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炎罪  作者: お終い
第1章
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第4話

「剛腕の焔!!」


「…炎の巨大な腕ブレイズブラースマシーサ!」


 名前こそ違えど、お互い両手に大きな炎の拳を纏う技だ。

 お互いが右腕を勢いよく突き出し、二人の丁度中間地点でお互いの拳が激突する。


「くっ…!」


「うぉっ…」


 勢いよく激突した炎の拳は二人の間で轟音と共に小さな爆発を起こす。衝撃で二人とも体勢をを崩す。


「加速の焔!」


 二人はすぐに体制を立て直す。そしてホムラが自分の両足のかかとと背中から勢いよく炎を噴射し、高速でエンブレイズに向かって行く。


炎の壁(ブレイズパレージ)!」


 エンブレイズは瞬時にホムラの走る軌道上に炎の壁を作りホムラをそこに突っ込ませる。この炎の壁は一度掴んだ敵は離さない。


炎の竜巻(ブレイズトルネード)


 そしてその炎を竜巻のように回転させる。ホムラはその炎の巨大な竜巻の中をハイスピードでぐるぐると回転し、どんどん上昇していく。


「ぐおぉぉぉぉぉ!!」


 そしてエンブレイズは突然竜巻を止める。そして手に持っていた自分よりも大きな炎の槍をホムラに向かって全力で投げた。

 その槍の勢いは凄まじく、一直線に空から落ちてくるホムラに向かって行く。


「くっ…! まずい。か…加速の焔!!」

 背中とかかとから炎を出し空中をわずかに移動したホムラは、自身に向かってくる炎の槍を紙一重でかわす。


「惜しかったな……」


 ニヤリと汗を流しながらホムラは笑うが、エンブレイズはまっすぐにホムラを見ていた。

 エンブレイズは左手の人差し指と中指をたてて手を動かしている。


「曲がれ」


 小さく呟いたエンブレイズの言葉は当然ホムラには聞こえなかった。


「弾丸の焔!!」


 ホムラは地上目がけて足から落下しながらも攻撃を繰り出す。両手を開き手のひらを下にして指先からエンブレイズ目がけて小さな炎の弾を連射する。

 エンブレイズは右手で炎の丸い、人の顔よりも少し大きい盾を出してホムラの攻撃を防ぐ。が、数発体に当たってしまった。


「くっ…!」


 ホムラは無事地面に着地する。そしてエンブレイズの方に両手の掌を向ける。


「くらえ! 大轟炎(だいごうえん)!」


 ホムラの両手の前に巨大な炎の玉が出来ていく。それは大人ほどの大きさになり、周囲の木々が溶ける程の熱を放っている。


「がッ…!」


 だが次の瞬間、背中から巨大な槍がホムラの胸を貫いた。


翼の生えた(イスピア―オブ・)炎の槍(ブレイズアラーダ)


「ガフッ!!」


 ホムラは口から血を吐いた。

 ホムラが出していた大きな炎の玉は一瞬で小さくなり消えた。

 両手が力なく垂れて、更に血を吐いた。


高速回転(コロタッセオ)


 エンブレイズがそう呟くと、ホムラの胸に刺さっている槍が回転を始めた。


「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」


 そして槍はホムラの胸から回転しながら抜けていき、エンブレイズの手元に戻ってくる。

 エンブレイズは戻ってきた槍を掴むと、さらに強く掴んで槍を消滅させた。

 ホムラはその場に膝をついてからうつ伏せに倒れた。


「兄上、覚悟はいいか?」


 エンブレイズは炎で右手を包み、手刀を作ってホムラに刃先を向ける。


「『神童』ってのは伊達じゃ…ねぇな」


 うつ伏せになったままホムラは弱弱しくそう呟いた。

 エンブレイズは何も言わない。


「知ってるか? この大陸には…四つの大きな民族が住んでいる。炎の民、水の民、(かみなり)の民…地の民。それぞれ体に炎、水、雷、大地を操る力を宿している。」


「……それがどうした」


 そんなことはこの世界に住む者なら誰でも知ってる常識だ。


「炎の民はその雄々しく荒ぶる炎での攻撃を得意とし、水の民は濁った水を清流のようにするかのごとく怪我や病を治し、雷の民はその(いかずち)のごとく高速で動き、地の民は硬く強固な大地での防御を得意とする」


「何が言いたい」


 エンブレイズがホムラに向けて放った言葉は、すでに自分の兄に向けて喋るような言葉ではない。


「……電光石火」


 ホムラは小さくそう呟いた。瞬間、エンブレイズの前からホムラが消えた。


「なッ!?」


 決して比喩ではない。本当にエンブレイズの前からいなくなったのだ。

 エンブレイズが辺りを見渡すがホムラはいない。


「後ろだ」


 自分の後ろから聞こえた声にエンブレイズは振り向いた。が振り向いた瞬間に頬に強い衝撃を受けてエンブレイズの前の景色が回転した。


地縛(じばく)


