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炎罪  作者: お終い
第1章
30/33

第29話

 二人とも地面に倒れたままピクリとも動かない。


 審判らしき鬼が二人に近づく。


 審判の鬼は二人の閉じている目を無理矢理開けて瞳孔の確認をする。

 そして実況の鬼の方に向かって手で大きく×を作った。


「引き分けです!!! モチ対エンブレイズの戦いは両者気絶の戦闘不能!! よってこの勝負は引き分け!! 両者1ポイント獲得です」


 観客席からは「人間もなかなかやるな」とか「モチもいつもより頑張ってなかったか?」と二人を褒める言葉が多く飛び交っている。

 未だにピクリとも動かない二人は担架に乗せられ、お互いの部屋に連れていかれた。



「……んっ…」


 妙に色っぽい声をあげてエンブレイズは目を覚ました。

 確かモチと戦ってて…と記憶を手繰り、自分が気絶したことを思い出す。

 結果が気になるエンブレイズはオニスケに聞けばわかると思ったため、オニスケを探す為に部屋から出る。


「わっ」


 ドアを開けた瞬間、そこには疲れた顔をしたモチがいた。


「どうも、入っていいですか?」


「あ、あぁ」


 エンブレイズは少し困惑しながらもモチを部屋に入れる。モチは部屋の中をくるっと見渡すとベッドの上に座った。

 エンブレイズはモチから戦いは二人とも気絶して引き分けに終わったことを聞いた。


「いきなり申し訳ないですね、少し気になる事がありまして」


 とりあえずエンブレイズは戸惑いながらもコップに水を汲んでモチに差し出す。


「ありがとう」


 モチは喉が渇いていたのか一気に飲み干す。エンブレイズもコップに水を汲んで飲む。


「それで気になる事って?」


「あぁ、そうでした。戦いの時に出した翼、見せてもらってもいいですか?」


 エンブレイズはコップを地面に置いて真剣な表情をする。戦った相手にわざわざ手の内を晒すようなマネはしたくない。

 モチは大きく息を吐いてから口を開く。


「貴方は勘違いしてるみたいだから言っておきますけど、私達はあの闘技場で戦う闘士です。別にお互い憎み合ったり恨みがあって戦ってるのではありません。だから私は…お互い力を競い合い、貴方とナンバー1の座をかけて戦えたらいいと思ったんです」


 モチは純粋に闘士としてエンブレイズの力を認めてくれたのだ。仕方がないこととはいえエンブレイズは少し申し訳なく思った。

 エンブレイズはプラータをゆっくりと広げる。

 因みにプラータは先ほどの戦いで砕かれたが、自分の魔力を大量に消費してまた復元できる。魔力はしっかりと休息をとれば自然に回復する。つまり時間はかかるが、プラータは壊されても何度でも再生できるのだ。


 モチはプラータに優しく触れる。そしてなでるように触れる。コンコンと軽く叩いてみたりもしている。


「これは…並の硬さじゃないな……」


 モチは驚くようにボソッと呟いた。

 その後も十分程興味深そうに触っていた。

 モチは一通り触ったあとエンブレイズにお礼を言った。


「確かにその翼の硬さは尋常じゃない。貴方が万全の状態ならその翼を壊せるような奴はそうはいないだろう」


 エンブレイズはお前壊したじゃないか、と思ったが口には出さなかった。


「私が壊した時は既に脆くなっていました。それで運よく壊せたんじゃないんかと思います」


 成程、プラータは自分の魔力と体力が尽きない限り使う事が出来る。魔力か体力のどちらかが無くなったり急激に減ったりすれば脆くなり、飛行性能は半分以下にまで下がる。


 既にあの時、鋼鉄(イスピア―・)の銀槍(エイス・プラータ)を繰り出した時には魔力は底を尽きかけていたのか。

 エンブレイズはいまだに自分の魔力の量が把握できていない。と言うかフタバ達は自分の魔力の量を把握しているのだろうか。恐らく把握しているだろう。それで自分のアルマでの攻撃や戦闘でのペース配分などを考えているのだろう。


「恐らくだが、私の考えではその翼は鍛えれば今よりもっと硬くなるだろうし、もっと速く飛べるようになる」


 もっと硬くなればプラータが砕かれることはないし、もっと強力な攻撃を防ぐことが出来る。それに速く飛べれば攻撃の幅が広がる。


 だが、鍛えると言ってもどう鍛えればいいのか分からない。自分の魔力の量を増やせばプラータに込められる魔力も増えて強化されるのか? 


「うーん…違うな。翼を鍛えると言うよりは貴方自身を鍛えることが翼を鍛える事に繋がると思います」


 そう言ってモチは座っていたベッドから立ち上がり、部屋のドアに手をかけた。

 どうやらもう帰るようだ。モチも疲れているのだろう。そう言えば折れたはずのモチの角は短く、元に戻っている。どうやらモチの角も時間が経てば治るようだ。


「あぁ、そうだ。この場所に行ってみるといいですよ。貴方と同じ人間が住んでます」


 モチはエンブレイズに一枚の紙きれを渡し、部屋から出て行った。

 部屋の外から「眠い」と呟くモチの声が聞こえた。


 エンブレイズは布団の横に置いて、水を一杯飲んでからコップを重しにした。

 エンブレイズは布団の上にうつ伏せになる。そして重くなる瞼に耐えきれずに眠りについた。

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