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既成事実の完成

「わたしのこと、どう思っているんですか……?」


 ラウルさんは目を丸くして驚いていた。

 口を少しだけ開けたまま、何も言葉を発しない。


 わたしが不安に陥っていると、


「くくく、ははは!」

 

 突然、ラウルさんが大きな声で笑い出した。


「俺が君を好きだと言ったら、どうせ困った顔をして、曖昧な返事をするんだろう? それがわかっているから、逃げ道がなくなるまで、まだ言わない」


 そして、温かくも冷たくも聴こえる不思議な声で、ラウルさんはいともあっさりと話題を変えた。


「さぁ。冷める前に紅茶をいただこうか」


 いつもよりメイドさんが来るのが遅いと、このときようやくわたしは気がついた。


 廊下を覗くため、部屋の入り口へと足を向ける。


(あれ……)


 二人きりのときは、いつも開けっ放しの扉の先。


 廊下の壁際には、紅茶とお菓子を乗せたワゴンが、寄り添うように残されていた。


(メイドさんも、誰もいない――)


 いつの間にか、後ろにラウルさんが立っていた。


「俺たちの邪魔しないように、メイドが気を遣ってくれたんだよ」


「邪魔? わたしたちに、気を遣って?」


 最初は意味がわからなかった。


 ラウルさんは肩を(すく)める。


「君は取り乱していたからね。とりあえず置くものだけ置いて、すぐに下がってもらったんだ」


「え……」


 メイドさんが、来てくれたであろうとき。


 わたしたちは――。


 あのとき一つになっていた影が、今のわたしの思考を暗くした。


「どうでも良いようなことを気にしてる? さっき君は、俺に過去を捨てると誓ったね。もう忘れた?」


 ラウルさんはわたしの肩に手を乗せた。


「それとも、まさか嘘をついたのかい?」


「!」


 返事の代わりに首をぷるぷると横に振る。

 するとラウルさんは軽やかに笑ってみせた。


「なら、良かった。女の嘘には騙されてやることにしているが、大事なときに嘘をつく女は許せないんだ」


 ラウルさんの視線がわたしを射抜く。


「悪い女には、己が犯した罪の深さを、その身に刻み付けてわからせてやるしかない」


(罪の深さを身体に刻んで、わからせる――)


「つまり、殺しちゃうんですか……?」


「…………。違う」


 そうしてラウルさんは、わたしを小さなテーブルまで誘導すると、押し付けるようにして座らせた。


 ラウルさんは鼻歌交じりに、ティーカップに紅茶を注ぐ。戻らない、砂時計のような赤い帯。


 鮮やかな今の映像が、人の記憶に残ってゆく。

遅すぎる更新ですが、作者(くみん)は元気です。

恒例のおまけ話を、お一つどうぞ(*・ω・)つ◇


୨୧┈┈┈୨୧┈┈┈୨୧


春は桜に桃の花。新緑の季節に眩しい太陽。

春や夏はお洋服も華やかになりますよね。


お洋服屋さんでの一コマです。


【タイトル】令和に生きる(しのび)


店員さん「何かお探しですか? (ニコニコ)」


くみん「あの、ちょっと羽織れるようなものを……」


店員さん「そうなんですね(パアッ!)」


くみんの手には、無難なネイビーや白のカーディガン。


店員さん「この色なんかも、これからの季節、明るくて可愛い印象になりますよ(ドヤァ)」


店員さんの手には、鮮やかな緑や青の、ビタミンカラーのカーディガン。


くみん「いえっ。誰の記憶にも残りたくないので、地味で大丈夫です(どキッパリ)」


店員&くみん「「…………」」



今さらですが、もっといい断り方があったような気がします( = =)



【注意】

くみんは一度買ったものを、伸びたり破れたりするまで、ひたすら着回すサステナブルなスタイルで生きています。飽きるってことは、まずありません。


貧乏じゃないです、エコなんです!

着回しできないと困るんです!(キリッ)


でも接客してもらえるのはうれしいよね( *ˊᵕˋ)✧*。

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