押し掛け入部と無色な俺と
「わがままお嬢様と怠惰な俺と」の3話になります。前回でも書かせていただいた通り至らぬ点が多々ありますがそこを改善するためにも感想や注意点、アドバイスよろしくお願いします。
投稿のペースが遅れたので少し多めに書かせて頂きました。
「もう、そう言うことなら最初から言ってよね。」
俺が神埼を襲っていた(かのように見える)場面を目撃した美憂に訳を話し、ようやく分かってもらうことに成功した。俺は安堵の息を吐く。
そして、この騒動の原因であるところの神埼は流石に反省したのかチラチラとこちらを見ながら椅子に座っている。すると美憂が
「神埼さん?冗談でこういうことしたらだめだよ?」
という美憂の言葉にビクッと反応し「ごめんなさい」と謝った。こいつがこんなに素直に謝るのはあの"鬼"といわんばかりの表情と迫力があったからに違いない。あの瞬間神埼のおふざけを楽しむ顔から笑顔が消え、正座させられる俺を見ながらソワソワしていた。流石の神埼といえどあの状態の美憂を見ると恐怖するのだ。俺?ああ、べ、別に怖くないし?泣きそうにもなってないぞ?
そんな風に俺が心の中で言い訳していると
「そういえば、かずくん。神埼さんと知り合いだったんだね。クラスも違うし、今まで関わりの無かった神埼さんと同じ部活なんて、ま、まさか、つ、つ、つ、付き合ってるの?」とどう見たらそう見えるのか知らんが訊いてくる。確かにクラスのことに関しては、5組あるなかの俺と美憂が一組、神埼が3組と離れているからまぁ仕方がない。だが、理由に関してここで問題が発生する。俺は以前神埼が重度のオタクであることを知っており、その俺を監視するために文芸部に入部してきたと認識している。しかし、それを美憂に話すわけにはいかない。普通なら簡単に興味があったで済む話なのだが、こいつのスペックならこんな部員一人の潰れかけの文芸部ではなく、まともな部活ならどこでも活躍できる。つまり、こんな部活に入部する理由が無いのだ。そんなことを思っていると神埼が
「私、結構小説が好きで実際に書いてみたいと思ったんだけどやり方が分からないからそれを知るために入部したの」と神埼はそう言うとこっちを睨んでくる。はいはい、分かりましたよ。
「そうそう、やる気があるみたいだったから良いかなって」
「やる気?そりゃ神埼さんにやる気があるのは分かったけど、かずくんがやる気を評価するの?あのかずくんが?必要最低限のことすら自分でやろうとしないあのかずくんが?」美憂が心底意外そうに訊いてくる。 ぐぅ、ここまでボロクソに言われてもなにも言い返せない。正論って怖いな。そんな事を言われながらもここはなんとかして誤魔化すしかない。
「い、いやあれだよ、せっかく文芸部なんてものに入ってるんだからちゃんとした理由があるやつの入部は歓迎しないとだしな。」
ここまできてようやく納得したのか美憂がなるほど、と考え込んでいる。ていうか、これそんなに考え込むことじゃない気がするんだが。
そんなことを思っていると美憂が何かを決めたのかよし、と頷く。
「かずくん、私も文芸部入る!」と美憂がはっきりと言う。俺は一瞬美憂が何を言っているか分からなかったがようやく理解する。
「み、美憂?入るって言ったってお前、料理研はどうするんだよ?」俺は驚きながらも尋ねる。正直なところ実際に神埼の秘密がバレてもノーダメージな俺ですらこれなのだ。神埼なんて固まっている。俺はそんな神埼に小声で「お、おい大丈夫なのか?」と尋ねるが反応が無い。ダメだこりゃ。
そんなこんなしていると美憂が「何をこそこそしてるの?もう。料理研の方は掛け持ちでやる。元々そんなに厳しくないし」
ここまで来たらもう断るのは不可能だ。俺は諦め神埼に「入部させるからな」と一言だけ言い入部届けを渡した。
そして、次の日の放課後、美憂が入部届けを持ってきた。
「かずくん、神埼さん、これからよろしくね」とにこやかにあいさつする。
「こっちこそよろしくね」と神埼が返す。もうこいつのなかで諦めがつき、なんとか秘密を誤魔化そうと切り替えたらしい。
数十分もすれば女子同士話が進む。それを横目に俺は黙々と本を読む。
そりゃね?二人が不仲になるより、仲良くしてくれた方がいいよ?
「だよね~」けどね?これは違う「でねぇ~」適当に仲良くする分には良いんだよ。「わかる~」
けど…まじうるせぇ!
心の中で叫ぶがトークに花を咲かせる二人には届かない。あぁ、あの静かな頃の文芸部が懐かしい。
俺はそんなことを思いながらまた本を黙々と読み進めた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回も投稿のペースは不定期ではありますがよろしくお願いします。