サンドイッチ絶許教徒の方々に送る。要は和訳なんだよ、和訳。
気ままに出没せし、しがないなろう作家(失笑)であります。
本日の議題は、「異世界サンドイッチ絶許教」に対する私めの想いに御座います。
まぁ、そんなもん聞いた事ねーよ、という方もおられましょう。
ええ、当然です。たった今、私が適当に名付けたのですから。
名前から内容に想い至らない方の為に軽く説明しておきますと。
地球文明における「サンドイッチ」という料理は、それを開発したとされるかつてのお貴族様の名前から名付けられたそうな。
だから、異世界に同じような料理があるのはともかくとして、同じく「サンドイッチ」という名前が付けられているのはおかしいだろふざけんな、という過激派教団の事です。
類似品はたくさんありますね、サンドイッチに限らず。
まぁ、言わんとする事は分かりますけども。
1個くらいなら偶然の一致はあるかもしれませんが、何でもかんでも同じというのはどう考えても有り得ないだろ、という主張は確かにその通りと頷かざるを得ないのですが。
しかし、筆者はそんな事を気にした事はない。
だって、めんどくさいもの。
書くにしても、読むにしても。
例を交えて解説しよう。
【例文1】
「サンドイッチセット、お待たせしましたー」
うむ、異世界といえど同じような料理が出ると安心できるものだな。とても美味しそうだ。
という、文章。
教団の者たちは、この時点で違和感を感じるらしい。
異世界なのに何でサンドイッチなんて名称が付いてんだ、と。
チッ、仕方ねぇな。
適当な名前付けりゃ良いんだろ?
はいはい。
【例文2】
「ンガッググセット、お待たせしましたー」
うむ、異世界といえど同じような料理が出ると安心できるものだな。とても美味しそうだ。
これで満足か?
しかし、これでは何の事かサッパリ分からない。
何だよ、「ンガッググ」って。
今しがた適当に思い付いた音の羅列だが、異世界からしたら何らかの意味や歴史のある名前なのだろう。
だが、それを知らない身としては、中身がまるで分からない。
まさか、これがサンドイッチなどとは、夢にも思わないだろう。
いや、分かるぞって奴はすげぇな。ちょっと超能力研究所にでも行ってみてくれ。あんのか知らんけど。
だから、そうなると詳しい説明を入れなくてはならなくなる。
【例文3】
「ンガッググセット、お待たせしましたー」
差し出された皿には、肉や野菜をパンで挟んだ料理が盛り付けられていた。要はサンドイッチである。
うむ、異世界といえど同じような料理が出ると安心できるものだな。とても美味しそうだ。
成る程。これなら、まぁ、想像できるな。
しかし、これはこれで問題がある。
確かに、この場ではこれで良いだろう。
出てきた代物が「サンドイッチ」だと分かる。
だが、ここで説明してしまった事で、登場人物は、「ンガッググ」=「サンドイッチ」だと体感して理解してしまったのだ。
そうなると、次回に出てきた時に説明を入れるのは違和感を覚えてしまう。
【例文4】
今日も今日とてンガッググを食べる。どうも男料理だと簡単なものになりがちでいかんな。何とかしなくては。
これさ、何度も何度も間を置かずに登場しているなら良いんだけどさ。
章とか挟んですっっっごい時間を置いて唐突に出されたとしてさ。
分かる?
