表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/71

44

「って、か、てかさー! フィオディーナ、今日来るの、ノリ気じゃないみたいだったのに、めちゃくちゃしっかりした格好してるじゃん! そんなかわいい服、ランスベルヒに売ってたっけ?」


 少し妙な空気になってしまったのを察したのか、素早くルディネーが話題の軌道修正を図る。

 わたしも慌ててそれに乗っかった。


「ええと……これは、昔から持ってた服で。普段、着る機会がないから」


 今日来ているわたしの服は、エンティパイアから持ってきていた、シンプルなドレスである。

 どうしても手放せなかった、一着のドレス。小さな手持ち鞄の中身を圧迫してしまうだけ、と分かっていたのに、なぜか、一番に詰めたドレスだ。

 エンティパイアにいた頃は普段着としてよく着ていたのだが、こちらに来てからは、術具の道具の修理と宿の往復しかしないような生活で、着る機会がなかったのだ。汚しても困るし。

 一応、ドレスではあるのだが、少し派手なワンピースとも言えるので、折角だから今日来てみた、というわけだ。


「え、普通、そういうのって、男とのデートに着ないかい?」


「…………。……確かに」


 ロルメに言われてみて気が付いた。あれ、『折角着る』というならそのタイミングだよね。なんでわたし、今日着てるんだろう。

 この間ウィルエールと出かけた時に着るのでもよくなかった?

 本当に思いつかなかった、というのが伝わったのか、呆れたようなため息が多方から聞こえてくる。



「今からでも行って来なよ、デート」

「えっ?」


 そう言うマルシが指さす先には、アルベルトがいた。……えっ、アルベルト!?

 彼はこちらが気になるのか、ちらちらと様子をうかがっている。


「な、何故彼がここに……?」


「アルベルトの名誉のために言うが、後をつけてきたわけじゃないからね。僕らより先にいたし、そもそもあいつはここのところ討伐依頼にあちこち行っていたから、今日のこと自体知らなかっただろうよ」


 知ってたらそもそも来るのを邪魔しただろうし、とマルシは言う。ううん、確かにそれは否定できない。


「僕は恋愛しない主義だから、別にフィオディーナさんがいなくなったところで数に齟齬は出ないし。行って来たら」


 マルシはそう言うが、幹事のルディネーはどう思うか……と彼女を見て見れば、きらきらと目を輝かせ、面白いものを見た、と言わんばかりの表情をしている。

 わくわくしているというか、野次馬根性丸出しの顔である。


「わ、わたしだって、その、そう言うことに興味なくってよ。下手に期待を持たせるのも残酷でしょう」


「じゃあこっちに呼ぼ。さっきからちらちら見てるの、気になるし。大人数での食事ならデートにはならないでしょ」


「ちょ、ちょっと!」


 わたしの静止もむなしく、ルディネーはアルベルトを呼びに行ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