 エンブレイズが仰向けに倒れているところの地面が動きだし、荒縄のように太いひも状の土が6本出てくる。そしてそれぞれがエンブレイズの両腕、両足、首、腰を固定した。


「なんだ…これは? 動けない」


 エンブレイズはジタバタと暴れるが抜け出せない。

 だがエンブレイズとてバカではない。炎を使えば抜け出せる。


「させねぇよ」


 ホムラはエンブレイズの心を読んだかのように両手両足に炎で作られた短刀を突き刺した。


「ぐぁっ!!」


 そして更にホムラは自身の右手から雷を、左手から炎を出してエンブレイズの口を無理矢理開けてそれらを流し込んだ。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


(いかずち)正拳(せいけん)


 そしてトドメと言わんばかりにホムラはエンブレイズの腹部に雷を纏った右手で正拳を打ち込んだ。


炎針(えんしん)の嵐」


 それでもまだ抵抗を測るエンブレイズにホムラは追い打ちをかける。仰向けになるエンブレイズの上から針の形の炎を大量に雨のように降らせる。


土竜弾(どりゅうだん)


 そして背中からは無数の小さな土の塊がエンブレイズの体を打ち抜く。

 エンブレイズは苦しそうに悲鳴をあげる。


雷光炎陣土竜岩(らいこうえんじんどりゅうがん)


 そして巨大な岩が炎と電撃を纏いながら雷の速度でエンブレイズの腹部に落下する。


「がっ…はっ……」


 もうすでにこれは戦いではなく、一方的な私刑(リンチ)へと変わっていた。


 その後もエンブレイズの執拗なリンチは続く。そしてエンブレイズが声すらあげなくなってようやくホムラは攻撃を止めた。

 弱弱しいがちゃんと呼吸はしているのでエンブレイズは生きてはいるのだろう。


「……フフフ………フハハハハハハハハハ!! 無様だな!? 神童の名が泣いてるぜ?」


 ずっと笑いをこらえていたホムラは高らかに声をあげて笑った。


「なんか言ったらどうだ? ってそんな状態じゃ喋れねぇよなぁ!! フハハハハハ!!」


「兄上の話を聞かないなんて失礼な弟だなぁ?」


 ホムラは笑いながらエンブレイズの頭を軽く蹴った。


「………………」


 エンブレイズは動かない。


「ちっ、死んだらここまでやった意味ねーだろ」


 ホムラはそう言って自分の左手から人の頭より少し大きな水の玉を出した。そしてそれをエンブレイズの頭を包むようにかぶせた。

 勿論エンブレイズは死んでいないが、ひどく衰弱している。


「がはっ、ごほっごほっ」


 エンブレイズが血を吐きながら咳をして目を開けたのを確認して、エンブレイズにかぶせていた水の玉をホムラは自分の手元に戻した。そして地面に捨てた。それは水たまりになった。


「あ…に……え……」


「よし、喋れるな。楽しくなってやりすぎちまった。死んだら元も子もねーんだよ。お前は生きて苦しむんだ」


 エンブレイズは目を覚まし、何とか喋れるほどに回復はした。でもまだ体を動かせる程には回復していない。


「な…んで……」


 僅かに口を動かしてエンブレイズは弱弱しくそう言った。


「それはなんで炎以外も使えるんだってことでいいのか?」


 ホムラはエンブレイズを見つめてニヤリと笑った。


「それともなんでみんなを殺したかってことか? あぁ、それはさっき説明したな」


 ホムラはエンブレイズに近づいて、顔の近くに立った。


「いや実際大変だったんだぞ? 雑魚どもはともかく父上を殺すのは骨が折れたよ。流石最強の戦士と言われるだけはあってな。あの時、父上に撃ったのだけ麻酔弾だったんだよ。絶対に一撃じゃ致命傷にならないってわかってたからな」


 違う、エンブレイズが今聞きたいのはそんな事じゃない。父上が殺されるまでの過程なんて聞きたくない。少なくとも気分が良いものではない。


「そのあと別の場所に呼び出して奇襲したさ。でもやっぱり失敗したよ。だから予定通り俺がボコボコにぶちのめしてやったよ。四つの力を手に入れた俺の前じゃ炎の民最強の戦士も敵わなかったんだよな」


「う…さい…」


 エンブレイズは我慢できなかった。これ以上そんな話を聞いていられなくなった。でも今エンブレイズに出来るのは、弱弱しい声で抵抗することだけだった。


「……そろそろ終わりにするか」


 ホムラはさっきとは変わって静かにそう言うと、エンブレイズの胸の真ん中に右手を軽く置いた。


「ほぉぉぉぉ…ハァ!!」


 ホムラの右手が燃え上がり、二本の細長い炎のひもが出てきた。そのひもがエンブレイズの胸を突き破って体の中に入っていく。エンブレイズは苦しそうな声をあげるが、ホムラはそんな事気にしない様子で自分の右手と炎のひもに集中する。


「……よし」


 ホムラは左手をエンブレイズの胸の穴の近くにおいた。そして右手をひもごとエンブレイズの胸から思いっきり引き離した。


「ぐぁぁ!!」


 するとエンブレイズの胸から赤く光るガラスの球のようなものが炎のひもにつながって出てきた。

 ホムラは左手をエンブレイズの胸の穴の上にのせる。すると左手が青く光り、胸の穴がどんどんふさがっていく。


「これでお前はもう戦えない」


 ホムラはニヤリと怪しげに笑った。

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