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異世界からの帰り方   作者: たかなしことり
一日目
3/26

なんかオオカミに追われる

 あんまり起伏はないけど、木の根がすごくて、歩きにくい。息が上がる。

 本当にこっちで大丈夫かな。

 歩きながら、でもぐるぐる考えが止まらない。

 植生が、日本に似ている感じはする。もしかして、もしかしたら異世界じゃなくて、例えば日本のどこか、秋田の山の中とか、そんなんだったらまだ救いがある。

 それだったら、まだ歩いてでも、電車でも家に帰れる。


 ちょっと木立が切れたので、空を見上げる。

 めっちゃ夕方だ。ヤバい。

 空の端っこに、うっすら黒い雲が縦に浮かんでいる。

 うっすら、黒い。

 あ・・・、煙?


 煙?! いや分かんないけど。煙と思って見たら、煙っぽい。

 よし!誰かいるかも。当たりかも。

 とにかくそっちに向かって、歩き出す。


 だけどヤバい。そんなにいかないうちに、結構暗くなってきた。

 落ち葉とか苔とかで滑りやすいから、スマホの明かりで時々照らしながら進んでいるが、どうにも心細い。

 あの煙、気のせいだったのかも。もう木に隠れてほぼ空は見えない。今のうちに、登れる木を探しておいた方が良いのかな。

 そう思った時だった。

 不意に背後でグルグル、と犬の唸り声がした。


 犬?

 思わず振り向いて、ふぉおおうと声が出た。い、犬じゃねぇ。でかい。牛か。クマか。

 少し距離があるからはっきりとは分からない。もう背後はかなり暗い。でも俺の肩ぐらいの高さできらっと目が光っている。こっち見てるよ。恐え〜!

 どっか逃げるとこ!どこだ!

 スマホの明かりでぐるぐる辺りを照らしたら、それが当たって一瞬その目が怯んだ。

 よしゃ!今のうちだ!


 まだ進行方向は、木のシルエットがうっすら見えている。足がもつれる。ヤベェ!木の根に引っかかる。何とか前に進むが、登れそうな木なんかどこにもない。

 やばいやばいやばいやばい、泣きそう。

 俺このまま喰われて死ぬのかも。後ろで落ち葉を踏む足音がする。時折ふわっと獣の気配がすぐそばに来る。スマホをめちゃくちゃに振り回して、しのぐ。


 息が切れる。肺に空気が入ってこない。

 何十度目かにつまずいて、もう心の中でも悪態が出なくなった頃。不意にちらりと白い点が見えた。

 一瞬他の動物の目かと思ってギョッとするが、一つだけだ。動かない。

 もしかして、灯りか?!

 人の家かも!

 助かった!助かるかも!くそっ!走れ!動け足!



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