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 合コンまがいの飲み会があって数日。

 つまりは、「恋愛はあれば」と控えめだった方のフェルイラがカゼンとくっつき、ルディネーが悔しがってから数日が経った。

 次こそは、とまた声をかけられたが、今度こそしっかりと断っておく。結婚してそのまま引退したい、と考えている女冒険者はちらほらいるようだし、わたしなんかよりそちらを誘った方がまだいいと思うのだが。


 そんなことより。

 フィオディーナ修理店に、移転の提案が転がり込んできていた。提案と言うよりは、ほぼ確定事項のようなものだったが。

 ウィルエールが、ギルド長へと、特別な術具の制作・販売許可をもぎ取ったはいいが、必要な道具や材料、素材を置いておくには、今、冒険者ギルドの空き部屋を間借りしているだけのフィオディーナ修理店では手狭なのだという。

 修理だけでなく、本格的に術具を作るとするなら、ちゃんと店を構えるべきだ、という意見がギルド職員内でも出ているらしい。


 まあ、当初の予定であった、未修理でギルドに放置されていた術具はすべて修理されてしまったわけだし、確かにちゃんと店を構えるにはいいタイミングなのかもしれない。

 先立つものがない、と思っていたが、ウィルエールが、エンティパイアから持ち込んだ素材をランスベルヒで売りさばいていて、店舗を借りる際の頭金くらいには余裕でなりそうなお金を作っていた。

 作り手がいて、売る場所を作るためのお金もあるのであれば、わたしとしては文句を言うつもりはない。もとより、生きていくために始めた店だ。こだわりは特にないのだ。

 ただし、防具屋や武器屋が並ぶ、一等の激戦区から外れた通りに店を構えることになったのだが。流石にそのあたりの店は空きがなかった。皆、良いところに店を構えたい、というのは同じらしい。


 とはいえ、ギルド内で引っ越しを方々に伝えていたので、移転してからも来てくれる、という人が多数いるようで、経営としてはそこまで困ることもないだろう。

 わたしでも作れるような簡単なものは、数を作ってギルドへ入荷することになったし。


 そんなわけで、ランスベルヒのメインストリートからやや外れた場所に、わたしたちの店となる物件に、ウィルエールと足を運んでいたのだが。


「うわ、すごい。これはすごいですわ」


「そうだねえ……ちょっと、これは……そうだねえ」


 わたしとウィルエールは二人して、衝撃を表す言葉を探していた。

 妙に安く借りられたと思っていたのだが。

 朽ちてこそはいないが、建物として生気のない、ボロボロの物件が、そこにあった。

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