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 いたずらがバレた子供のような顔をしているアルベルトをよそに、わたしはアルベルトが「剣を壊した」と言ってからのことを思い出していた。

 …………。

 いや、確かに「フォイネシュタインを見つけた」とアルベルト本人からは聞いていないが、エステローヒに行く前、マルシと話しているときにちらっとそんな話がでた。


 エステローヒで記憶がしっかり蘇ったり、整理されたりで、すっかり忘れてしまっていたが、確かにマルシは、アルベルトはもうフォイネシュタインを手に入れたと言っていた、と話していた。

 エステローヒから帰ってきて、アルベルトが「もう少しかかりそうだ」と言っていたのを、素直に信じ込んでいたのだが。


「……ちょっと、裏切られた気分ですわ」


 思ったより、拗ねたような声が、わたしの口からでる。

 アルベルトはびくりと肩をふるわせ、慌てて立ち上がった。


「ち、違うんだフィー! いや、フォイネシュタインを持っているのは本当なんだが、その、悪意を持って騙そうとしたわけじゃなくて!」


 わたわたと慌てながらも弁解を試みるアルベルトをじっと睨め付けると、ぐぅ、と言葉に一瞬詰まっている。

 アルベルトに悪意がないのは分かっている。マルシと同じく、こちらに来てからあれこれ世話を焼いてくれて、助かっているのは本当なのだ。

 だからこそ、わたしは冒険者やギルドのことに関しては、アルベルトは勿論、マルシの言葉はそのまま信じてしまう。


 貴族でいたときは、周りの言葉なんてあっさり信じたことは、そうなかった。お父様やカルファ王子、それからウィルエールの言葉は、比較的素直に信じられたけれど。

 ……こう考えると、わたしは親しい人間の言葉は素直に信じてしまう傾向にあるんだろうか。それってどうなんだろう。

 あれだけわたしの世話を焼いてくれたマルシが正体を隠していたわけだし、もしかしたら、アルベルトも何かわたしに隠していることがあるかもしれない。現に今回のフォイネシュタインのことも、隠していた。隠していた理由はちょっと分からないけれど。

 それなのに、何でもかんでも信じるのは危なくないだろうか。うーん、これからはアルベルトの言葉でも多少なりと疑ってかかった方がいいだろうか。


 そんなことを悶々と考えていたが、「ねえ、フィー! 聞いてるか!?」という言葉でハッと我に返る。

 どうやらアルベルトはわたしが考え込んでいる間、ずっと弁解をしていたらしい。


「ごめんあそばせ、聞いてなかったわ」


 反射でするっとそう答えてしまえば、ロルメとルディネーが吹きだした声が響いた。


「あははは、自業自得じゃーん。ウケる。アルベルトが変な小細工するから悪いんだよ」


 小細工……?

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