わがままお嬢様と心情と
久しぶりにです。なかなか筆?が進まず動向が一ヶ月以上も遅れました。すいません。
「わがままお嬢様と怠惰な俺と」の7話になります。今回はタイトル通りの神埼の心情を纏めたものになります。拙い文章ですが、これからも自分のペースで投稿して行きますのでこれからもよろしくお願いします。
周りの人はみんな私の事を強く意識している。羨望的に、あるいは嫉妬を含んで。他にもあるだろうが思いは違えど意識しているのは間違いないだろう。
別に自意識過剰とは思っていない。自分の能力や容姿が周りより秀でているというのも自覚している。
さすがにここまでハイスペックに生んでもらって自覚しないというのは親に失礼というものだろう。
しかし、正直周りからの目なんて、めんどくさいことこの上ない。しかも、一般の生徒だけでなく、先生達でさえ、一歩距離をとっている。ぶっちゃけ、仕事しなさいよなんて思う。まあそんなこと言えないけど。
私には少し前から密かな趣味がある。一般的に『オタク趣味』なんて呼ばれている。つまり、アニメだ。最近まで自分のパソコン等でそういった関連を漁っていたが少し好奇心というか、なんというか。つまり、ただただ欲しくなった。幸いお小遣いもほとんど使ってなかったし少しだけならと自宅近くにも有ったが、何駅か離れたアニメイトに行った。何故近場に行かなかったなんて愚問だ。誰かにバレたくないかった。自分で自分の環境にうんざりしているのにその環境と一般常識が私を遠くの店へと足を運ばせた。
店内にはたくさんグッツが有った。今まで割りと多くアニメを見てきたと思ったけど、まだまだだと実感した。それからもう完全にアニメの世界にハマった。学校でのストレスを発散させるようにグッツを買い、オタク趣味にどっぷり浸かっていった。
ある日、いつもと同じように、アニメイトへ向かった。高校一年の秋にそれらいしことなどせずにアニメにのめり込むなんで我ながら笑ってしまう。けど、今は精神の安定だけでなく、本当にアニメを好きになってしまったから、高校生らしい事なんて別にしなくて良いと思ってる。しかも格好が既にヤバい。アニメイトの前で、帽子にサングラスにマスクを付けていて端から見たら完全に不審者だ。まあそんなこと気にしてなかったんだけど。
今日もグッツをたくさん買えた。レジで会計を済ませる。この店では会員証を見せて本人確認が取れると初めて買うときより些か値段が安くなる。お小遣いが有るとは言え、節約できるならと会員なった。
確認の仕方は簡単で顔と会員証の写真を見比べて判断する。店員に見られるのは嫌だったけど守秘義務を信じて顔を見せる。店を出て、買った商品を確認する。これ見るだけで速く家に帰りたいと思う。
店を出るとそこに冴えない男が居た。どっかで見たことある気がする。我ながら記憶力は良い方でこの感じだと多分学校の生徒だ。だかしかし、私は今不審かもしれないが顔は見えてないハズなので油断していた。
……マスクガズレテイル。それを確信したのは相手の反応で分かった。私は一瞬頭が真っ白になった。しかし、少し固まったが次の行動は速かった。とりあえず、人目の無い所に連れ込んだ。今思えば考えて行動したつもりだったが相当焦っていたんだと思う。もっと他に方法が有ったのでは?なんて思うが、そんなのは今だから言える事であって、その時では無理だった。私は考えた。どうしようかと。プラン1「お願いこの事は誰にも言わないで」と懇願する。プラン2逃げる。プラン3殴って記憶を消す。
普通に考えれば妥当にプラン1なんだろう。しかし、本当にまともな判断が出来てなかったのか、どのプランでもない、捨て台詞を吐いて逃げるという手段をとった。情けない。
その後、その生徒について調べた。名前は坂上一貴。なんでも文芸部に入っていて、成績は良く言えば中の下、悪く言えば下の上。運動能力、容姿共に並み。見た感じ友達と言えるのはあまりいなさそうだった。友達が居ない。これならば先日の事をバラしても誰も信じないだろう。そう思った。ただこの時私は少し興味を持った。本当の友達と呼べるものが居ない同士なら少しは普通に喋れるのではないかと。そう思って私は直ぐに入部届けを貰った。
一貴は最初こそ嫌そうな顔をしていたが、諦めたのか入部届けを受け取ってくれた。結構強情だったが監視だと言って通した。
それからは楽しかった。普段なら周りに気を使ってる出来ない発言や、堂々とゲームをしたりなど、学校で唯一自然体でいれた。
しかし、ある日部室に女子生徒が訪ねてきた。名前は代元憂美と言うらしい。見た目は可愛く、ショートカットの少し茶髪がかった髪に童顔。身長も小さく、いかにも守ってあげたくなる感じだった。一貴の事をかずくんと呼んでいる所をみると相当親しい仲というのが伺える。そんな事を考えていると少しイラっと来た。何故かなんてそんなの分からない。けど、何故かムカついてしまった。今思い返せばなんであんな事したのか分からないが最近すぐ行動に出てしまうらしい。その時、一貴に後ろから腕を捕まれて乱暴されている様に見えなくもない状況だったので、女の子らしく、悲鳴を上げて代元憂美に助けを求めた。冗談のつもりで言ったのだが、冗談じゃ済まなかった。人は見た目によらない。良い経験だった。
それから、カラオケにも行った。憂美は中々歌が上手だったが、一貴は下手だった。憂美はカラオケに何度か行ったことが有るそうだが、私と一貴はそれが無く、初めてのカラオケだった。そのせいか、とても楽しかった。あんなに久しぶりに声を出したのをいつぶりだろうか。
またある日は、勉強会をした。初めて家に友達と呼べる人を連れてきて、ママはとてもびっくりしていた。憂美は見た目通りと言うか、頭が良かった。一貴は悪かった。今まで勉強なんてろくにして来なかったけど、こういうのならやっても良いかなと最近は思う。思えば一貴は取り柄事態はそんなに無いにせよ、いつも私に、初めてを経験させてくれる。部活の楽しさ、カラオケの楽しさ、勉強会の楽しさ。全て楽しさだけだが、それも今までなら知り得なかった。今は恥ずかしくて言えない。けど、いつかは言おうと思う。感謝の言葉を。そう思うと自然に口角が上がっていた。