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拝啓家族へ。  作者: 生田りょう
上書き
2/3

 ペットボトルが汗をかいて水滴がアスファルトに落ちる。一瞬、丸の模様が出来るがすぐに蒸発して消え去った。僕のトラウマもこんな風に消えてくれたら、どんなに楽だろうか。

「カフェとかないのかな」

 歩きながら過去のトラウマに浸るのはもうよそう。心と体のダメージで死んでしまう。

 学校の最寄り駅から、二駅後に降り立った僕には土地勘はなくて涼める所を探すのにも一苦労だ。どうやらここはオフィス街で、周りにはビルしかない。すれ違うサラリーマン達は長袖を着ている。大人は大変だ。

「あっち何かありそうだな」

 この辺りは、程よく自然と共存していて所々緑も見える。二駅違うだけなのにこんな緑が多いのか。少し不思議だ。何となく木々が生えている方向へ足を進める。

 真上から降り注ぐ暑い視線を遮る物なんてなくて、歩けば歩くほど体温が高くなっていく。カフェというお宝を探すハンターみたいに、僕はどんどんと緑の中へ突っ込んでいく。

「あ!」

 思わず大きな声が出た。目的のお宝を発見したから、反射的に反応してしまった。カフェではないが雰囲気が良さそうなお店だ。

『純喫茶みやび』

 なんとも和風で旅館のような店名。外壁は赤茶色のレンガでデザインされていて、入り口の右側に扇型の小さい花壇がある。二段で構成されている土留めもレンガで統一されていて、アンティーク調でまとめられている。刺さっている小人の小物が可愛い。うさぎもいた。

 打って変わって出入り口の扉はステンドグラスで覆われていて、西洋風だ。そして、中の様子は見えない。こじんまりとしているから多分、中はそんなに広くなさそうだ。

「何だか、おしゃれだな……」

 年季が入ってる外看板を見つめて、入店するか迷う。重厚感とレトロ感が混在しているこのお店の客層は、おそらく上品な大人の男女。汗まみれの制服を着た男子高校生の入店を許してくれるだろうか。

 少し不安になったが、純喫茶にドレスコードはない。汗だくの制服を纏っている人間にも入る権利はあるはずだ。

 それに、目の前のお宝を逃してまで次を探す気力も体力も僕にはもうない。とにかくクーラーの効いたところに入りたい。細胞が訴えてきてる。

「……入ろう」

 今日だけの出会いだ。何を思われても別にいい。そう強引に言い聞かせ、強気の思いを手に込める。

 そして、扉の取手を握り一世一代の決意を固め勢いよく開いた。

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