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異世界からの帰り方   作者: たかなしことり
五日目
15/26

突っ込みが止まらない


 翌日。

 町の門が開くと、リクスと一緒にさっそくまだ開店準備中の店を見て回る。いくらか食料を買い足した後、リクスは俺に金は持っているかと聞いた。

「ええと、金貨を1枚と、銀貨を40枚ぐらい。」

 そう言うと、リクスは少し考える風だった。

「君は、もし異世界とやらに帰れなければ、どうするつもりなんだ?」


う。

痛いところを。


 歩き出しながら、俺は答える。

「なんか、仕事を探そうとは思います。」

「ここの言葉を話せないのに?」

「それは・・・たぶん暮らしていれば、覚えられるかと。」

「のんきだな。覚える前に、今持っている金はなくなる。」

リクスの突っ込みが止まらない。


 俺は必死で、今まで読んだことのあるファンタジー小説とかを思い出す。

「えーと、ほら森の害獣を倒して、肉とか毛皮とかを売ったりして。」

「その小さい短剣で?」

「冒険者ギルドに登録して、なんかパーティ組んだり。」

「意味が分からない。危険を冒す組合?自警団か?彼らはよそ者は仲間に入れない。」

「ええと、依頼を受けて、危険な仕事を引き受けて、お金をもらう、て感じで。」

「賞金稼ぎの事か?」

リクスは嫌そうな表情を浮かべた。

「彼らがやる仕事は基本的には殺人だが、君はその仲間に入りたいのか?」


 殺人。

 俺はぶるぶる首を振った。


 金物屋があったので、そこでリクスが持っていたのと同じような、ランタンと大きめのカップと火打石を買う。別の店で袋物を買って、背負った。


「薬草を取ってきたり、みたいな簡単な仕事はないんですか。」

「薬草は、薬草屋が栽培している。勝手に取ったら犯罪だ。」

「誰も取れないところにある、希少な薬草とかは?」

「・・誰も取れないところにある希少な薬草があったとして、その薬効を、誰がどう確認しているんだ?誰もそれを栽培しようとは思わないのか?」

突っ込み鋭くて、反論できない。

俺のファンタジー小説の知識は、あっという間に底をついた。

だって、たいていのヤツはもう転生したら勇者とか、聖女とか、大魔法使いとか、なにかしらポジションがある話ばっかりなんだ。一般人は?一般人はどうしたらいいんだ。


歩いていると、店のおじさんに声をかけられる。

「エイエデーウ」

やっぱり全然分からない。

「あのー、あれって何て言ってるんですか?」

「『いらっしゃいませ』」

きりっとしたイケメンからそんな言葉が出てくると、ちょっと笑える。

しかし、希望が出てきた。こんな風に言葉を教えてもらえれば、意思疎通を図れる。

「武器は短剣だけか。」

「慣れない大物はやめておけと言われたので。」

「なるほど。」

リクスは食料を買い足すと、「行くぞ」と俺を促した。


「長剣を扱ったことはないのか?」

「はあ。まあ。」

中学校の体育の授業で、剣道を少しやったことなんて、経験のうちには入らないだろう。

「短剣だけで相手に勝つには、相当素早くなくてはならない。普通に正面から立ち合っても勝てない。」

「はい・・」

「習練して長剣を持て。」

えええ。


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