表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

6才(2)

評価とブックマーク、ありがとう!

絵本大賞の一件から一週間が経った。

彩人は日本初の男性プロ野球選手「嵐廻」の動向を気にしつつ日々を過ごす。


「じゃあ、ママ、いってきまーす」


「うわぁぁあん、彩人ぉおおお、行かないでぇええええ」


瀬尾家の日常に少し変化が起きていた。

彩人の母親の美月が絵本大賞に入賞したことで仕事量が増えたのだ。

元々売れっ子の絵本作家だったが、挿し絵の依頼や、カレンダーや画集の打診もあったようだ。

つまり、彩人のトレーニングに構っている暇がなくなった。


美月は玄関で彩人を行かせまいと抱きつく。


「ママ、離してほしいな」


「……キスしてくれたら離す」


「いつも言うけど、彩花が真似するって――」


「いやいや、キスしてくれるまで、ぜーったい離さないっ!」


(これが前世の母親だったら秒でど突いていたけど、母さんは若々しいというか、駄々っ子ぶりが似合うというか。キスの位置も遠慮なくなってるんだよな〜。神様!これは親孝行なんです!信じてください!)


彩人は内心で言い訳しながら、美月の唇の端に口づけする。

美月は一転して笑顔になると同じように彩人に口づけを返す。

そして立ち上がり、彼女の代わりの同行者に目を向ける。

それは美月の担当編集者である輪島紗子だった。


「輪島さん、手間かけるけど、よろしく頼むわね。彩人、彩花、行ってらっしゃい!」


彩人が玄関を出ると、輪島の胡乱げな視線に気づく。


「なに?」


「いえ、その年から女装趣味とマザコンでは将来苦労――しませんね。男性はよほどあれな特殊性壁でないなら社会に受け入れられますから。彩人様、私の早とちりでしたね、申し訳ありません」


「ボクをヘンタイみたいに言うな!」


彩人は輪島の「違うのですか?」という目から逃れるように、彩花の手を引き歩き出す。輪島もそれについて行く。


彩人は気分を落ち着けるためステータスのウィンドウを開く。

自分の成長を感じられるそれは彩人の精神安定剤だった。

今、表示させているのは、最近知ったログ機能。

5才の誕生日からのトレーニングの結果が記録されている。

彩人はその中から昨日のものを選択する。


+++


!今日のトレーニング!終了!


成果

○筋トレ(腹筋)

○筋トレ(腕立て)

○ランニング

○素振り

○キャッチボール

○ダンス?


評価:大成功(3pt)


特殊イベント

・会坂雛里とダンス練習(1pt)


獲得ポイント:4pt


+++


「ふへへ……」


彩人は思わず不審な笑みが漏れるくらい嬉しかった。

なぜなら、初めて評価が「大成功」だったから。

5段階評価の一番上である。

現時点ではこれ以上の成果は上がらないだろう。

この一年半で、「スクワット」や「ヨガ」や「逆立ち」なども試したが、筋トレの項目に追加されなかった。

他にも思いついては色々やってみたが、同様である。

これはそういう仕様なのだと彩人は納得するしかなかった。

その上、現状維持に甘んじることはできない。

彩人が成長するに従い、「○」を取るには腕立ての回数が増え、ランニングの距離が伸びていくのだ。

ゆえに今のこれは仮初の達成感でしかない。

それでも彩人は甲子園優勝とプロ野球選手になるという夢が近づいたかのように夢想してしまうのだ。


「――彩人様」


彩人は輪島に手を引っ張られたことで正気に戻る。

横を見ると、輪島が呆れ顔だった。


「危ないですよ?前をちゃんと見ないと」


「あ、はい」


「美月先生の言う通りですね。彩人様は時おり、気持ち悪い顔でトリップする癖があると」


「え!?気持ち悪い顔!?」


「ああ、美月先生は可愛い顔と言っていましたよ。ですが、今見た感じではニヤニヤ、ニタニタと犯罪者チックでした。男性ではなく、女性があの顔をやると一発で警察に職質されるでしょう」


「嘘だよね?」


(だってスキル【甘いマスク】があるもの!あれさえあれば、中身おっさんでも爽やかイケメンになれるって聞いたぞ!だよな、まいえんじぇる彩花!)


「にぃちゃ、ニヤニヤしてた〜」


「ぐはっ」


彩花の純真な言葉が彩人の心にクリティカルヒットした。

項垂れる彩人に対して、輪島が優しい笑みを向ける。


「大丈夫です、彩人様。私はそんな彩人様を見捨てたりはしません」


「輪島さん……っ」


「あ、お礼ですか?お礼なら、また女装してくれればいいですよ」


「ヘンタイは輪島さん、あなたです!」


とりあえず、彩人は人前でステータスを出現させないと誓った。

数日後には懲りずににやついている姿が目撃されるが。

この世界は男に優しい世界なので大した問題にはならないだろう。


そんなやり取りをしている間に、公園にたどり着く。

入口では会坂雛里が待っていた。

雛里はこちらに気づき、笑顔満点で駆けてくる。

栗色のサイドテールを跳ねさせながら。


「アート、ヤッホー☆」


だが、雛里の足が途中で止まった。

雛里は笑みを貼りつけたまま、視線だけをゆっくり動かす。

彩人と輪島、そして二人の繋いだ手に。


「むぅ」


笑みを崩し、ぷっくり頬を膨らませる。

彩人の性別を誤認したままの彼女は小さな嫉妬を露わにした。

メモは作者の覚え書きだから読み飛ばし推奨(^^)/


(メモ)


「今日のトレーニング」について(暫定)


以下の項目が成果となる

・基本トレーニング

・特殊トレーニング


基本トレーニング

・筋トレ(腹筋)

・筋トレ(腕立て)

・ランニング

・素振り

・キャッチボール

※ 各トレーニングは発展形あり

例)素振り → トスバッティング


特殊トレーニング

・○○○?

例)馬?、ダンス?

※ 特殊イベントと関係する可能性が……


トレーニングの正否

・方法と回数(距離、時間)で決まる。

※方法とは?

例)ランニング

フォーム、呼吸、リズム……

・方法と回数の正しさは神の叡智で判断(ご都合主義)

○(☆):両方が正しい

△ :方法と回数の片方が正しい

✖︎ :どちらも正しくない

※「☆」は発展形のトレーニング時の表示


評価の判定

※ 基本トレーニングの正否のみがカウントされる

大成功:○(☆)が5個以上

成功: ○(☆)が4〜3個

普通: ○(☆)が2〜1個

失敗: ○(☆)が0個 かつ △が1個以上

大失敗:全て✖︎


獲得ポイント

大成功:3pt +α

成功: 2pt +α

普通: 1pt +α

失敗: 0.5pt

大失敗:0pt

※ +α = (☆の数)X1pt


例)

+++


!今日のトレーニング!終了!

成果

△筋トレ(腹筋)

○筋トレ(腕立て)

△ランニング

☆トスバッティング

✖︎キャッチボール

○馬?

○ダンス?


評価:普通(2pt)


+++

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] めちゃくちゃ好きです!これからも楽しみに待ってます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