アリスの危機に*2*
お久しぶりです……(小声)
リゲル視点。エリザベス嬢も社交界デビューです。
今日は、エリザベス・クレアモント伯爵令嬢の社交界デビューの日。
俺は大奥さまから、エリザベス嬢を王城まで送り届ける護衛役を頼まれていた。
もちろん本職ではない俺の他に、護衛役はあと二人いる。
車上のエリザベス嬢の隣には、クレアモント伯爵家の遠縁だという、気弱そうな青年が座っていた。
しかし残念ながらエリザベス嬢は、今日のエスコート役だという彼に、まったく興味がないらしい。チラチラと、彼女の様子をうかがっている青年が気の毒だった。
「リゲル。貴方と踊れないなら、早く終わらせて帰りたいわ。なのに、まだお城にも着かないじゃない」
一方で、エリザベス嬢は馬で並走している俺に、しょっちゅう話しかけてくる。
王城までの夜の道は、たしかに貴族の馬車で混んでいた。
エリザベス嬢の心情を理解できない訳でもなかったが、俺は「わがままなお嬢さま」を窘める。
「今日は貴族令嬢にとって、大切な日だと聞いています。俺が護衛役として貴女の側にいることで、そういう不真面目な気持ちになられるのは困ります」
聞いた話によれば、今日は貴族令嬢にとっての成人の儀式という意味合いだけではなく、結婚相手を見つける絶好の機会でもあるそうだ。
隣にいる青年を、エリザベス嬢さえ気に入れば、そのままトントン拍子に話は進むのであろうが、何せ彼女はこの調子だ。
舞踏会の会場で、お互いに新たな出会いを探す方が得策かもしれない。
「もしかして、面倒な役割を押し付けられたとでも思っているの?」
否定もできずに沈黙した。
エリザベス嬢は困ったような顔をする。
「でも今後のために、貴方にも舞踏会の雰囲気を味わってほしいのよ。広間には入れないけれど、今の貴方でも王城内には入れるわ」
「今後のため?」
「ふふ。そのうち、わかるわよ」
一転、エリザベス嬢は意味ありげに微笑んだ。
俺は少し考える。
恩ある大奥さまに頼まれたから、俺は護衛役を引き受けた。
しかし、若い貴族令嬢たちが一堂に会する場に近づける機会なんて、今後訪れることはないだろう。
ウォード家にあの男がいる以上、貴族令嬢となったアリスに会える可能性に少しでも賭けられるのならば――。
「そうですね。たしかに今後のためです」
あくまでも俺の今後のため。
だから今は我慢しよう。
「まぁ、わかってくれたのね!」
俺は坂の上にある、王城を見つめた。
続き、頑張って書きますね(* > <)⁾⁾




