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 冒険者の男性は、あごに小さくも目立つ傷を持つ、どこかで見たことあるような顔をした男性だった。

 知らない人のはずなのに、既視感を感じるということはもしかしたらギルドですれ違うくらいはしているのかもしれない。


「君がフィオディーナさん? 俺はロルメというものだ。この間は弟がお世話になったようで」


「……弟?」


 はて、いったい誰のことだろうか。


「ああ、エステローヒで、ファルドという男と依頼を受けたんだろう? 話を弟から聞いたよ」


「ファルドさん!」


 エステローヒで一緒に依頼をこなした一人、剣士のファルド。そう言えば、剣術一族の三男だと言っていたっけ。

 ということは、このロルメさんがその一族の長男か次男ということか。

 確かに言われてみれば、顔がどことなく似ている気がする。なるほど、既視感の正体はこれだったのだ。


「いえ、わたしこそ、初めての依頼だったので、いろいろとお世話になりましたわ」


 いや、本当に。わたしは文字通りほとんど何もしていない。彼が一撃でスレムルムを倒したのだから、ファルドさんが一番活躍したと言っても過言ではないだろう。

 わたしなんて、本当にたいしたことはしていない。


「随分と変わった魔物だったそうじゃないか。手ごたえがないと弟は残念がっていたよ。俺としては、安全に依頼がこなせるなら、それに越したことはないと思うんだけどね」


「……変わった魔物? フィオディーナ、どんなのだったの?」


 『変わった魔物』という言葉に、ルディネーが食いつく。職業柄なのか、気になってしまうようだ。こうして集まった場所で話すような内容でもないと思うのだが。

 しかしまあ、恋の話だの、そういう話の方がわたしは困るので、質問に答える。


「スレムルムだったんですけれど、戦闘どころか抵抗もせずあっさりと退治できたの。何かを探していた見たいで……。誰かの使役魔なんじゃないかっていう話は出たのだけれど」


「使役魔? スレムルムを?」


 驚いた声を上げたのはフェルイラだ。

 他の三人も、驚いた表情を見せている。やはり相当珍しいことらしい。


「その畑から、妙な小箱が出てきて。それを探してて、わたしたちに反応しなかったんじゃないか、という話になったのよ」


「小箱? それ、回収したの? 大丈夫?」


 眉を顰めるのはルディネー。わたしが、「依頼とは関係ないから放置した」と言えば、ちょっとほっとしたような顔をした。

 やっぱり、好奇心に負けて行動するというのは、冒険者間では褒められた行動じゃないらしい。


「……中身は確認したのかい?」


 そんな質問を投げかけたのは、マルシだった。珍しい。意外と面倒くさがりな彼が、この話を掘り下げるのに参加してくるとは思わなかった。


「まあ、一応……」


「ちょっとちょっと、フィオディーナ。ダメだって、そういうのは」


 ルディネーがたしなめるように言う。確かに、あの時ダリスも「冒険者の敵は好奇心と欲」と言っていた。やっぱり、あの時もっと強く止めておけばよかったんだろうか。

 わたしはあのブローチを見て、恐ろしいほどの既視感を覚え、震えたけれど、残りの三人には何の影響もなさそうだったので、深く考えなかったけれど、呪いのような効果を持つ術具の可能性もあったはずだ。

 ただ運がよかっただけ。


「それで、中身は?」


「え? ああ……黒い石のはまったブローチでした」


「へ、え。そう」


 一瞬、マルシは明らかに動揺していた。しかし、すぐに取り繕う。何かあのブローチに関して、心当たりや知っていることがあるんだろうか。

 けれど、聞くな、という圧がすごくて、わたしは間を持たせるために、ジュースを飲むことしかできなかった。

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