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あちらこちらからにぎやかな笑い声が聞こえる道をわたしとアルベルトは歩く。
わたしはお酒は飲まなかったけれど、酒場の店内、ということで熱気に充てられていたのか、頬をなでる夜風が、少し冷たく感じる。
「大体、わたしに会いに来るのに用件が必要って、どういうことなの」
わたしがそう言うと、隣を歩くアルベルトが、「えっ」と小さく声を上げた。
まあ、確かに、仕事中にちょくちょくきて邪魔されるのは、非常に邪魔だし、腹が立つけど。先日のオルキヘイみたいな。
でも、アルベルトは邪魔するわけでもないし。わたしに会いに来るくらい、好きにしたらいいのだ。
「――友人なんだから、好きに会いにきたらいいのよ」
するり、と何の抵抗もなく、そんな言葉が口から出た。
ちょっと顔を見に来たとか、そのくらいならわたしだって邪険に扱わない。オルキヘイみたいに、そばにべったりくっついて、あれこれ質問してくるのは、またちょっと話が別だが。
そう思って言っただけなのだが。
「アルベルト……?」
ぴたり、と足を止めてしまったアルベルト。わたしもまた、歩くのをやめて、振り返った。
「……フィー。フィオディーナ」
今にも泣きそうな顔で、彼はわたしの名を呼ぶ。
「アル、ベルト……?」
今まで聞いたことないような、絞り出すような声で、彼はわたしを呼ぶ。
アルベルトは軽くうつむいていて、その表情はよく見えない。
「どうしたの、体調が悪いの?」
わたしがそう声をかけるも、アルベルトは首を横に振る。唇を震わせ、何かを呟こうとして――そのまま、押し黙った。
「……ごめん! 何でもない。急に止まったりして悪かったな。ほら、ギルドへ行こうぜ」
アルベルトは下手くそに笑い、つかつかとわたしの前を歩いた。
わたしもその後を追う。
しかし、アルベルトは、顔を見られまいとしているのか、わたしの前を歩くばかりで、彼との距離は縮まらない。
体調が急変したのだろうか。お酒が入っているようだし、考えられないわけじゃない。
もしくは、わたしが何か怒らせてしまったか。
アルベルトに声をかけようとしても、その背中から、妙な圧力を感じて、なんと声を掛けたらいいのか、分からなくなってしまう。
アルベルトが、わたしの隣を歩くときは、ずっと歩調を合わせてくれていたんだな、ということを、今になって知った。




