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魔術師ビアンカのお料理教室

第二十三回開催は2月17日(土)

お題「いいこと教えてあげる」/チョコレート

2月14日はバレンタインデー、2月17日は天使のささやきの日です。

作業時間

2/17(土)

23:05〜23:47

 二月十四日、バレンタインデー。猫も杓子もチョコチョコチョコ……。

 弟子のロッソがとんがり帽子をひょこひょこと跳ねさせてやって来た。私の顔を見るなり、ロッソは手を出す。

「貰ってあげてもいいよ」

「何を」

 いや、聞くだけ野暮だ。チョコレートの事を指しているのだろう。私はロッソの頭を小突いた。

「あんたにあげるなんて言ってないでしょ」

 ロッソは頭をさすりながら、若草色の瞳をぱちぱちとさせ、それからふくれっ面をしたかと思うと、急に意味深な笑いを浮かべた。

「いいのかなあ」

 なおも含み笑いを浮かべるロッソに気味が悪くなり、私が何よと憮然とした表情を浮かべると、ロッソはとんがり帽子のつばをちょんと抓んだ。

「バレンタインデーにチョコレートを貰えない男はごまんと居るけど、チョコを“あげられない”オンナは寂しい」

 私はカッとなって棚にあった薬瓶を投げつける。ロッソはぎゃっと言って飛び退く。紫色をした液体が床に広がると、蒸気を上げながら染み込んでゆく。

「あっぶねーな! 何すんだ」

 抗議の声を上げるロッソを尻目に、私は向きを変え、書棚の方へ歩いて行く。確か“チョコレート”のレシピがこの辺りに……。

「ビアンカ?」

 ロッソがおそるおそる名を呼んだ。私はつばひろのとんがり帽子をひと撫ですると、樫の木で出来た魔法の杖をくるりと回す。

「ええと、カカオにココアにミルクにオレンジっと……」

 私が釜にぽいぽいと材料を投げ込んでゆくのをロッソが心配そうに見守る。仕上げに黄金色に輝く粉をぱらぱらと振りかけると、杖でひと叩き。たちまち煙がわき上がり、ころころと褐色の色をしたチョコが釜から飛び出してきた。それを器用に籠でキャッチする。

 ひとやままるまる籠に放り込んでから、小箱に四つずつ詰めていく。箱詰めも、チョコが跳ね飛んで勝手に入ってゆく。

 綺麗にラッピングをして、私は小箱の入った別の籠をロッソに押しつけた。

「これを街に持って行きな」

「おれにはくれないのに、街の子供にはくれてやるのかよう」

 不満を口にするロッソを追い出すように外へとやる。べそをかきながら、ロッソはほうきに跨がって街へと飛んでゆく。

 その間私はしめしめとほくそ笑んだ。バレンタインデーはこうでなくちゃ。

 ――三日後。

 街に高熱が流行りだした。医者にもまじない師にも治せない病。街の者は魔女の呪術に縋るようになる……。

 カラの薬瓶を沢山買い込んで来たロッソはふうふう息を切らせながら、私が作った薬を瓶に詰めてゆく。

 この熱はあと一週間したら綺麗さっぱり治る。

 ロッソはくたびれたと言って椅子に座ると、テーブルに突っ伏してしまった。テーブルには銀貨の山、山、山。

「いいこと教えてあげる」

 ロッソが顔をこちらに向けた。

「ヒトからタダで貰ったモノを食べるとこうなるの」

 ロッソは震え上がった。当然と言えば当然ね。ただし、と私は付け加える。

「魔女が真心込めて作ったチョコを捨てたら呪われるけどね」

すみません、先週アップし忘れました……。

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