たびだち
空は真っ白でした。
真っ白な雲から、真っ白な雪がひらひらと落ちてきていました。
よく見ると、雪のひとひらひとひらは生きていて、おたがいに「楽しみだね」「わくわくするね」とことばを交わし合っているのでした。
その中にひとつだけ、悲しそうな顔をしている雪のかけらがいました。ユキちゃんです。
あまりにも悲しそうなので、雲のおじさんがユキちゃんに話しかけました。
「ねえユキちゃん、なんでそんなに悲しそうなの」
「だって、おかあさん雲からはなれちゃったんだもの。おかあさんのところに戻りたいよう」
ユキちゃんはそう言って目になみだをためました。「さびしいよう」
「そんな顔しないの。ほら、下を見て」
下に広がっているのは、空と同じ、真っ白な世界でした。
でも、よく見ると、雪の下にあるいろいろなものの色が……草木のみどり色だったり、土の茶色だったり……がぼんやりと浮かんでいて、まるで虹のように色とりどりなのでした。
「わあ」
ユキちゃんはおどろきました。
「白いのに、白くないのね」
「そうでしょう。下に行ったら、いろいろな楽しいことが待ってるよ。ほら、勇気を出して」
さっきよりは明るい顔になりましたが、ユキちゃんはまだ悲しそうでした。
「でも、おかあさん……」
「ユキちゃんががんばって大きくなったら、いつかまた会えるよ」
雲のおじさんは、ユキちゃんをはげましました。
「ほんとに?」
「ほんとうだとも。さあ、いってらっしゃい」
雲のおじさんは、ユキちゃんの背中をとん、と押しました。
「うん、いってきます」
ユキちゃんは、なみだをぬぐって、ふわりと飛び立ちました。
そうして、ゆっくりと、ゆっくりと、地上におりてきたのでした。




