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今度こそ真面目にアルベルトの弁解を聞く。あれこれ言い訳がましかったが、端的に言えば、わたしに会いに来る口実として、別の武器を使っていたらしい。慣れない武器だから、あれこれ調整してほしい、と。
それを聞いたわたしの心情と言えば……。
「いや、馬鹿なんですの?」
この一言に尽きた。
「そんなんで慣れない武器を使って、怪我でもしたらどうするおつもりで? 怪我ですめばよろしいですけれど、最悪の結果となることもあるでしょう。わたしは一度討伐依頼に出向いたことがある程度で、冒険者の依頼について詳しいわけじゃないけれど、危険なんでしょう?」
これだけ島に武器屋防具屋、薬屋とそろっていて、安全です、なんて言われて信じられるわけもない。本当に安全ならそう言った店が栄えるわけがないし、そもそも冒険者なんて職業が出来ずに、一般人でどうにかしているはずだ。
「やー、これに関してはフィオディーナが正論。正しいよ。アルベルトは確かに強いけど、ちょっとランスベルヒ舐めすぎでしょ」
わたしの言葉に、フェルイラが賛同し、ルディネーとカゼンもうなずいていた。
アルベルトを擁護するものはなく、また、本人も自覚があったのか、素直に謝られた。
「というわけで、さっさと直しちゃいましょう。……今から」
「えっ、今から?」
流石のアルベルトも驚いたのか、素っ頓狂な声を上げる。
「わたしはお酒入ってないし、アルベルトもフォイネシュタインを渡すくらい、出来るでしょう?」
ちなみにアルベルトの前の剣は修理店でしっかり保管されている。今から戻って直すのは可能なのである。
「さあ、出して」
わたしが手を突き出して、フォイネシュタインを催促すると、アルベルトは素直にわたしの手のひらへと、フォイネシュタインを渡してくれた。
渡されたフォイネシュタインは、わたしが加工する必要がないくらい、彼の剣にちょうどいい大きさだった。
「…………」
しかも、しっかり磨き上げられていて、すでに誰かの手によって加工されているのは明白だった。
「ここまで出来ているんだったら、さっさと渡してくださいまし!」
「すみませんでした……」
「全くもう!」
わたしはカッカする頭で、財布の中からお金を抜き取る。わたしが頼んだ料理とジュースの代金だ。
会話ばかりでほとんど飲食できていないが。
「それじゃあ、わたしはこれで」
「あっ、フィー! ギルドまで送るぜ!」
わたしが立ち上がると、アルベルトも慌てて後をついてくる。お酒が入っているみたいだったが、足元はしっかりしているので、素直に甘えることにした。
店の入り口まで来たところで、「あっ! 体よく逃げたな、ずるい!」とマルシの声が聞こえたような気がするが、それはきっと、気のせいである。
マルシはマルシで、頑張ってくれ。




