人を見つける
死にものぐるいで森を抜けると、白い光は焚き火らしいと見当がついた。岩に焚き火の光が映って人影が見える。
助かる!助けて!助けてくれ!
後ろから追いかけて来る奴らも、森を抜けると急に足音が近づいた。
急にぴりっと腕に痛みが走る。と、不意に一頭が倒れた。
シュッという音が聞こえて、獣の気配が少し離れる。
あともう少し!あの火のそばに行けば!
もつれる足をなんとか動かして、焚き火に近づく。なかなか近付かない。意外に距離がある。でも人だ。四人いる。
すげえ。剣持ってる。あっちは弓だ。もしかして耳尖ってないか?エルフ?もしかしてエルフ?
キター!お約束キター!これだ、これ!剣と魔法のアレだ!そうに決まってるっしょ!
しかしこっちが何か言おうとする前に、中の一人が剣を突き付けた。
何か言った。
え?聞き取れなかった。
ゼエハアする息を何とか整えて、恐る恐る挨拶してみる。
「あのー、す、す、す、すみません。た、助けてください・・」
相手の顔が、見る見るしかめ面になる。さらに何か言ったが、全然分からない。
ええ?言葉が通じない?
「お、俺、何か、急に森の中にいて、多分異世界から来たのかなーなんて。」
事情を説明しようと試みたけど、剣先は俺の目の前から動かない。これ、本物だよな。切れる、よな。
一番年下っぽいのが何か言った。
四人はお互いに顔を見合わせて、しばらくやり取りした後、やっと剣は引っ込められた。
さらに四人は何事か話した後、最初の茶髪が俺が手に持っているスマホを指差した。
「あ、これはスマホ、えーと電話っす。懐中電灯の代わりに」
茶髪はウンザリしたように俺の説明を手を振ってやめさせた。言葉がわからないということらしい。
急に左手がずきずきし始めた。何だろうと思って見ると、ざっくり切れている。ていうか、なんか血がだらだら出ている中に白い筋が見える。これ・・・骨?まさか。急に目の前がふわふわし始める。いや倒れてる場合じゃないって。いやでも、骨・・
黒髪短髪の男が何か言って、馬車の中から毛布が降ろされた。驚いた事に、中に一人、女の子が乗っていて、その子が出してくれたようだった。その男が、身振りで「休め」と伝えてきた。それから俺の手から血がぼたっと落ちたのを見やった。
ああ、でもよかった。ほんとよかった!何か泣きそう。とりあえず命だけは助かりそう。
「ありがとうございます!」
礼を言ったら、茶髪に嫌な顔をされた。こいつ、愛想悪いなぁ。俺とタメか、せいぜいニこ上って感じの若造なのに。
そこまで思ったところで、すーっと意識が遠のいた。
あ、もうだめだ。だめかもしんない。
ハードな午後だった。明日、とにかく帰る方法を教えてもらおう。てか、目が覚めたら元に戻ってねぇかな。もう死にそう。ゲロ吐きそう