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第4話

 なぜだかよくわからんが、俺はおっさんに絡まれてた女と一緒に歩いていた。

 俺も女の方も、一緒にいる理由を聞かれても答えることなどできないだろう。

 それでもあえて言うならば、なんとなく流れで、とかしか言いようがない。


 歩きづらいほどではないが、人通りは結構ある。離れて歩いたら見失ってもおかしくないくらいの人込みだった。


「ええと、一応確認しておくけど、あんたも花見オフ参加者でいいんだよな?」


「あ、はい。アヤって言います」


「そっか、よかった。俺はカリヤ。その、よろしくな」


「はい、よろしくお願いします。

 ……あの、よかったって何がですか?」


「え? あぁ、いやオフ参加してない人に声かけるのもアレだろ。

 だから参加者で安心したっていうか」


「ああ、そうですね。ふふ、同感です」


 何も受ける要素などなかったと思うが、終始緊張していた感じのアヤが自然な表情で笑った。


「今更なんだけど俺さ、買出し行く途中なんだ。

 このままだと外出ちまうけど戻るか?」


「いえ。今はちょっと。あの人いると気まずいですし、外に行くならちょうどよかったです。

 よければ荷物持ちしますよ」


「あー、じゃあ菓子類頼むわ。

 どうせならタヤにもあげたいし」


「タヤさんですか……今はあの人どうしてるんでしょう?」


「なんかポニテ女子に膝枕されてたな。

 うわ、思い出したらちょっとムカついてきたわ。やっぱ差し入れすんのやめようかな」


「あ、あはは。そうですか、まだやってたんですね……」


「え? あぁ、タヤのとこいたの?」


「はい。最初は絵を描いたりしながら話してるだけだったんですけど、ふと枕の話になりまして。

 腕枕と膝枕はどちらが最強かという話に発展して、なぜかいつの間にか実験してみようということになったんです」


 酔っぱらいだ。

 その飛躍具合は完全に酔っぱらい理論だな。

 ちくしょう、羨ましいなぁ酔っぱらい。どっちがいいかってどっちもいいに決まってんだろ。死ね。


「アヤ……さんはやんなかったの?」


「ええ。ちょっと恥ずかしくて。はは」


 アヤさんは頬を薄く染めて困ったように笑った。


「私以外の人はみんなやってて、それでなんとなく気まずくなって離れちゃったんですよね。

 これからどうしようかなと思って座ってたら、あのおじさんに話しかけられまして……」

 

 今に至る、ということか。


「つか、アヤさん素? 飲んでないの?」


「えと、私お酒強くなくて」


「へぇ、そうなんだぁ……」


 なんの気なしに返事するとアヤさんは明らかに動揺した。


「な、なにか変でしたか!?」

 

「へ? いや別に。飲めない人も普通にいるし。

 ただ、飲めないのに知り合いもいない花見なんて来ても面白いのかなァって思って。

 だって酔っ払いの相手なんて素面でやってられなくないか?」

 

「う、そ、それは……」


「タヤ達だって素ではまともだと思うぞ。

 酔っ払ってもいないのに、いきなり野球拳始める奴とかもう社会生活送れないだろ」


「……ですね。

 確かにちょっとついていけないところもありますけど、でも、楽しかったですよ。

 なんかこう、雰囲気が、とでも言うんですかね」


「あぁ、それはわかる気がする。

 でもおっさんとの酒の席はくっそつまんねぇぞ。

 一回サークルのOB会行ってきたけど、リーマンの愚痴聞いただけだったからな。

 酒は気の合う奴と飲むから旨いんだと痛感したわ」


 あれはマジ糞だったな。

 おっさんが無駄に話しかけてくるから飯もロクに食えねぇし。

 たとえ金もらっても、もう絶対に行きたくないでござる。


「カリヤさんは大学生なんですか?」


「ああ、アヤさんもそうだろ」


「はい!」


 会心の笑みで答えられた。




 ◇ ◇ ◇




 買出しを終えて公園に戻ってきた。

 タヤのところを寄ると、数名が輪になって座って頭の上で両手を合わせていた。


 ……こいつらニョッキッキしてんじゃねーよ。

 これ酒の席でやると無駄に白熱するんだよなぁ。


 ギャル系のねーちゃんとウェーイ系兄ちゃんが被ったところで勝負あり。

 俺はタヤの肩を軽く叩いた。


「ほい、差し入れ」


 ビールと酢昆布とたこわさが入ったビニール袋をシートの上に置く。


「わっほーありがとう、カリヤ!

 アヤちゃんもよかった。いつの間にかいなくなってたし、もしかしたら帰っちゃったのかと思ってたよ」


「あはは……なんだかすごい盛り上がってますね」


「まーねー。7回連続で勝ち抜いた人が一つ命令できるってルール付けたから、皆超本気モード入ってんの」


「天才かよ」


 王様ゲーム要素まで取り入れてんのかよ。そんなん止まらねぇだろ。


「カリヤたちもやってく?」


「あのなぁ」


 お前なぁ、こっちにゃ素のアヤさんがいるんだぞ。

 俺の買出し待ってるシュウヤやミヤもいるし、そんな寄り道してる時間なんて




「「4ニョッキ!!」」


 うお、また被った!?


「はい、二人ともアウト~」


 超満面の笑みでタヤが宣告する。


「なんだこの糞ゲー。7回連続どころか3回すら勝てないんですけど……」


「カリヤくん、超弱くなーい? むしろ自爆特攻されてる気分~」


「してねーよ、マジだよちくしょう!」


「ま、まぁまぁ落ち着いてくださいカリヤさん」


 困ったように笑うアヤさん。

 なんだ天使か。


「とか言ってるアヤちゃんは、もう2回も王様になっているのだった」


「うおおおおおおお、自分のセンスのなさが憎い!!」


「た、タヤさん! 余計なこと言わないでください!」


「俺が買ってきたポッキーだってなぁ、男同士でゲームに使われるために生まれてきたわけじゃねぇんだよ。

 ……安西先生、女同士のポッキーゲームが見たいです……」


「……カリヤさん?」


 うっわ、天使が素で蔑んだ目で見てるわ。

 我々の業界ではご褒美です。

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