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異世界からの帰り方   作者: たかなしことり
六日目
16/26

ゴブリンを見る


 朝。なんかめっちゃ臭いにおいで目が覚める。

「くさっ」

鼻先に動物のうんこでも落ちてるのかと思った。ニンニクたらふく食べた後のうんこの臭いというか。鼻がおかしくなりそう。

 夜が白んでいる。

 昨日も野宿だった。ナントカ山脈とかいうのを右手に見ながら、結構歩いた。道が見えなくなるぐらい暗くなるまで歩いて、そこからちょっと道を外れた草むらで、さくっとその前の晩と同じ手順で支度をして、さっさと食べて、さっさと横になる。素早い。

 ファラたちと何が違うんだろうと考えると、彼らは一晩中火を焚くために薪を集め、かつ交代で火の番をしている。

 リクスはそんなことしない。鼻をつままれても分からないぐらい、真っ暗な中でも、普通に焚火なしで寝る。

 そのリクスは、近くの岩に腰かけて、剣を研いでいた。

「おはようございます。」

「ああ。」

「なんか臭くないですか?」

そう言うと、リクスはあごでちょっと先を示した。

「ゴブリンのせいだな。」


 え!!ゴブリン!

 見たい!


 RPGではおなじみの!ファンタジー小説でもおなじみの!大体初心者にレベル上げに散々使われた挙句、話の後半ではまったく登場しなくなる、雑魚キャラ。

 いや臭い。

 上着の袖で鼻を覆いながら、岩の向こうを覗く。

 灰色のデカめのサルが、死んでいた。しかも三匹。


 うわっ。こわ。でかいよ。ニホンザルの倍はある。チンパンジーぐらいはある。

 そんでめっちゃ臭い。

 サルと違って毛が無くて、その代わりになんかいろいろ巻きつけてある。

「あいつら、防具の代わりに自分のウンコを体に塗りたくるからな。起きたならちょうどいい、さっさと出発しよう。臭くてかなわない。」

涼しい顔をしているけど、やっぱりリクスも臭いんだ。

急いで支度する。


「あれ、リクスさんが殺したんですか。」

「夜明け前に襲撃された。」

「すげぇ。」

この人、本当に強いんだ。

リクスは軽く眉を顰める。

「話すときはあいまいな表現は避けるように。君にどう聞こえているかは分からないが、この翻訳魔法は君の話の意図するところを翻訳している。意図がはっきりしないとまったく翻訳できない。スゲーとはなんだ?」

「ええと。リクスさんの強さに、感心しています。」

「なるほど。」

「そうなんです!マジリスペクトです。」

「・・・君の話す言葉は本当にデタラメだな。」

リクスはため息をついた。

「異世界から来たと言っていたが、君の世界ではみなそうなのか?それで正しく意思疎通が図れるのか?」

「意味は通じていると思います。」

「そんなふうにあいまいなままでは、争いが絶えないだろう。」

「ええと。なんとか仲良くやってますよ。ていうか、異世界の存在を信じてくれるんですか。」

「否定する根拠はない。」


嬉しいような。悲しいような。

この人にとっては、異世界もド田舎もそんなに変わりはないんだろう。


歩き始めて気が付く。

割と山の中に入っていく。

「こっち、近道なんですか?」

「乗り物を借りに行く。」

「え!乗り物があるんですか!」

「普通は乗るのにかなり練習が必要だが。」

飛行機?車?てことはないよな。魔法のじゅうたんとか。

いやいや。


やがて小さい山小屋が見えてきた。

リクスはドアをたたいて呼びかける。

「師匠。在宅ですか。」

「開いてるよ。」

中から声が聞こえた。

「ファーツェに行くのに、キノウを貸してください。」

「いいよ。」

中からひょいと顔をのぞかせたのは、小学生ぐらいの子供だった。

えええ?この子が師匠?


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