多分、高確率で筆者は分からない。
ほとんど登場しない脇役の名前さえ忘れるんだもの。
一回出てきただけの馴染みの無い語感の料理名なんて、絶対に忘れてるわ。
だが、これらは最初から「サンドイッチ」という名前を出していれば問題なく解決する。
面倒な説明を入れずに済むし、再登場した時に忘れている、なんて事もない。
◆◆◆◆◆
さぁ、更に掘り下げていくぞ。
ここまでは序章だ。本番はここからである。
今までの例文は、異世界転移/転生者であった。
だから、心の内や地の文で「サンドイッチ」という名詞を使うという事も出来た訳だが。
では、これが現地人だった場合はどうなるだろうか。
【例文5】
「ンガッググセット、お待たせしましたー」
やはり食べなれたものが安牌だな。
とても美味しそうだ。
まず、我々が当たり前のように「サンドイッチ」を知っているように、異世界においても「ンガッググ」が一般的であった場合。
説明をねじ込めないという事態が発生してしまう。
一般的な料理なのに、わざわざどんな料理なのかを語る訳もないだろう。
それを解決するために、何らかの理由で「ンガッググ」を知らない事にしてしみよう。
もしかしたら、「ンガッググ」が開発されたばかりの新しい料理なのかもしれないね。
【例文6】
「ンガッググセット、お待たせしましたー」
聞き慣れない料理だったので、物は試しと頼んでみたが、何の事はない。
肉や野菜をパンで挟んだだけのものだ。この発想は新しいな。シンプルだが、今までに考えた事もなかった。
見た目には美味しそうだが、味の方はどうだろう。
うむ。
一読する限りは問題はなさそうだが、しかし大問題が混じっている。
まず、この描写では、出てきたものの詳細が分からない。
パンでおかずを挟むものと言えば、「サンドイッチ」以外にもあるだろう。
そう、「バーガー」である。広義では同じかもしれないが、しかし少なくとも筆者の中ではこれは似て非なる代物だ。
この辺りをはっきりさせる為には、更なる詳しい描写を書かなくてはならなくなる。
そして、もっと根本的な問題として、地球名詞「サンドイッチ」が駄目なら、地球名詞「肉」も「野菜」も「パン」も駄目だろうという話だ。
「サンドイッチ」ほど経緯がはっきりしていなかったり有名ではないというだけで、あらゆる名詞には名付けた人物と理由がある筈である。
今まさに私が「ンガッググ」と名付けたように、適当に語感で言ったのかもしれないが、それはそれでセンスが問われる事だろう。
まさか、それを言い出した地球と異世界の誰かが、同一のセンスを持っていたとは有り得ないだろ?
「サンドイッチ」のように。
【例文7】
「ンガッググセット、お待たせしましたー」
聞き慣れない料理だったので、物は試しと頼んでみたが、何の事はない。
グバラゲやモヘモヘをウヒハーで挟んだだけのものだ。この発想は新しいな。シンプルだが、今までに考えた事もなかった。
見た目には美味しそうだが、味の方はどうだろう。
もはや、何を言っているのかサッパリである。
宇宙人と交信しているのかを疑う有り様だ。まぁ、異世界人だから似たようなものだが。
こうなると、今度は「グバラゲ」=「肉」、「モヘモヘ」=「野菜」、「ウヒハー」=「パン」である事を説明せねばならなくなる。
ただそれだけではなく、地球の名詞を使わずに、だ。
難易度、バク上がりじゃない?
ぶっちゃけ、筆者にはできそうにないわ。
おそらく、何処かで妥協しなければ意味分からない怪文書にしかならないだろう。
そんなもの、書く側は無駄に労力を重ねてしまうし、読む側も面倒だろう。
手っ取り早く解決するには、「サンドイッチ」を解禁してしまうのが一番だ。
でもでも、変なもんは変だし。
と言う方。
まぁ、主張は分からんでもない訳だが。
そんな時の言い訳をここで出そう。
和訳だと思えば良いんだよ。
だって、異世界の物語だよ? リアリティで言うなら、異世界語で語られてないとあかんでしょ。
まさか、日本語が共通語だとは思っちゃいねぇよな?
それこそ、違和感バリバリだよ。
異世界語で書かれてしかるべき物語を、わざわざ日本語に直しているのだ。
だったら、異世界固有の名詞を日本人にとって馴染みのある名詞に変える事もあるだろう。
そう考えると、何の違和感も無く読めるのではないだろうか。
なんて事を、なんとなく考えてみた。
実際に効果があるかは知らんけど。
無責任ですまんが、筆者は気にした事がないもんでな。
すまぬ。
以上、自分を誤魔化す言い訳講座でした。