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 そして数日後。

 酔っ払った勢いで言った冗談……などではなく、ルディネーは本当に合コンをセッティングした。この世界には前世と違って合コン、という言葉がないので、あくまでも交流を深めるための食事会、とのことだったが。

 場所は冒険者ギルドに併設された食堂のどちらでもなく、ギルドから少し歩いたところにある酒場だった。

 二階建ての酒場ったらそれこそ断ろうと思っていたのだが、普通の一階建てのお店だ。

 この間ウィルエールと二人で来た時には見つけられなかったお店だ。やはり、長年ここで暮らしていると、穴場の店の一つや二つ、知っているものなのだろう。

 女側はわたしとルディネー、フェルイラの三人。男側は、ギルド職員として働いているところを見たことがある人と、まったく知らない冒険者らしき人、そしてなぜかマルシがいた。

 女もいる、ということを知らされていなかったのか、マルシは苦い顔をしている。


「じゃあ、今日と言う日に出会ったことを感謝して、乾杯!」


 とりあえず乾杯には合わせておく。

 貴族の乾杯、というのはあくまで形だけというか、あまりグラスとグラスを突き合せないのだが、ここでは違うらしい。わたしは慌ててこつり、と隣に座るルディネーのグラスにくっつけ、乾杯に参加する。

 貴族が使うようなグラスは平民が使う者と違い、装飾が凝っているのでその分割れやすい。というのが表向きの理由だが、実際は、口のふちに毒が塗られていることがたまにあるので、他のグラスへ移るのを防ぐため、というのが陰でささやかれている真実だ。


 取っ手のあるものでなく、前後が分かりにくい酒のグラスでは、ぐるりとふちに一周毒が塗られる時があるのだ。

 ここ何年かはそんな事件はなかったが、昔はそう言う毒殺事件が何度かあったため、乾杯するときはグラスを合せない、というのがエンティパイアの常識。

 だからこそ、わたしはちょっと躊躇ってしまうのだが、口をつけないのもそれはそれで不自然だ。

 まあ、こんなところで毒殺事件なんてそうそう起きないだろう。


 わたしはそう自分に言い聞かせて、グラスの中身を飲む。酒は苦手な方ではなく、令嬢の中では飲める方だと思っているが、帰りに迎えの馬車や従者が来るわけでもないので、わたしのグラスの中は酒ではなくジュースだ。

 酒好きらしいルディネーとフェルイラはお酒を飲んでるようだけど。


「じゃあ、自己紹介を! ……っていっても、皆知り合いか。狭い範囲で呼んできたからなー」


 いやーすぐに来れる人がなかなか捕まらなくて、とルディネーは笑う。

 ギルドの受付嬢ならば、確かにみんな知り合いだろう。一人はギルドに出入りする商人、一人は同僚、一人は頻繁に受付へ来るであろう冒険者。

 まあ、わたしは冒険者の人、知らないんだけども。ギルド職員さんの方は何度か見たことがあるし、会話をしたこともある。名前は確か……ロゼンだったか。

 人当たりがいいので、親しい方ではないが、話しかけやすい人ではある。


 冒険者の人の方は本当に分からなくて、見かけたことなかったかな? と思いながらじっと見ていると、ばちり、と目があった。

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