと出ていく事にした。


ここで突然だが、俺の座右の銘を紹介しよう。


『人生はいきあたりばったり。なるようにしかならない』


要するに考える事が苦手なので、目の前の事をやるだけということだ。

これに関しては、穴しかない理論であることは重々と承知しているつもりなので、深く追求しないでもらえると非常に助かる。


「お邪魔しますよっと」


「あっ、ソラさん。こんな夜分にどうかしましたか?」


「……」


二人の会話とこの状況から察するに、どうやら新しく入ってきた少年の身なりを整えているのだろうことが理解できた。


その少年は椅子に腰掛け、頭以外の身体を覆うように布を被っている。

また、その背後には鋏のようなものを持ったミントちゃんが、微笑みを浮かべていた。


「これからだって時に、悪いな。そのまま散髪を始めてくれていいから、少し話をさせてくれないかな」


「はい。私は別に構わないですけど…」


「……」


その少年といえば、俺の方に敵意のある視線を投げかけるのみで、決して言葉を発しようとはしなかった。

きっとそれだけ、この少年にとっての地雷を踏んでしまったということだろう。


「じゃあ、とにかく始めちゃいますね」


ミントちゃんの気遣いが身に沁みる。

とにかく、俺にとってはここからが勝負だった。

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