みんなにバレちゃった!
「悪いけどアンタの事、男として見たことないからムリ」
俺、高梨 浩二は
小学生の頃から片思いをしていた
平川あおいにたった今、振られた。
あおいは周りの男子から「メスゴリラ」という異名で呼ばれているが、本当は笑顔が可愛くて心優しい。
俺とあおいは家が近所で、小学生の時から同じ剣道場に通っている幼馴染みというやつだ。
中学2年の11月。
勇気を振り絞って告白した俺に
あおいは無情にも追い討ちを掛けてきた。
「つか、あんたが今まであたしの事そういう風に見てたとか、ないないない!ムリ!!」
あおいはそう言ってその場を立ち去っていく。
「あー・・・、
これからどうしたら良いんだ・・・」
同じ部活、
家が近所、
親同士が仲がいい、
同じ剣道道場に通っている
etc.
挙げたらキリがないほど、俺とあおいの接点は多い。
いやいや!
漫画の世界だったら、
これハッピーエンドのパターンじゃん!
なんで俺こんなに詰んでの?!
くそー!
イケメンに生まれたかったーー!!
俺は心の中で叫びながら、その場でのたうち回る。
すると、同じ剣道部の伊勢まことが俺の事を見ていることに気付いた。
「ま、ま、ま、ままま、まこと?!」
俺は驚きのあまり、何度「ま」と言ったのだろう。
「な、なにしてんだよ?!」
俺はこの時、自分の声が震えている事を知った。
「え、いや。お前こそ何この状況。
あおいにふられて、なに大声で何叫んでんの?」
まことの言葉にハッとする。
「え、俺、今心の声、ダダ漏れてた・・・?」
恐る恐る問いかける。
「ああ。
同じ部活がーとか、家が近いとかから、イケメンになりてぇって叫んでる辺りまで聞こえてたぞ」
「それ、全部じゃねぇーーか!!!」
「大丈夫だ、高梨。
俺は黙っておいてやるから。
・・・せめてな。」
俺は今のまことの発言が気になったので、確認してみる。
「俺はってなんだ、俺はって・・・??」
言葉の意味が分からず、なんだ俺はってとまことに問いかけると、まことは俺たちが立っている斜め上を指差す。
俺はまことの指差す方を見上げる。
「おいおい!まこと!ばらすなって!!」
「ハハハハハハっ」
俺は目を疑った!
まことの指差す方には、同じクラスの男子たちが教室から顔を出し大爆笑しているではないか!!
「いや、高梨、あのな。」
まことは俺の肩を叩きながら
「今、昼休みだから。
そりゃあ、誰かしら居るわ。
この中庭は生徒棟と教員棟の間にあるんだから」
そう言ってまことは歩き出し
「ご愁傷さま」
と言ってあおいと同じ方向へ立ち去って行った。
教室から先ほどの男子たちの笑い声が聞こえる。
俺は人生最大のチャレンジに挑戦し、
人生最大の失敗という結果を掴みとってしまった。
それから俺は男子たちに「お前の趣味はゴリラだったのか」とからかわれた。
まことはそんな俺に同情をしてくれたが「相手が悪い。あおいは辞めとけ」と忠告してきた。
俺の初恋はこうして散っていった。