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第二夜「経過観察」

~翌日~


男「こういうのって普通『~○年後~』とかじゃないの?! 具体的には5年後とか…」


ジョブコーチ「何を言っているのだ?」


男「すみません、つい」


ジョブコーチ「いよいよサキュバスの就職だが、今回は通常の障がい者の就職とも違う特殊なものだ」


男「はあ(通常がどういうものかも分からんけど)」


ジョブコーチ「そこでサキュバスが来る前に言っておく。まあ注意・連絡事項だ」


男「はい」


ジョブコーチ「サキュバスは重度の痴的障がい者だ。昨日も言ったようにサキュバスにエロいことをしたり、エロいものを見せたりしてみろ…どうなるかはわかるな?」ギロ


男「はは、はい、もちろんです! 第一そんなこと私からサキュバスさんには絶対しようとは思いません!」


ジョブコーチ「どうかな。魅了されているしな」


男「魅了されてるからこそサキュバスさんの嫌なことは絶対しませんよ!」


ジョブコーチ「ふうむ。一応は信用してやる。しかし実習と違って就職となると長い時間滞在することになる。念のため本棚とベッドの下にあったいかがわしい本は処分しておいた」


男「オカンか! どうも本が無いと思っていたら… っていうか読みかけだった普通の漫画雑誌もないんですが」


ジョブコーチ「いかがわしい写真が載っていただろう」


男「あれ普通のグラビア! 水着だし!」

男(っていうか今のジョブコーチさんの格好の方がよほどいかがわしいんだが)


ジョブコーチ「ちなみにPCの『業務用』とかいう名前のフォルダに入っていたエロ画像とエロ動画も削除しておいた」


男「なんてことを!!」;_;


ジョブコーチ「二度と収集できないよう、フィルタリングソフトもインストールしておいたぞ」


男「ど、どうやって?! 第一PC のパスワードとかもあるのに…」

男(これも魔界の力? スーパーハッカー並みの?)


ジョブコーチ「キサマの机の引き出しの中にIDとパスワードを書いた付箋があった」


男「俺、情報リテラシー低すぎぃ!」


ジョブコーチ「フィルタリングソフトの代金と年間使用料も引き出しにあったカードで払っておいた。ちなみにフィルタの解除は新たに作った私のIDからしかできないからな」


男「ぐぅ」


ジョブコーチ「あとスマホも同様にエロ画像とかは削除してフィルターをかけておいた」


男「容赦なしか…しかしいつのまに…」ボロボロ


ジョブコーチ「なんだ、不満か」


男「…サキュバスさんがここに就職するためですよね」

男(そうだよ、万が一にもそんなのサキュバスさんには見せられないし!)


ジョブコーチ「よし。ではサキュバス、入ってこい」


<ガチャ>


サキュバス「はい」


男「サキュバスさん…」


サキュバス「男さん…これからどうぞよろしくお願いします」ペコリ


男「こちらこそよろしくお願いします!」


ジョブコーチ「二人にも話しておいたと思うが、就職といっても最初は魅了者・被魅了者の経過観察を行う」


サキュバス「はい。それで私は何をしたらいいでしょうか」


ジョブコーチ「とりあえず二人で自由に過ごせ」


男「は?」


ジョブコーチ「プレーンな状態での状況を見たいので、私もこの場から席は外す」


男「二人きり?!」


ジョブコーチ「もちろん外部から観察は続ける。なるべく干渉はしないつもりだが…サキュバス」


サキュバス「はい」


ジョブコーチ「何かあったら私を呼べ。すぐに駆けつける」


サキュバス「え、あ、はい。でも大丈夫だと思います。男さんもいますし」


ジョブコーチ「(それが一番危ないのだが…)とにかく、私が常に見守っていると思ってくれ」


サキュバス「はい」


ジョブコーチ「うむ。ではあとで迎えに来る」



男(サキュバスさんと俺の部屋で二人きり!)///


男「き、緊張するね…」


サキュバス「そ、そうですね…」///


男(監視ありとは言え一部屋に男女ふたり、いや男サキュバスふたり?でいるのに、サキュバスさんそれほど恥ずかしそうでもないな)


サキュバス「自由に過ごすって何をすればいいんでしょうか」


男「あ、まずお互いのこととか話をしてみない?」

男(実習のときはいつもアタフタしてたからゆっくり話もできなかったしなあ)


サキュバス「はい。では男さんから…」


男「うん、じゃあサキュバスさんの趣味とかは?」

男(って自分の話じゃないしお見合いかっ!)


サキュバス「あ、いえとくには…」


男「ふうん…」


サキュバス「…」///


男「…」///


男(あかん! 話題に詰まったうえにサキュバスさんの答にケチつけたみたいになってる! 話したいこと、聞きたいこといっぱいあるのに…)


サキュバス「き、緊張しますね」///ニコ


男(しまった、話が最初に戻ってしまった…。俺がちゃんとしないと…)


男(よしっ!)


