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上空から追いかけてくるヘリコプターを車が振り切るには、一体どうすればよいだろうか。答えは簡単だ。ヘリが追ってこれないような場所を走ればいいだけの話である。
発信器によって場所が特定されている状態で逃げるのならば、一体どうすればよいだろうか。答えは簡単だ。発信器の出す電波を受信されないように、こちらからも妨害電波を出せばいいだけの話である。
コウキ達は、五十年ほど前まで都心の中心部を網目のように走っていたとされる、地下鉄道の路線を頼りに、政府直轄研究施設の近くにまでたどり着いていた。たとえ機動性の高いヘリだとしても、地下を走るトンネルのような狭いところでは、上手く飛ぶことはできない。さらに、ナミに埋め込まれた発信器と波長を同調させた通信機を暴走させることで、電波を相殺させ、コウキ達は一時的とはいえ、完全に追跡の目を欺いていたのだった。
「マスター、もうすぐ研究施設の真下に到着します」
「了解」
うなずいて、アクセルから足を離し、エンジンブレーキを利かせながら、スピードを少しずつ落としていく。
「あと五十メートル、四十、三十、二十、十、……」
カウントとともにブレーキペダルを徐々に踏んでゆき、コニカのゼロの合図とともに、ぴたりと停車させた。このあたりのコンビネーション、お互いの呼吸を知っているからこそ、できる芸当であるのだろう。
「この真上の施設を、とりあえずぶち壊せばいいんだな?」
ちらりと上を見て、コウキが不敵な笑みを浮かべる。
「では、作戦通りに?」
「ああ、俺は単独で行動し、研究施設の主要部分を破壊する。必要とあらば、責任者も消す。その間、コニカはナミを連れて、おとりになってくれ。危険だが、やってくれるな?」
「マスターのご命令通りに」
いくぶん芝居がかった態度で、コニカはコウキに頭を下げる。今までコニカがこのような言い方をするのは、聞いたことがない。ルミナの死を経て、一段と人間に近づいてきているらしい。
だが、こんな雰囲気の中で皮肉っぽく言い返せるガイノイドというのも、悪くはない。コウキはにやり笑いをますます大きくして、そして言った。
「さあ、おっぱじめるか」