ラウルの誤算
人混みに紛れたラウルさんは、顔見知りらしきご令嬢から、すぐに声を掛けられていた。
隙のない笑顔で、ご令嬢の指先にキスを落とすと、細い腰を引き寄せ、手を添えて踊り始める。
会話もしているようだった。
もちろん、わたしには聞こえない……。
シャンデリアの下で、ひとりぼっちにされたわたしは、耳に手を持っていき、リゲルのピアスがないことにハッとする。
代わりに揺れているのは、涙の形をしたダイヤモンド。ラウルさんからの贈り物。
わたしは胸に手を添える。
そこには、ベルをこっそりとひそませていた。
どうかどうか。
今日という一日が。
(無事に終わりますように――)
* * *
「素敵なレディ、僕と踊りませんか?」
『壁際に控えて、極力目立たないようにしろ』
(壁の花になるのも難しいわ)
『適当な理由をつけて断れば良い』
(適当な理由って、どんな理由?)
ラウルさんのアドバイスは、あまり役には立たなかった。
名前を聞かれて、わたしが誘拐された過去をもつ男爵令嬢だとわかると、誠実そうな男に限って、「あ、しまった……」みたいな顔になる。
相対的にわたしまで、「ごめんなさい」の気持ちにさせられる。
(ちょっとだけ、傷つくかも)
ラウルさんが横にいないと、わたしが曰く付きのアリス・ウォードだと、気づかない人も多かった。
強引な人には軽んじられ、引っ張るように手を取られた。相手のペースで踊らされ、今夜だけで少しずつ降り積もってしまった心の傷が、しくしくと静かに泣き出した。
わたしは誰も伴わず、飲み物と軽食が用意されているという別室へ。
(なんであそこだけ、あんなに女の人が……)
不思議に思って見てみると、色とりどりのドレスに囲まれていたのは、赤銅色の緩やかな髪をした貴公子だった。
そのうちの女の人の一人が私を見て、貴公子に何事かを耳打ちする。貴公子がわたしを一瞥した。
(何かイヤな感じ……)
お近付きになるつもりもないのに、女性陣からは牽制され、貴公子には値踏みされたみたいでモヤモヤした。
わたしは彼らに背を向けて、テーブルに並んでいる硝子の器へと手を伸ばす。
中には瑞々しい果実。
果実は甘酸っぱくて少し苦い。
どこかで知っているような味。
(美味しい……)
頭がすっきりしたわたしは、纏わりつく視線の糸を断ち切って、外へ出た。
日常話を再開しました✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。
* * *
忙しいので、食材の宅配をお願いしています。
その中でも、よくきのこセットを頼みます。
きのこって、ヘルシーで美味しいよね♪
ある日。
ふと、生産者欄を見てみたら、生産者欄に個人名やJAが並ぶ中。
なめこだけ。
個人名でもJAでもなく、「原生林」。
生産者 原生林Σ(◉ω◉;)?!
あ、天然物ってことね。
びっくりした(笑)
(なので、形も不揃い)
生産者 原生林。
って、なんだか可愛いですよね。
ちょっとほっこりしちゃいました( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )