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異世界からの帰り方   作者: たかなしことり
四日目
11/26

勇者っぽい人に会う

 天気もよくて、歩くには最適だった。よかった。

 おじさんたちが歩くずっと後を、ついていくような形で歩きながらいろいろ考える。


 また新しい世界に飛ばされたんだろうか。

 それとも戻ってきた?

 戻ってきたんなら万々歳だ。毛布を借りパクしてしまうことになるが、まあそれは申し訳ないけどどうしようもない。

 問題なのは、また違う異世界だった場合。そこから元の世界戻る場合、さっきの異世界を経由しないと戻れないとか、そんなムリゲーないよな?


 お金はある。マーシェが渡してくれた物の中に金貨っぽいのもまざっていたから、最悪食事ができるぐらいはあると思いたい。

 

 言葉はどうだろう。多分駄目だろうな。

 そもそも同じ世界の英語や韓国語だって無理なのに、異世界で言葉が通じるわけがない。


 なんか異世界ものの幻想を打ち砕かれていくなぁ。


 とにかく全く言葉が通じないのはきつい。どこか教えてくれるところはないのか。英語教室みたいに。


 考え事をしながら歩いていたら、いつの間にかおじさん達にめっちゃ追い付いていた。

 振り向いて、俺を待っていたみたいな感じだ。


 「スエイコタメ?」

 はい、やっぱり駄目でした。全然分からない。

 反射的にうなずくと、おじさん達は笑いながら手招きした。

 あ、いい人っぽい。

 おじさんたちの服は、マーシェが着ているものに似ていた。

 「あのー、あの町はなんという町ですか?」

 おじさん達はきょとんとし、それから顔を見合わせて、わはははと笑った。

 「セトズィウアイアンズ。」

いやもう、ほんとにわかんない。

他にも話しかけられたが、愛想笑いでやりすごす。


 おじさん達と三人並んで町に入ると、おじさん達は町の大通りを進んでいく。旅館っぽいところを指さした。手振で「ここに泊まる」的な仕草をする。

 なるほど。

 そして俺が持っていた毛布を指さした。

 なんだろう。売れっていうのかな。

 それとも毛布があるから野宿も出来るって事なのかな。


 いやいや俺も泊まります。お金もあります。

 そう説明しようと、身振り手振りを開始したところで、おじさん達の後ろから、やくざっぽいごろつきっぽいめっちゃこわもてのおじさんが、ぬっと現れた。


 え、なんですか。

 ぎょっとしていると、襟首をつかまれた。ぐぇぇ。

 だみ声で何か言われるが、全く分からない。まったく分からないが、なんかヤバい。


 「いや、俺、俺、何の関係もないってか、金もないし、いや話聞いて!」

 言葉が通じないなりに、なんとか説明しようとする。

 最初のおじさん達を振り向く。おじさん達はへらへら笑っていたが、その顔がこわばるのを見た。

 一瞬だった。

 その視線の先を振り向くより早く、片方のおじさんの胸に剣が突き立つのを見た。


 え?


 もう一人のおじさんが、喚き始める。その首から血が吹き出すのを、まるでスローモーションのように見た。

 ああ、スゲエ。血ってあんなに飛ぶんだ。


 横向きに飛び散ったから、俺の方には飛んでこなかったが、その代わり地面から木の柵まで血まみれになる。

 振り向くと、頭からフードをかぶった人物が、突き立てた剣を引き抜くところだった。


 あ、殺される。

 こんなところで。

 一瞬頭が真っ白になった。


 いやいや、やられてたまるか。相手から目を離さないようにして、ナイフを探る。

 後退る。逃げられるか。

 左に飛んだら逃げられそう。そう思った瞬間、そいつがぐっと距離を詰めた。

 ヤバい。速い。

 剣先が目の前にある。

 頭の中にぶわーっと幼稚園の頃からついこの間の事までが、一瞬で流れ去る。あ、これ走馬灯だ。


 やっぱダメなんだ。

 これは死ぬ流れだ。


 そう思って、涙目で剣先を見ていると


 「落ち着け。」


 え?

 今なんか言いました?


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