第1話
「あー、暇だな……」
自分の部屋でベッドに寝転がりながら、俺はなんとなくスマホ片手にツイッターを眺めていた。
今日は4月4日。
大学はもちろん、小学校から高校まで絶賛春休み中だ。
俺もその仲間なのだが、今日はぽっかりと予定が空いてしまっていた。
…………。
訂正。
今日もぽっかりと予定が空いていた。
大学の連れはみんな北海道に旅行に行ってしまっている。
俺はバイトの予定もあったし、あんまり金もなかったのでスルーしてしまったのだ。
「……馬鹿だよなぁ、あのときの俺。
時期じゃねぇとかほざかねぇで素直に行っとけよ。おかげさまで今超つまんねぇぞバーロー」
ごろりと寝返りをする。
旅行に行った連中がリア充よろしく写真をあげていた。
画像を確認すると、ガン盛りされたイクラ丼を手にして、普通の大学生の男女7名が普通にはしゃいでいた。
……ちくしょう、俺も行けばよかった。
でも、店長にはシフトでいろいろ融通きかせてもらってたしなぁ。
あのときは旅行の話もなかったし暇だったのは事実だからしょうがないんだけどさぁ。
直前になってシフトの変更もできなかったし、バックレたらもうバイト先戻れないし。
あそこ嫌いじゃないし、バックレはしたくねぇよなぁ。
あー、でもこれ思った以上にきっついわ。普通に行っとけよマジで俺。
鬱々とした気分で適当にタップしていたとき、ふっと俺は天啓を得てしまった。
「……あ、そっか。俺もなんか行きゃいいか」
俺は身体を起こして、スマホ片手に格闘を開始した。
◇ ◇ ◇
「やべぇ、やっぱなんかびびるわ……」
上野駅公園口を降りて、目的地の広場へと向かうところだ。
集合時間は午前11時。今はその20分ほど前だった。
……まだ時間には余裕あるけど、もう集まったりしてるんかな。
俺は挙動不審者よろしく集合場所へ向かうと見せかけて駅に戻ってコンビニ行ったりトイレ行ったりしていた。
もうかれこれ駅についてから30分近くは経っている。
「ツイッターの募集だからなぁ。
真昼間の花見だし人目だけは無駄に多いんだろうからエラいことにはならんだろうけど、あれどう見ても捨て垢だよな」
どうページを踏んでいったのか自分でも覚えていないが、俺はとあるつぶやきを見て酔狂にもここまで来たのだ。
内容はなんてことない、単なる花見オフの案内だ。酒ありなので未成年は厳禁。建前大事。
フォローもフォロワーも数件のみで、当日開催の突発中の突発だ。
参加者については意思表示してもしなくてもいいってことで、本当適当開催もいいところだった。
まぁ、そんな気楽さに釣られて俺もホイホイ来てしまったわけだが。
……っつか、このままグダグダしてたらいい加減遅れちまうな。うっし、行くか!
謎の気合を入れて、俺は集合場所へと向かった。
おいおい、マジかよ……。
集合場所には意外と人がいた。10人以上はいやがる。
そのうちの一人が、無駄に達筆な文字で『賀正』と書かれたスケッチブックを持っていた。
間違いない、ツイートにあったとおりだ。
しかし『賀正』ってなんだよな。ツッコミ待ちすぎて逆にツッコミたくねー。
にしても、なんであんな適当開催のご案内で集まってんだよ。君たち暇なの?
いろいろと思うことはあれども、これだけ人が集まってればオフとしては充分だろう。
俺は多少顔を引き攣らせながらも、人当たりのよさを意識した笑顔を浮かべてスケッチブック男に話しかけた。
「あ、あのー……ツイッター見てきたんですけど……タヤさんですか?」
「お、いらっしゃーい! よくあれで来る気になったなぁ!!」
「それあんたが言うかよ」
反射的に素になると、そいつはにやっと笑って俺の肩を叩いた。
「ほう、イイじゃないですか君。ようこそ、花見オフへ。歓迎するよ」
「……おう、まぁなんだ。よろしく頼むわ」
「こちらこそ。まだ時間あるから適当にみんなと話しててよ。
つっても、時間になったら移動して適当に酒飲むだけだけどさ」
言って、そいつが手にもったバッグを持ち上げる。
基本的に飲み物食物は持参品だ。
足りなければどっかから勝手に調達してこいという、これまた見事なぶん投げ企画だった。
「ちなみに君、大学生?」
「ああ」
「だよなー!! どうせ暇してたんだろ? わかるわー。超わかる!!」
「……はは」
どうしよう、早々にタヤにシンパシーを感じてしまった。
やっぱりこんなしょうもないこと考えるのって、俺たちみたいな奴だよなぁ。




