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異世界からの帰り方   作者: たかなしコとり
七日目

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20/26

古代魔法研究所

若い方の先生の研究室っぽい所に移動して、さらにリズベルが話し込む。

どうやら、思いがけず知り合いに会った、ということらしい。

なんか「おおー」とか「うーむ」とか言っていることは分かる。

それから、広辞苑みたいな分厚い本を出してきて、三人でのぞき込む。リズベルがふんふんとうなずいて、床にチョークで魔法陣ぽい物を描き始める。


うぉー。かっこいい。魔法使いっぽい。

あれ、でもこの模様、どこかで見たような。


俺を呼んで、その中に立たせる、

「どう。話分かる?」

おお!思わずぶんぶん頷く。

「全然こっちの方が楽だわ。」

「そりゃ、魔獣を手懐ける用の魔法に比べたらね。普通に人同士の翻訳魔法だから。」

若先生はうむうむとうなずく。すげぇ。他の人の言葉も分かる。

「で、異世界に帰る方法が知りたいと。来た時は?何か前兆はあったかな?」

「いや、普通に道を歩いていました。それでこうスマホを見て、顔を上げたらこっちの森の中で。」

「スマホ?」

「えーと。」

スマホを持った手つきになっていた左手を、みんな見ている。

「あー。時間とか写真とか見たり、地図とか調べたりする道具というか。」

「それが、その大きさで見られると?魔法ではなく?」

「はあ。」

若先生は感嘆の声を上げた。

「素晴らしい。是非君のいた異世界に行ってみたいものだ。」

「方法が分かれば、あんたも行けるでしょうよ。」

横からファラが口をはさんだ。

「で、異世界に行ける方法は、デリク先生にも分からないって事ですかね?」

「ま、聞いたことはないね。異世界人に会ったこともないし、文献で読んだこともない。大変面白い。研究材料として申し分ない。彼はこちらで引き取るよ。」


ウキウキ話す若先生に、ファラとリズベルは顔を見合わせる。

研究材料って言い方な。

そして俺をちらっと見た。

「あーまあ、そうしてくれるとありがたいっすね。ただ一旦マーシェとも話しておきたいし、彼の都合もあるだろうから、結論それからでもいいですかね?」

「もちろん。」


それから若先生は、ひげの剃り残しのあるあごをぐりぐりさすった。

「そう言えば何年か前に北東の黒大陸で、突然『マオ』と名乗る男が現れて辺りの魔獣を殺しまくった挙句、これも突然現れた『ユシャ』という名の男に殺されたという事件があって、二人とも黒大陸の言葉が話せなかったらしい。そのせいか、二人は異世界から来たという噂が流れた。」

「ええ!ほんとですか!その・・ユシャという人はどうなったんですか!」

「さぁ。噂だからね。」

「黒大陸ってどれぐらい離れてるんですか?」

「直線距離を船で行けたとして、片道二週間。」

「普通は?」

「ここから白大陸へ渡って、一年半かけて大回りする。」

ぐはっ。

「なんでそんなに差があるんですか。」

若先生は紙を引き寄せて、簡単な地図を描いてくれた。

俺の知っている世界地図とは全然違う。真ん中に、引き伸ばした四国みたいな青大陸。右上にひし形の黒大陸。左上に鳥の片はねみたいな白大陸。そして左下に適当に〇をかかれた赤大陸。

「この青大陸と黒大陸の一番近いところは、ヒトの領域じゃないからねぇ。この辺からずっとスーナルの領域で、許可がなくては港に入れないし、黒大陸の方は港らしい港がない。無理に船を入れたってウィークルに荷物も命も取られて終わりだ。この経路ではヒトはほぼ誰も行かない。」


スーナルもウィークルも分かりませんが。

「ファーツェはどの辺ですか?」

聞いたら、四国だと大体かずら橋のあるあたりを指さされた。

「俺が最初にファラと出会ったのは、どの辺?」

「え~」

ファラは眉を寄せて、その2ミリほど下を指した。

あれだけ歩いて、たったそれだけ!

そりゃそうか、世界地図なんだから。しかしびっくりするほど広い。

とにかく、ユシャという人がどうなったかは分からないという事だ。

「もっと早く行く方法はないんですか?」

「そんな方法があれば、みな使うだろう。」

ファラが指摘した。そりゃそうだ。

若先生も苦笑いしている。

「基本的にそれぞれの種族は、お互いの領域を侵さないように暮らしている。領域を侵したものは殺されて当然と考える。これはこの世界の不文律と言える。」

「どの種族が強いとか、無いんですか?」

「五百年前ぐらいまでは、ヒトの王国が世界のほぼ全部を支配していたらしい。あくまで遺跡に残されていた文献によるものだが、しかしその王国は今どこにも残っていない。滅んだと推測されるが、なぜ滅んだのかなどは分かっていない。魔獣に襲われたという説もあるし、流れ星が落ちてきたという説もある。」


なるほど。もし魔獣に襲われて、ヒトの王国が滅んだのだとしたら、『マオ』がそれを恨んで魔獣を殺しまくったというのも分かる。

ともかく、不確かな情報をもとに動くには危険がありすぎるので、その話はナシになった。

また明日来ます、と若先生の部屋を出る。

「でも、結局あの先生のところにいても、帰れるかは分かんないんですよね?」

とそう言ったら、

「クテゼワ、ジェクオキ!」

と言われて、ははは!と笑われた。

そーだよ。言葉がな。

時々通じるから、通じないときのがっかり感がハンパない。


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