なろう作家 ジェラルミンの盾を持った超人高校生
「俺はジェラルミンの盾を持った超人高校生!」
その日ナオミが出合ったのはピカピカに光る盾を持った若い少年剣士でした。右手に剣。左手に盾。鎧を身につけず、胴体を護るのは布製の服のみという井出達です。
「ジェラルミン?」
五百万人の勇者を育てた大賢者の弟子であるナオミも、そんなものは聞いた事はありません。
「ふ、どうやら知らないようだな!それも当然だ!この盾は鉄ではなくジュラルミンできるいるんだ!20世紀初頭に発明されたコイツは軽くて丈夫なことにより戦闘機などに使われている。けれどこの異世界においては超チートアイテム! どの国も持ってないし存在しない。ましてや作れるハズもないわけで、そんな防具で身を護る俺はまさに最強無敵!!」
「そのジェラルミンの盾ですが。見たところ人間が持てるサイズ。厚さ2センチと言ったところでしょうか」
「そうだ。使えない防具に意味はないからな!」
「そうですか」
ナオミは右手をジェラルミンの盾を持った超人高校生に向けると。
「石の弾丸」(ストーンバレッド)
呪文を詠唱します。足元にあった小石が飛んでいき、ジェラルミンの盾によって弾かれました。
「アハハ!無駄無駄無駄無駄!!このジェラルミンの盾にそんな石ころを飛ばす攻撃などが通じるとでも思ったか!矢でも鉄砲でも持ってこいってんだ!!!おっと、どうせこのジェラルミンの盾は壊せないだろうから、せめてミサイル並の威力の魔法を使う事だな!!」
「そうですか。助言ありがとうございます。ですが」
ナオミはジェラルミンの盾を持った超人高校生に歩いて近づきます。その距離5メートル。
「石の弾丸」(ストーンバレッド)
「ふ、そんなものこのジェラルミンの盾ぶええええ!!!」
ジェラルミンの盾はナオミの放った石つぶての魔法によって粉砕され、超人高校生はその場に倒れふしました。
「ばか、な・・・。協力な、攻撃魔法や、大砲ならともかく、さっきと同じ魔法。だ、と・・・」
「ジェラルミンの盾さん。お尋ねしたいことがあるのですが」
ナオミは問いかける。
「『ゼロ距離射撃』ってご存知ですか?」
「ゼ、ゼロ距離射撃だと?!!!!」
「弓やクロスボウ。火縄銃などの遠距離武器は遠くまで攻撃できますが、空気抵抗で徐々に威力が落ちていき、最後に地面に落下していきます。具体的には弓やクロスボウでは100メートル。銃だと200メートルですね。逆に言うと目標に近い位置で撃てば、空気の影響を受けないので金属鎧を貫通する威力があります。弓なら30メートル。クロスボウなら50メートル。銃だと100メートルらしいのですよ。そして」
ナオミは足元にあった小石を拾って手の平で弄んでみせた。
「私はこの石にちょっとだけ魔力を込めて、5メートルの距離から貴方の盾に撃ち込みました。本当に魔力誘導によって小石をぶつけただけすよ。つまり、貴方の剣の攻撃が届く、最大射程距離よりも遠くから、私の石ころによる有効射程距離に攻撃をさせて頂いたわけですね」
「ど、どう云う事なんだ?」
「石は剣よりも強し。と言う事です。ああそれからもう一つ。その薄さのジェラルミン盾。人間の持てる重さの盾ではクロスボウや火縄銃は防げませんよ。弓でも一流の腕前ならぶち抜いてくるかもしれませんね。では」
ナオミは超人高校生に助言をすると、その場から去ることにしました。
中世ヨーロッパではクロウボウは騎士の鎧をホイホイ貫通して死人が続出するので、
ローマ法王が「キリスト教徒が使うには野蛮な武器」として禁止令が出たほどです。
推測ですが、たぶんクロウボウでもジェラルミンの盾はぶち抜けます。