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炎罪  作者: お終い
第1章
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第9話

「皆の者!! 私がシャーマ王国の新たな王となったホムラ・シャーマだ。前国王である弟は私を殺そうとし、あろうことか両親と恋人に手をかけた。おかげで国中はパニックとなり国王不在の不安定な時期が僅かだが続いた。弟は国王の器ではなかったのだ。我が愚弟の過ちを心より謝罪する。私は、弟の愚行を止めることが出来なかった。だからそのかわりと言うわけではないが、私が国王となりこの国を導く!! 民衆よ、これからよろしく頼む」


 この日は新国王誕生の日だ。前国王が過ちを犯したために僅か一日にして国王を引退してから二週間。

 人の皮を被ったバケモノだった弟の尻拭いをするために、その兄であるホムラ・シャーマが国王となった。


 エンブレイズ・シャーマは式典の日に両親と恋人を殺害し、兄であるホムラ・シャーマに重傷を負わせた後、逃亡。エンブレイズを全世界指名手配とし現在捜索中である。王族の一家皆殺し事件として調べられている。動機については様々な憶測が飛び交っている。今まで裏で殺しをやってきた殺人鬼だったとか、財産狙いだとか、単純な恨みだとか。本当の理由は分からない。


 と、言うのがホムラが操作して世間に流した『情報』である。

 事実を知るのはホムラと、彼の仲間の数人だけだ。


 国王の誕生パレードは今回は中止となった。前回の事を考えれば当然ある。

 式典が終わり、国には日常が戻る。


 だがホムラはこの後他国の王との会合があるために、急いでスーツに着替えて馬車に乗る。

 三人の護衛も同じ馬車に乗り込んだ。

 この三人の護衛は真実を知るホムラの仲間だ。全員が同じスーツを着ている。式典で両親とホムラを撃った狙撃手であるサングラスをかけた金髪の女、移動中のエンブレイズを襲ったスキンヘッドの男、少し小太りの男だ。


「しかし…よかったのですか?」


 唐突にサングラスをかけた金髪の女がホムラに尋ねた。


「何がだ?」


「いえ、エンブレイズをエルプサン海に捨ててしまって。殺さないようにしていたのにあれでは死んでしまうのでは?」


 ホムラはフッと鼻で笑った。

「いいんだよ別に。あいつはああ見えてしぶといからな。炎を体から抜いた影響で炎は当然使えないとして、身体能力も六割以下に下がっているから相当キツイと思うが死にはしないだろ」


 体に炎や雷、水や大地のの力を四大国の人間は、生まれながらに普通の人間よりも身体能力が二~四割程高い。これは体中を炎などが巡っているためである。血液のように体中を流れる炎は筋肉や内臓、骨にさらには細胞までもがその影響を受ける。体中を巡る炎は体の中でクッションとなり、時には増強装置となる。

 例えば炎の力を宿した人間がパンチを繰り出したとする。そのパンチは腕の筋肉を使って繰り出す。それに加えて腕に流れている炎が第二の筋肉の役割を果たすことで、人間としての筋肉から発せられる力と筋肉と同じ動きをする炎から発せられる力が合わさるのだ。つまり通常より威力の高いパンチが出せるのだ。

 衝撃を受けた時も自身の筋肉と筋肉の代わりをしている炎がクッションになる。

 因みにほとんどの人間が体内の炎や水などの操作は無意識でやっている。

 これはホムラが何度も人体実験を繰り返し知る事が出来た情報なのだ。勿論一般市民は知らずに一生を終える。

 王族が人体実験に手を染めていたとなれば問題となるので極秘で行われていた。


「フフフ…」


 ホムラは笑いがこみ上げてくるのを耐えられなかった。


「フハハハハハハハハハ!!! 早く俺の前に戻ってこい! その時はさらなる絶望へ突き落してやる」


 ホムラは怪しくニヤリと笑いそう言った。


 決まった、とホムラが満足した瞬間、ガタンという音と共にホムラたちが乗る馬車が傾いた。


「どうしたぁー!」


 ホムラは運転手に向かって叫んだ。


 運転手の男は申し訳なさそうに頭を下げた


「すいません。…車輪外れました」


「えぇー……」


 ホムラは残念そうな声をあげた。

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