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ともだち

 ユキちゃんは流されて、流されて、どんどん進んでいきました。


 ふと気がつくと、流れがゆるやかになっています。心なしか、川のはばも広くなっているようでした。


 そのまま流されていったユキちゃんは、おどろきの声をあげました。


 水の色が変わったのです。


「わあ!」


 それは今までのようにとうめいな水ではありませんでした。みどり、青、そして少しの赤がまじったような、なんともすてきな色なのです。


 上のほうはきらきらとかがやいていて、下のほうは少しくらくなっています。けれど、それはこわいようなくらさじゃなくて、なんだか安心できるくらさなのでした。


 よく見ると、まわりにはたくさんの雪のこどもがいました。


「やあ、きみはどこから来たんだい」


「げすいどう、っていうところよ。くらくてこわかったわ」


「へえ、ぼくは空からここに落ちてきたのさ」


 水に変わった雪のこどもたちは、近くにいるこどもたちとおはなししていました。じぶんはどこをとおって海にやってきたのか、どんなひとに出会ったのか、などなど。


 ユキちゃんにも、だれかが話しかけてきました。


「ねえ、お名前は?」


 かわいい女の子です。


「わたし、ユキ。あなたは?」


「わたしはセツ。ユキちゃんね、よろしく!」


「セツ……セツ。いい名前ね。セッちゃんってよんでもいい?」


「もちろん!」セッちゃんは、うれしそうな顔をしました。


「ねえ、ユキちゃんはどこから来たの?」


 ユキちゃんは、空から落ちてきてここに来るまでのことを話しました。


「えっとね、風のおにいさんにふき飛ばされて、草のおばさんに会って、おばさんのこどものかぜをなおしたの。それから川に落ちて、おさかなさんとしゃべって、流されて、ここに来たんだよ」


「すごいねえ!」セッちゃんは、とてもおどろいたようでした。


「わたしはね、地面に落ちてそのまま土の中にもぐっていったのよ。そしたら地面の中に川があって、流されて、ここに来たの。だれとも会わなくて、さびしかったわ」


 地面の中にも川があるなんて、ユキちゃんは知りませんでした。けれど、さびしいきもちはよく知っていました。


 そういえば、おさかなさんがなにか言っていたような気がします。


「ねえセッちゃん」


「なあに?」


「おさかなさんのおともだちがね、赤い色の海草のおうちにいるらしいの。いっしょに行ってみようよ!」


 セッちゃんは目をまるくしました。


「海草のおうち? おもしろそう!」


「じゃあ、行こう」ユキちゃんはすいすいと泳ぎだしました。


 セッちゃんもそのあとに付いていきます。


 ふたりは気づいていませんでしたが、ふたりのからだは雪だったときよりすごく大きくなっているのでした。川の中で流されているうちに、少しずつふくらんでいたのです。


「おともだちかあ……ねえユキちゃん、わたしとおともだちになってくれない?」


 セッちゃんがそんなことを言うので、ユキちゃんはびっくりしてしまいました。おともだち……なんてすてきなひびきでしょう!


 ユキちゃんはうなずいて、にっこり笑いました。


「うん、もちろん! これからもよろしくね!」


 草のおばさんが言ったとおりでした。ユキちゃんにともだちができたのです!

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