心配事
私は、神名舞華。ごく普通の小学5年生。
「今日は、地震の事について話します―――...。」
地震かぁ、でもそんなんあんまおこんないよね?
地震起きるとしても震度2くらいだもの。ねぇ?
(・・・早く終わんないかぁ~・・・。)
いつも優しく、ほがらかな顔をしている先生は、今ではとても真面目な顔。
「地震はね、津波を起こしたり大怪我しちゃうかもしれません。」
みんな、先生の話を聞いて「ひぇ~」とか「え~やだ、怖い!」とかざわめきだす。
全く怖くないよ、そんなの。
でも、少し心配なことが一つだけある。
私の住む福島県福島市は海沿いの街。
もし、ここで震度5、6なんて地震が起きたらみんな津波に飲みこまれてしまう。
「こら、神名さん!聞こえるんですか?教科書78ページを読んでください。」
「えっ?あっ、はっ、はい!」
教科書のページをよく聞いてなくて、どこを読めばいいのか分からない。
「・・・78ページだよ。」
後ろから声が聞こえた。
驚いて後ろを振り向くと、声の主が不思議そうな顔をした。
芳野拓夢君、私が片思いしている人。
かっこよくて、勉強も出来て、優しくて、スポーツ万能!
「・・・さん。・・んなさん。神名さん!」
「へっ!?あぅ!ごめんなさぁい!」
慌てて78ページを開く。
みんなクスクスと笑いながら教科書をたてる。
「地震は、海の・・・」
最後まで読むと、顔がプシュウゥゥゥ・・・と熱くなる。
その後、座る・・・というか、へこたれるような感じで座った。
東日本大震災、3月11日。
小学2年生の時、強い揺れが襲った。
校庭のあちこちだひび割れて
教室は無茶苦茶になった。
家も、テレビが倒れ食器棚が倒れて
電球が割れて、スピーカーも壊れて
気付くと目からは涙がもりあがって零れた。
ぼろんぼろんと一粒一粒落ちてゆく。
涙は服の中に入り、気持ち悪い。
それをぬぐう事もままならぬぐらいだった。
人生受け入れなきゃいけない。
かすれた声でかすかに言った。
苦しいよ。誰か助けて。
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この話は私は体験したお話。
幼い頃、東日本大震災がこのちっぽけな町を襲った。
電柱が倒れていた。
石のブロックが落ちていた。
木が根をパキパキ、ミシミシと地上からドスッと横たわった。
その風景を見て、力尽きてひび割れたコンクリートにそのまま横たわった。
思い切り倒れたから頭に激痛が走った。
だんだん視界はかすみ、たちまち真っ暗になった。
貴方は覚えてる?あの日の事。