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炎罪  作者: お終い
第1章
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プロローグ

 その日、十一歳のホムラと三歳のエンブレイズは兄弟二人で近くの河原に来ていた。


 シャーマ王国の次期国王有力候補のホムラは、勉強や訓練ばかりの毎日に嫌気がさして大好きな弟を連れて城を抜け出した。

 弟のエンブレイズも兄の気持ちなど知らずに、大好きな兄と二人でお出かけだと嬉しくなっていた。


「毎日毎日勉強ばかりだし、あんな訓練じゃ全然強くなれない。模擬戦闘だって相手が弱すぎだよ」


 ホムラは天才と呼ばれ勉強は既に高校卒業レベル、体術だって並の大人では歯がたたない程に強くなっている。


「俺はいつか父上をも超える炎の民最強の戦士になるんだ! もっと強い技を身につけてもっともっと強くなるんだ。その時はエンブレイズ、お前を俺の副官にしてやるよ!!」


「にーちゃんがんばれー!」


 エンブレイズは兄の出した炎に目をキラキラ光らせる。ホムラは自分が出した炎は既に手足のように扱える。火力だってあるし、ちょっとやそっとのことじゃ消えたりしない。ホムラは自分の一番の得意技を弟に披露した。手のひらから大きな炎の玉を空に向かって放った。

 因みにエンブレイズはまだマッチ程度の炎しか出せない。


「見ろよ!こんなことだってできるんだぜ」


「すげー!!」


「あ! なにやってんだよ!!」


 エンブレイズは興奮して右手の人差し指から小さな火を出したまま地面に生えた草を掴もうとした。

 ホムラが止めなければ危うく草に引火して河原が火事になるところだった。


「気をつけろよ」


 ホムラはエンブレイズのやんちゃなところも、手のかかるとこも大好きだった。


「にーちゃんおなかすいたー」


「む、そう言えば俺もお腹空いたかも」


 と言う事で二人でおやつを買いに行くことにした。が、二人ともお金を持ってなかった。何も考えずに家出したのだから当然と言えば当然だ。高校レベルの勉強は難なく出来るのに、ホムラは少し抜けているところがあった。


 土手を駆け上って道路に立ったエンブレイズが大きな声で無邪気に大好きな兄を呼んだ。


「にーちゃん早く!」


 お金ないって言ったのにどこに行くんだ、とホムラは思いながらもエンブレイズの方にゆっくりと歩いて行く。





 ホムラは右手の方から激しい音が聞こえてくることに気づいた。ふと視線をそちらに送ると荷馬車がガタゴトと走ってきていた。

 エンブレイズが立っている場所は道路なのだ。荷馬車が走ってきていたとしても何ら不思議はない。

 問題は荷馬車の運転手はこくりこくりと眠っていることだ。無邪気にこっちを見て手を振っているエンブレイズは荷馬車に気づいていない。

 そして荷馬車とエンブレイズの距離、僅か数メートル。危ない、と思った時にはホムラは既に自分の体が走り出すのを止められなかった。


 ホムラはエンブレイズを抱え上げる。目の前には既に自分よりも大きな荷馬車が迫ってきていた。ホムラは逃げるために立ち上がろうとする。が、重心が僅かに後ろにずれてしまい尻餅をついてしまった。逃げられない、そう思った時にホムラの頭に浮かんだ選択肢は、一番選んではいけないものだった。


「あぁぁぁぁぁぁ!!」


 それはその荷馬車を壊すことだった。

 だからホムラは弟を守るために馬車に向かって全力の炎を出してしまった。




 その時僅か十一歳の少年に予想が出来ようか? その馬車が人の大きさ程のガス官を運んでいたなんて。

 いくら天才と呼ばれようが所詮はまだ十一歳の子供。自分が弟を助ける為にとった行動が大事故に繋がってしまうなんて。


「え?」


 ドゴォォォォォォォォォン!!!!!


 荷馬車は大きな音をたてて爆発した。

 もくもくと空にあがっていく黒煙、二人の子供の前ではゆらゆらと揺らめく大きな炎。そしてその炎の中では動かない、真っ黒な人のようなもの。鼻につく肉の焦げる臭い。

 天才と呼ばれる少年ですら自分の目の前の出来事に対して理解が追い付かなかった。


 目の前で揺れる炎が周りの草木などに引火して広がっていく。

 ホムラは言葉がでなかった。ただただ目の前に広がる炎を見つめることしか出来なかった。


「火事だ―――!! 早く水をもってこい!!」


 二人の子供は近くにいた大人に抱え上げられその場を離れた。

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