尋問と疑問
あまりに距離が近くて、抱きしめる力が強くて。
まるで鳥籠の中の、鳥にでもなった気分だった。
「誰からもらった?」
「幼なじみから、もらいました……」
「男?」
「はい……」
「恋人?」
「それは……」
質問に口ごもると、ラウルさんの纏う空気が不穏に割れた。だからわたしは焦ってしまう。
「いえ、違います。何もありませんでした。彼はマリリン……孤児院の、わたしの妹が好きで――」
余計なことを言ったかもしれない。
ラウルさんが、腕の中にいるわたしの顎を持ち上げた。
視線を、絡み取られる。
「アリスは?」
「わたし……、ですか?」
「そうだ。幼なじみだという男のことを、アリスはどう思っていたかを聞いている」
「わたしは……」
「好きだった?」
本能が震え上がり、思考が散らばってまとまらなかった。視線まで奪いにくるラウルさんが、まとめさせてなんてくれなかった。
「好き、でした……」
「だが、今頃彼は君の妹のマリリンと、結ばれているかもしれないね」
「それはありません!」
わたしはとっさに否定した。
「妹は彼以外の相手と、結婚してしまったんです。だから……。だから、彼の想いは、もう一生叶わないはずで……」
ラウルさんの腕に力がこもる。
そして血を吐くように、わたしを叱った。
「アリス、それ以上は言うな。言わなくて良い」
ラウルさんの力があまりにも強くて、わたしは彼の一部にされてしまう幻覚を見た。
「かわいそうに。いつまでも過去の恋に縛られて……」
(わたし、かわいそう……?)
「こんなことは、今日を限りに終わりにしよう」
自分でも、とうの昔にわかっていた。
けれど、人から言われれば、重さが変わる。
現実が鈍くのしかかった。
感情を飛び越えて、聞き分けの悪い理性へと、直接訴えかけてくるように。
涙がラウルさんの服に吸い込まれて、それでも滲みそうになる世界には、もはやラウルさん一人しか、残されていなくて――。
腕の束縛が緩むと、わたしは同情のこもった濃茶色の瞳に救いを求めた。
「忘れるように、努力します……」
ラウルさんはわたしの背中を優しくさする。
温かい大きな手が、「頑張ったね」「頑張ろうな」と言ってくれているようだった。
「しばらくは辛いかもしれないが、人は忘れる力を持っている。だからアリス、前を向いて、未来だけを見て進んで行こう。俺がずっとそばにいるから」
「はい……」
ふと、以前わたしの中で打ち消した疑問が甦った。
まだ涙に曇る視界では、ラウルさんのことがわからない。
「ラウルさんは――」
「俺が、何?」
「わたしのこと、どう思っているんですか……?」
ラウルさんはわたしの素朴な質問に、目を丸くして驚いていた。
アリスは片想いにしがみついている自分のことを、客観的に悲しい気持ちで見ていました。
早く過去のものにしなきゃいけないと、諦めなきゃいけないと。孤児院にいたときから、ずーっとずーっと思っていて。
それを今回、はっきりと指摘されたうえ、心の支えのピアスを失くしたことで、一気に崩れてしまいました。
――と、まぁ良い具合にアリスが丸め込まれたところで、本日も作者のくだらない日常で、ほんわかしていただきましょうかっ(๑òㅂó)و✧
* * *
いちごのおいしい季節ですね。
母がいちご大福を買ってきてくれました。
母「いちご大福、買ってきたよー」
よそ事をやっていたくみん「中身って、いちごとあんこ?」
母「へ? いちごとにゃんこ?」
くみん「にゃんこっ?!」
↑いちごと生クリームの大福とかあるし、特に深い意味もなく聞いてみたら、こんなことに(꒪꒳꒪;)
* * *
なんか本当に、もう……。
くだらなさすぎて、ごめんなさい……。




