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炎罪  作者: お終い
第1章
18/33

第17話

 股間の痛みがひいたので家に戻ったエンブレイズは、魔力結晶は狙わずに静かに食事をとった。フタバは魔力結晶を床の上においていつでも奪えそうに見えるが、奪えないと分かっているエンブレイズは狙わずにエネルギー補給に務めた。


「ごちそうさま」


 全員が食事を終え、フタバはエンブレイズの方に歩いてきた。フタバは座っているエンブレイズを見下しながらドヤ顔で魔力結晶を指先でくるくると回した。


 エンブレイズはそれを見てイラッとしてしまい、何も考えずに魔力結晶に飛びついた。フタバはそれを見越していたかのように飛び込んでくるエンブレイズの顔を右足で踏みつけた。


「ばーか」


 スカートを履いているフタバのパンツが踏まれながらにも視界に入れることが出来たエンブレイズは、まぁしょうがないかと思えることが出来た。


「パンツ見てんじゃねーよ。このスケベ」


 ニヤニヤと笑いながらそう言うフタバを見て、思わずエンブレイズはドキッとしてしまった。


「そんなんじゃ本当に奪えないよ。あれかな? 神童ってただのあだ名だったの?」


「このアマ…なんで神童って呼ばれてたのか教えてやるよ……!」


 エンブレイズはこう見えて案外単純なのだ。フタバの見え見えの挑発にのってしまうくらいには。


「あと……足、どかしてください」


 エンブレイズはパンツが見えるのでこのままでも構わなかったのだが、動けないのは困るのだ。




 そこから場所と時間を選ばぬ、魔力結晶争奪戦が始まった。

 エンブレイズはフタバの隙を見ては奪いにかかり、そして防がれていた。

 勉強中のフタバの背後に忍び寄り、机の上に置いてある魔力結晶に静かに手を伸ばすも顔面を殴られて防がれ。用を足している時に背後の窓から侵入し奪おうとするも、恥ずかしさで激怒したフタバにトイレットペーパーを投げつけられ防がれ。入浴中に天井裏からロープを使って頭の横に置いてある魔力結晶を奪おうとするも、水鉄砲を顔面に受けた後に風呂桶を顔面に投げつけられ防がれ。

 エンブレイズが魔力結晶に触る事すら出来ない日々が三日ほど続いた。因みに防がれた後には毎回お決まりのように顔面にめり込むほどの強力なパンチを受けていた。おかげでエンブレイズの顔は痣だらけになっていた。

 例外としてエンブレイズは食事中は狙わないようにしている。理由は魔力結晶を奪おうとしてる時に食事を落としてしまい、それを気にせずに続けていたらハナコがまるで鬼神のごとく激昂したのだ。「食べ物は大切にしなさい!!」と。あまりの迫力にフタバとエンブレイズは静かに返事をして二人仲良く片づけしたのだ。

 それ以来食事中は狙わないようにしている。


 エンブレイズにも元国王としてのプライドがあったようで、流石に三日も奪えないのでやり方を変えてみる事にした。


 フタバ魔力結晶をひもで縛って背負いながらが家の掃除をしている時、エンブレイズは実行に移す。


「うっ………」


 エンブレイズは突然自分の胸を押さえて膝から崩れ落ちた。


「どうしたの?」


 フタバはエンブレイズの元へ心配するように歩いて行く。


「なんだか分からないけど、心臓のところがが急に痛くなって……」


「大丈夫? 医者行こうか?」


「だ…大丈夫だ。きっと魔力結晶があれば痛みは治まると思うんだが……」


「………………」


 フタバはさっきとはうってかわって冷めた目でエンブレイズを見つめる。


「おぉ! 丁度いいところに魔力結晶があるではないか!! どうかそれを譲ってくれませんか?」


「…………」


「………あの…」


「………………」


「……えっと………」

 

 フタバの視線がどんどん冷たくなっていく。


「………ご…ごめんなさい」


 まるで炎すらも凍らすかのような冷たい視線に、エンブレイズは耐えきれずについ謝ってしまった。


「…まさかそんな手でくるとは思わなかったよ。キミにはプライドとかないのかな? それとも何か? シャーマ王国人って演技派だったの?」


 フタバの冷ややかな視線に、エンブレイズは無意識のうちに正座していた。


「ハイ……返す言葉もございません」


 フタバは見下すようにエンブレイズの前に立った。

 エンブレイズは顔をあげた瞬間にフタバのスカートの中が偶然見えてしまった。本当に偶然だったのだ。スカートの中を見ようと思ったわけではないのだ。水色だった。

 でも見えてしまったら男なら数秒は視線が固定される。例えそれがどんな状況でも。


「……エンブレイズは魔力結晶よりもパンツがほしいのかな?」


「あ、いや…そんなことはございません」


「ではこの後いつもの浜辺まで来てね。正々堂々正面から奪いに来て」


「わかりました」


 いつの間にか敬語になっていたエンブレイズであった。

 エンブレイズは奪えないとは思っていたものの、ここまで言われるのは予想していなかった。神童ならこのくらい分かってもいいはずだが、肝心なところで少しぬけているエンブレイズであった。



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