第3話
「頭の中身こそ腐ってはいるものの、ミヤは案外まともに会話が通じた。
見た目もまともだ。当初の不安をよそに、俺たちはそれなりに談笑することができた」
「……なんかモノローグ風に言ってるし」
「酔ってるんでしょ」
ちょっと酔ってます。
あれから俺は、シュウヤとミヤとでぐだぐだとしていた。
2時間近く経っていて、もう持ってきたモノは大抵つきかけている。
「そういやこれっていつまでやるって決まってたっけ?」
「オフの時間? たぶん決まってなかったと思うよ。途中参加も脱出も自由ってあったし」
「脱出て。いいえて妙だけどさ…………お、あっち脱いでるねー。ヨヨイノヨイしてる」
「男が脱いでんのとか誰得なんだよなぁ」
俺の正直すぎる感想に頷くシュウヤ。
しかし即座に反論が返ってきた。
「え? 超得すぎるんですけど!」
鼻息荒いぞぉキミぃ。
「そんじゃあさ! 俺たちもやるか!!」
明らかキラッキラした目になるシュウヤ。こいつ自分に正直すぎるだろ。正直好きだわ。
「お、いいねぇ。シュウヤとカリヤの名勝負! 私はどっち応援しよっかなー」
「お前ね、そういう残酷なこと平然と言うなよ。シュウヤ君、泣いてるじゃありませんか」
「…………いや…………別にそんなことねぇし…………ミヤも参加するかもとか……期待してないし……」
「平静を装ってるけど、カリヤも大概目輝いてたからね」
「まぁ、多少はね」
ほら、俺も男の子だし。少年の心は大事だよね。
「まったく。もう食べ物ないし、エロ男爵たちは放っておいて別のとこ行こっかなー」
ミヤがゆっくりと立ち上がる。
こいつもなんだかんだ酒飲んでいたので、ちょっと足元がおぼつかない。
俺は立ち上がってミヤの肩をぽんぽん叩く。
「まぁ待て待て。別に野球拳はしない。むしろやれというならシュウヤとやってやる。だから待て」
「……ぷ。ちょっとカリヤ」
「な、なんだよ」
急に笑いやがってなんだこいつ。
ミヤは口元を抑えて、ぶふふっとこらえきれない笑い声を漏らした。
「急に必死すぎでしょ。ホント受けるんですけど」
「うん、俺の目から見ても今のは必死乙だった」
「シュウヤがやるならわかるけどさぁ。カリヤもかわいいとこあるんだね」
「え? なんで今俺ディスられた?」
「……ディスられたのは俺だろ。もういい、なんか買ってくるから二人ともそこにいろ」
「わぁい。私ビールと甘いモノがいい。あ、プリン欲しいなぁ、ポテチ系も」
「俺カルパス。あとビールとたこわさ」
二人に手を挙げて、俺は歩き出した。
ぼーっとして歩くとよろけてしまいそうだ。
……ふぅ、なんだかんだで結構飲んだし、酔い覚ましにはちょうどいいか。
周囲を見ると、最初のころとは違って完全にグループが出来ていた。
男女混ざってるところもそこそこある。ぼっちはいない。
無論、参加者全員が無事談笑できたわけではない。
人減ってるし、ぼっち組みは脱出したのだろう。無常である。
そういやハーレム王タヤはどうしたんだろう。
俺はタヤの姿を探してみた。
「タヤくん、寝る~?」
「寝るー」
タヤは寝ていた。
ポニテの、なんかスポーツやってそうな健康的女子に膝枕をされていた。
イチャイチャという擬音が聞こえてくるレベルである。
なに、あいつ。すげぇ。料金いくらだよ。
金であの笑顔買えんの? マジすごいっすタヤさん。
俺はこの世の無常を肌で感じながら、再びトボトボと歩きだした。
ふと横を見ると、少し離れたところに40くらいのおっさんが座っていた。
頭は脂ぎった感じで、ぷっくりと出っ張った腹がベルトに乗車している。
おっさん、まだいたんだなーっと思っていところ、おっさんの横には……女がいた。
肩までのストレートで、正直深夜に歩いてたら補導されそうな感じの女だった。
おい、マジかよ。おっさんすげぇな。巧みな話術なのか?
俺はちょっと興味を持って二人から少し離れて前に回り込んでみた。
「これ、僕の番号ね。あ、今かけてもらってもいいかな」
「…………ええと、それは……」
「やり方わからない? だったら僕がやってあげるよ」
女が持ってるスマホをおっさんが取ろうとする。
草。
なにこれ、シュウヤが裸足で逃げ出すレベルの厨じゃねぇかよ。
いい年こいてなにやってんだおっさん。
これ割って入った方がいい案件か。
あ、いやでも女の方が嫌よ嫌よも好きのなんたらだったら問題ないのか。
って、流石にそりゃないか。いいやもう、俺の勘違いだったら謝ろ。
俺は二人に向かって片手を挙げて話しかけようとしたところで、事態はあっさりと解決した。
「あの、ホント迷惑なのでやめてください。別の人のとこ行ってくれませんか」
女のはっきりとした拒絶。絶対零度である。ツンしかない。
無関係の俺でも聞いてて思わず固まってしまう。普通に泣けるレベルだった。
バッサリいかれたおっさんは唖然としている。やがってゆっくりと頭を垂れた。がっくりとした姿はもはや骸である。
女はおっさんから離れるためか、そそくさと立ち上がった。
「あ」
女と目が合ってしまった。
無性に気まずい。
俺は片手を上げた状態のまま半笑いの愛想笑いをすると、向こうも似たような感じで笑みを浮かべた。




