表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/71

63

 エステローヒからランスベルヒのギルドに戻ると、なんだか妙な騒がしさがあった。

 ランスベルヒの冒険者ギルドにはいつも人がいて、賑やかではあったのだが、そう言った騒がしさではない。不穏な空気も漂っている。

 人だかりが出来ていて、何も見えない。気になるものの、野次馬に強引に混ざる勇気はなかった。

 とはいえ、あまりの人に、修理店までの道が塞がってしまっている。騒ぎを無視して修理店へ向かおうにも、人が邪魔でうまく通ることが出来ない。

 なるべく人に当たらないよう、人の層が薄そうなところを狙って歩く。


 ――と。


 人と人の間から見えてしまった。

 人だかりの中心に、マルシがいる。

 殴られたのか、頬を赤くしたまま、しりもちをついていた。


「――え」


 マルシの丸眼鏡が取れている。その横顔から見える瞳は、赤い。眼鏡越しに見えた目は、黒かったのに。

 そして、その横顔に、ぎゅう、とわたしの胸は痛くなり、息が上がる。体から血が抜けていくような、感覚。


「はっ……はっ……」


 小箱に入っていた、ブローチを見てしまった時と、同じ感覚。

 修理店を始める少し前。武器で指先を切って、マルシに手当してもらったとき、彼の顔に、既視感を感じた。

 ばち、ばち、と目の前が光るような感覚に襲われる。

 頭の中で、ピースが埋まっていくような。

 そうだ、あの紫がかった赤い瞳。どこかで見たことがあるって、ずっと思っていた。夢で見た、オッドアイの男。

 彼に、似てるんだ。

 何かを思い出せそうになったが、ふっと視界が広がって、一瞬、先ほどまで何を考えていたのか分からなくなる。

 オッドアイの男。そう、誰だっけ。ここまで既視感があるというのなら、わたしはその男に、あったことがある、はず――。


「う、ウィル!?」


 もう少しで完全に思い出せそうだったわたしの思考は、開けた視界に飛び込んできた情景へ釘付けになった。

 マルシを殴った男を羽交い絞めにしているのは、まぎれもないウィルエールだった。

 マルシを殴った男も、マルシ同様、赤紫の瞳を持っている。それに、顔立ちも似ていて。

 ここまできて、彼らの正体が分からないほど、わたしは無知じゃない。


 彼らはグルトン王家の人間だ。

 エンティパイアで生まれ育ったわたしが、二人の瞳の色がさす事実を知らないわけがない。

 ウィルエールに拘束されている男は、片腕がない。にも拘わらず、彼は暴れて、ウィルエールから逃れようとしている。


「――ウィル!」


 がつん、と男の肘が、ウィルのこめかみに当たった。

 わたしは思わず、人の波をかき分けて、ウィルの元へと走りだしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