Prologue~プロローグ~
皆様はじめまして、中途 舞人という者です。
主に他の携帯小説投稿サイトにて活動しています。
ハンドルネームも同じなので見かけた方は「おぉ」程度に思っていただければ、私としては嬉しいです。
ちなみに、本小説は縦書に切り替えて読んでもらう事をおススメします。
◇魔王城近くの村、勇者一行
「ついにここまで来たんだな、勇者」
「えぇ。今まで私達が生きてここまでたどり着けたのも、勇者様と精霊様が私達をお守りしてくださったからです」
「ぼ、僕たちもゆーしゃ様をお守りしたけどねっ!」
「……」
「……ん?おい、どうしたんだ勇者?あまり顔色が芳しくないぞ?」
「…………」
「おい、勇し……クロウ大丈夫か……?」
「あ、女剣士さん!名前で呼んでは意味がないじゃないですか!私達はこれでも命を狙われる魔界では超一級のお尋ね者……個人を特定するような言動は慎むべきです!」
「す、すまない……しかし女僧侶だって心配じゃないのか?ここ数日の勇者の態度は明らかにおかしいぞ?一言も喋らないし……」
「た、確かに元気がないという感じはしますが……。でも魔王との決戦を目の前に控えているんです。緊張するのならともかく、しないなんて事はありえませんよ」
「そんなものなのか……?」
「女剣士さんとは違って勇者様は繊細なんですっ!」
「なっ!?それでは私が“がさつ”みたいに聞こえるではないか!」
「そうじゃないんですか?」
「な、なんだと~~っっ!!」
「ねぇ、ゆーしゃ様。ゆーしゃ様はきっとお腹が痛いんだよね?ねっ?」
「…………」
「勇者も勇者だ!黙ってないで少しは何か言ったらどうだ!」
「ちょっと、女剣士さん!」
「確かにお前が緊張するのも分からないでもない。今まで戦ってきた六魔皇どもの城とは比べ物にならない程のデカさだよ、あの魔王城とやらは。それに魔気だって魔界の他のどの地域とも比べ物にならないほど、濃くて邪悪なものになるだろう」
「だったら少しは……」
「だけどなっ!今まで勇者はどんな魔物が相手でも一度も臆した事はなかった!どれだけ多勢に無勢だったとしても全てその剣で葬り去ってきたじゃないか!何を今さら恐れる事がある?たった一人!たった一人だ!あとは魔王たった一人をその剣の錆にしてやるだけで全てが終わるんだ!」
「女剣士さん……」
「だから、な?あと少しだけいつもの勇者でいてくれ。いつもの強くて優しくて仲間思いの勇者で……」
「……ありがとうな女剣士。お前の言葉でようやく覚悟が決まったよ」
「べ、別に礼を言われる程の事はしていないぞ……」
「いや、ずっと悩んでた事にようやく踏ん切りが着いたんだ。礼を言わせてもらう。ありがとうな」
「うぅ~~、顔から火が出そうだ……」
「うふふ、女剣士さんって実はピュアなんですね」
「う、うるさいっ!」
「悪いがみんな聞いてくれ。皆に一つ話しておかないといけない事がある。今この時を逃すと、もう二度と言う機会が得られないんじゃないかと思うから……」
「何だよ、改まって……?」
「何です?」
「なーにー?」
「悪いが皆はここに置いて行こうかと思う。……お前達とはここでお別れだ」
「なっ!?どうしてそうなる!冗談ならふざけるのはやめろ!」
「そ、そうですよ勇者様。冗談でも言って良いことと悪いこと、それに良い時、悪い時があるんですよ……?」
「もしかして、それは僕たちが役たたずだから……?」
「おい、そうなのか!?もし、そうなんだとしたらお前を殴っても殴り足りないぞ!!」
「もう、冗談はよしましょ?ね?こんな言い争い、百害あって一利もないですよ?」
「そうだぞ!今ここで仲間との関係を乱してどうする!今は魔王を倒す事だけを考えて、より一層連帯感を強めるべきだ!」
「ゆーしゃ様は僕たちの事を役たたずだと思っているの……?」
「うるさいぞ!書術師!勇者がそんな事思ってるわけ……」
「そうだ」
「なっ……おいクロウ、貴様今何と言った?」
「まさか……私達の聞き間違いですよね……?勇者様?」
「もう一度言う。お前達はここに置いて行く」
――バキィッ
「っ……いきなり何すんだよ、女剣士」
「クロウ、貴様は今自分が何を言ったのか分かっているのか?今まで自分を信じてついてきてくれた仲間をあろうことか切り捨てたんだぞ?私達の信頼を裏切ったんだぞ?どれだけの事を貴様がしでかしたか、もう一度深く考えてみろ!!」
「そ、そうですよっ。あまりにもの緊張で思いもしない事を言ってしまったのなら、一言謝ってくだされば女剣士さんだってきっと許してくれますよ」
「ふん。それでももう一発くらいは殴らせてもらうだろうがな」
「いや……やっぱり魔王城には俺一人で行く。皆とはここでお別れだ」
「なっ、クロウ貴様!!」
「みんな……元気でな」
「なっ!!ちょっと待て!!」
――シュワン
「おい、クロウ!!……うぅ、うわぁあああああっっっっっ!!!!」