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炎罪  作者: お終い
第1章
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第8話

「ご馳走様でした」


 エンブレイズはフタバ・ムラマサの持ってきた食事をペロリと平らげ、コップに入った水を一気に飲み干した。

 まだ怪我の影響で思うように動くことの出来ないエンブレイズは移動する際は車いすを使うようにと言われている。まだ体中が痛むために、力を入れたりすることは難しい。なので車いすで移動の時も自分で車輪を押すのは厳しい。



 食事が終わるとベッドの上に仰向けに倒れた。

 エンブレイズ天井を見ながらは考えていた。自分の兄や故郷の事、どうやって帰るかを。

 国王がいなくなり、王族ですらホムラ以外が死亡している。国中がパニックになっていてもおかしくない。

 一刻も早く国に戻り現状を確認したかった。だがそれよりも、エンブレイズは自分の両親と恋人の墓を作ってあげたいと思っていた。

 そして兄であるホムラの暴走を止めなければいけないと思っていた。エンブレイズは兄を止めることを今の自分の『使命』であると強く感じている。だからこそ、一刻も早く国に戻りたかった。

 だからエンブレイズはある程度怪我が治ったらこの国を出る事にした。

 シャーマ王国まで戻る移動手段だが、エンブレイズは船やコンパスは力ずくで奪うつもりだ。申し訳ないとは思いつつもそれよりも大事なことがあるのだ。


 医者が言うにはエンブレイズの怪我は全治五ヶ月らしい。それを聞いたエンブレイズは二ヶ月で抜け出すことに決めた。

 それにその間に体がなまってしまってはいけない。怪我をして満足に動けなくても出来る事はあるはずだ。

 まずは情報収集。新聞などのメディア、噂などでも構わない。エンブレイズは少しでも情報が欲しかった。


 それと炎の訓練だ。体は動かせなくとも炎は出せる。派手な訓練をしたい気持ちは確かにあったが、ここは病院なのでそんなことはできない。ならば、とエンブレイズは昔よくやっていた訓練をやることにした。

 その訓練とは自身の炎で箸やフォークなどを作り、使用するものだ。まずは炎で箸を形成し、料理を掴む。この時に力を入れすぎれば料理を掴むことが出来ないし、燃えてしまう場合だってある。つまり炎の細かい操作が必要になる。地味だが繊細で集中力の必要な訓練なのだ。



 エンブレイズはフタバ・ムラマサに頼んで新聞をもってきてもらい読んでいた。が、新聞のどこにも自分の名前も、国の名前も載っていなかった。

 何故だ、とエンブレイズの頭に疑問が浮かぶ。一国の王族が殆ど皆殺しにされたのだから世界中でニュースになっていてもおかしくない。だが載っていないという事はもしかしたらホムラが情報を操作している可能性がある。またはこの国に情報が届いていないだけか。

 エンブレイズは後者であると信じたかった。

 仮にもし前者だった場合、ホムラがそんなことをした理由に見当つかない。情報を公開しないことでホムラや国の人間にメリットがあるとは考えにくかった。

 大陸にある炎、水、雷、土の四大国はそれぞれ同盟関係にある。エンブレイズがホムラの立場であれば真っ先に情報を同盟国や世界に発信して犯人を指名手配する。

 国ではエンブレイズが犯人扱いされていることは想像に難くない。メディアや民衆は確かな証拠などなくとも、怪しい噂が一つあれば騒ぎ立てるには十分な材料となる。過去にメディアの情報を耳にした一般市民の目撃によって凶悪犯が捕まることだってあった。だからエンブレイズは自分の顔や名前が全世界に公開されていてもおかしくないと考えていた。


 先ほどエンブレイズはうっかりフタバ・ムラマサに名前を教えてしまったが、冷静に考えればエンブレイズの顔を見て何もアクションを起こさない時点で自分の情報を知らないのだと推測出来た。

 言い訳にしかならないが、あの時はエンブレイズは自分の状況を知る事で精いっぱいだったのだ。


 頭を使った反動なのか、エンブレイズを眠気が襲った。

「ふあ~あ」

 先ほどまでの張りつめていた空気はエンブレイズのあくびで一気に解けた。

 エンブレイズはベッドの上にあおむけになり、睡魔にあらがう事はせずに目を閉じた。

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