序章
――――――ずっと諦めて生きてきた。
私なんてこのまま、虫けらのように死んでいくのだと。
自分が人間だなんてことを忘れて、絶望に身を任せて。
それなのに、
「―――――――?」
あぁそれは、まるで干からびた魚に水をやったように。一瞬で、私を――――――
「嫌だ、私だって人間だ・・・・・・っ!!」
私を、人間に戻してしてしまったのだ―――――――
***** *****
私の母は魔女だった。
魔女になる方法は二つ。悪魔と契約するか、悪魔と魔女の間の子供のどちらかだ。
他にもあるかもしれないが、一般的なものはこの二つ。
女が魔女になる場合は大体悪魔に操を捧げて契約をする。私の母が魔女になった際もそうしたらしい。
そう、お察しの方もいるかもしれないが私はその契約の時に授かった子である。
とどのつまり父親が悪魔ということになるが、遺伝子的には悪魔が憑依した男と人間の母の子供だ。
基本的に悪魔は私たち人間の住む世界に生身で来ることはない。というより、正確には来れないのだ。
彼らの身体は、こちら側の世界では存在を保つことができないらしい。物質の概念だとかが違うらしい。
反対に悪魔と魔物以外の生物――――人間やほかの生物はあちら側では肉体を保てない。
だからこちらの世界に干渉するときにはこちらの世界の生物に憑依するのだ。
そういう経緯で生まれた私だが、初契約時に授かった子供ということでそれなりに生贄としての価値が高く、赤ん坊のころから大きくなったら生贄になることが決まっていた。
もちろん、母と契約している悪魔は仮にも私の父親なのだが――――
そんなことは悪魔や魔女はお構いなし、それどころかそれによって生贄としての価値も上がるという。
つくづく傍迷惑な両親である。まぁそいつらを世にいう親と思ったことなどないのだが。
そんなわけで物心ついた頃から、母は私の生贄としての価値を高めるために黒魔術を施してきた。
細かい描写をすると色々と問題が発生するので控えるが、とある世界の極東の国にある呪術などと似たものを想像してくれるといいだろう。
魔術的価値が高いほど生贄としての価値も上がる。もちろん私は色々な種類を山ほど重ね掛けされている。
生贄としての価値を上げるのならば穢れがないように育てる方法もあるのだが、そもそも私は生まれついての魔女なのでそれはどう足掻いても無理である。
そんなわけで心を殺し、ただ生贄の材料として生きてきた。
十歳の誕生日、母は私を悪魔に捧げた。
ようやくこの日々が終わると思った。
悪魔がある提案をするまでは――――――。
「俺と契約するなら命だけは助けてやる」
「え・・・・・・」
「お前もこのまま死ぬなんて嫌だろう?――――――人間ならな。」
にんげん――――――
皮肉にも、初めて私を人間扱いしてくれたのが、すべての元凶のこの悪魔だったのだ・・・・・・
「い、嫌だ・・・・・・私だって、人間だ・・・・・・っ!!!」
生きたい、もっと、今度は――――――っ今度こそ、人間として!!!
そうして私は、悪魔の手を取った。
頑張って続けたいと思います~(;'∀')




