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オルヴァニスでのピクニックの後、城に戻る

馬車はオルヴァニスとヴァルテリスを結ぶ街道をゆっくりと進んでいった。新鮮な田舎の空気がまだ服にまとわりつき、笑い声は次第に消え、穏やかな静寂が訪れた。王女たちは席に座り、それぞれが思いに耽っていた。リオラは軽やかなメロディーを口ずさみ、セレスティーヌはノートにメモを取り、ヴィヴィアンは花冠を頭に飾ったまま窓の外を見つめていた。エララは沈黙したまま、視線を地平線に定めていた。

向かいに座るエイドリアンは、エララをそっと観察していた。ピクニック中の彼女の態度、川を見つめる深い視線、ヴィヴィアンへの母性的な抑制に、彼は皆を驚かせていた。彼女の沈黙は、旅の疲れよりも重く感じられた。


彼は他の皆の落ち着きを乱さないように、少し彼女に寄りかかり、優しく言った。「エララ…」彼は優しく言った。「今日、あなたが心配しているのを見ました。口には出さなかったけれど、私は感じました。」


エララはわずかに頭を向けた。その暗い瞳には、容易に読み取れないきらめきが映っていた。「差し迫った危険を心配していたわけではありません」と、まるで母親が子供に何かを教えるかのように、彼女は静かに答えた。「それは、思い出させてくれたんです。冷静さは脆いものです。私たちは、肩書きを持つ前に人間であることを忘れてしまうことがあるのです。」


エイドリアンは頷いた。自分が言った以上のことを理解していたのだ。 「もし何かあったら…」彼は謙虚さを失わず、毅然と続けた。「助けてあげる」私は甘い人間ではない。私の手で全てを変えることはできないと分かっている。でも、そばにいられる。あなたのために。


エララは彼の言葉の真意を確かめるかのように、じっと彼を見つめた。そして、短い身振りで、かすかな笑みを浮かべた。

「エイドリアン、あなたの助けは力ではない。あなたの存在にある。それはあなたが想像する以上のものだ」


セレスティンは会話に驚き、ノートから顔を上げた。そして一瞬、エイドリアンと目が合った。彼女は何も言わなかったが、その沈黙の中には、言葉を必要としないほどの、かすかな認識、親密さがあった。


ヴィヴィアンは、受けた叱責をまだ考えていたが、視線を落とし、呟いた。「もしかしたら…もしかしたら、私たちは皆、ただのお姫様じゃないってことを思い出す必要があるのかもしれない」


リオラは軽く笑い、厳粛な雰囲気を破った。


「まさにその通り!だからこそ、ピクニックは千の助言よりも価値があるんだ。」


馬車は進み続け、再び沈黙が訪れた。だが、今度は重苦しいものではなかった。それは、理解に満ちた、共有された沈黙だった。エララは母親のように語りかけ、エイドリアンは謙虚さを忘れずに助けを申し出、セレスティーンは目に見えない親密さをほのめかした。


城への帰還は、単なる物理的な旅路ではなく、感情的な旅路でもあった。静寂は脆いものだったが、そこには結束と人間らしさ、そして言葉にできない約束が彼らを支えているという確信を、彼らはそれぞれに抱えていた。

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