男「えっと、サキュバスさんのご趣味は?」ズバァp


~3時間後~


サキュバス「緊張しますね…」///


男「うん…」///


ジョブコーチ「お前たち、緊張と趣味の話しかしてないではないか」


男「あ、ジョブコーチさん」


ジョブコーチ「まあこれはこれでいいデータが取れた。今日は終わりにしよう」


男(うおぉ、結局何も話せないまま終わった!)


サキュバス「では男さん、また明日…」



男(ダメだ、意識しすぎだ…。明日こそちゃんと話そう)


男(でもサキュバスさんも部屋に二人きりなのに、そんなに恥ずかしそうじゃなかったな。緊張はしたけど)


男(エロいことには耐性がないはずなのに…あの実習で慣れたのか?)


男「エロいこと…んっ?」


男(よく考えてみたら、部屋に二人って別にエロくはないのか。二人きりだと何かある、と思っちゃうからエロいんであって…)


男(あの意味のなさそうな、しょうもない実習でもすごい恥ずかしそうだったのは、『エロいことをしている』という気持ちがあるからだった)


男(ってことは、俺と二人きりでも、そういうエロいことには絶対ならないって思ってるってことだ)


………


男(いや、それだけサキュバスさんに信用されてるってことだ! その信頼を裏切っちゃ絶対ダメだ!)


男(…エロ関係をジョブコーチさんに処分してもらってよかったな)


男は(少なくともサキュバスが来ているあいだは)修道僧のようなストイックな生活を誓うのだった



~翌日~


ジョブコーチ「では後でな」


男(また二人きりに…/// 今日はちゃんと話そう。まずは差し障りのなさそうなことから…)


男「ところで、魔界ってどこにあるの?」


サキュバス「えーっと、どこと言うのはないんですけど…」


男「結構離れてるのかな」


サキュバス「いえ、距離と言う概念はないと言うか…人間界の言い方を借りれば別次元にあるって感じです」


男「ふうむ、まさにこの世ではないということか。でも魔界の人(?)っていつもどうやってこっちに来てるの?」


サキュバス「私は来るときはいつもジョブコーチ先生に連れてきてもらってるんですけど、皆さんはそれぞれに通勤されてますね」


男「(通勤…)どんな感じで魔界から通勤?いやこっちに来てるの?」


サキュバス「ええと、うまく言えないんですけど…トンネルを通るような感じでしょうか。いや、ちょっと違いますね…」


男「ワープするような感じなのかな」


サキュバス「いえ…多分行き来してみないとわからないと思います。すみません」


男「へえ。俺も魔界に行けるのかな」


サキュバス「人間界の生きた人が魔界に来た話は聞いたことないですね…」


男(ゾッ そりゃそうか、魔界だもんな。でもサキュバスさんがどんなところにいたのかは気になるな)


男「ところでサキュバスさんは、群馬サキュバス支援センターから来てるんだっけ」


サキュバス「はい、群馬サキュバス障がい者支援センターにお世話になっています」


男「おっとごめん、その支援センターだけど、群馬ってどういうこと? こっちの群馬県と関係あるの?」


サキュバス「群馬は群馬ですが…魔界の群馬県は人間界の群馬県とは多分違いますね」


男「…群馬県あるんだ、魔界…。じゃあ大阪とか、他の都道府県とかもあるの?」


サキュバス「群馬県以外のことはよくわからないんです…普通は群馬県、あ魔界のですが、そこからみんな出ないので」


男(こっちの群馬県、っていうか都道府県とは違う感じだな)


サキュバス「ごめんなさい」


男「いやいや、謝ることじゃないよ! そうそう、サキュバスさんはその群馬県のどこに住んでいるの?」


サキュバス「今は前橋にある支援センターの寮に住んでいるんですが、実家は桐生きりゅうにあります」


男(桐生って確か群馬県にあったよな…どうなってるんだ、魔界…)


男「前橋や桐生もあるんだ…もしかして高崎とかもある?」


サキュバス「あ、一番大きな街ですよ! 血だるま弁当が有名で…」


男「…実は魔界って群馬県のことじゃないの」


サキュバス「? すみません、どういう意味でしょう…」


男「聞き流してくれていいから…寮に住む前は実家でご家族と住んでたのかな」


サキュバス「あー、私たちサキュバスには人間でいう家族はいないんですよ。発生した場所が実家ですね」


男「発生…あと、そもそもなんで魔界の群馬県からこっちの大阪に来たの? いやこっちと魔界の都道府県は違うか…」


サキュバス「うーん、よくわかりません。ターゲットや職場の決め方は私にはわからないんです」


男「なるほど(もうそういうものだと思うしかないな)」


サキュバス「人間界のことも教えてください。人間界の街とかどんな感じなんでしょう」


男「え、えっと、ビルがあって店とかレストランとかがあって…(そう聞かれるとうまく答えられないな)人間界にいるなら見にいけばいいんじゃないかな。なんなら俺も一緒に行くよ」


サキュバス「あ、私たちは取り憑いた人の部屋とか家のその周りくらいしか居られないんです。しかも夜だけなので周りの状況もよくわからなくて…」


男「知らなかった」(じゃあサキュバスさんとどこかに出かけることもできないのか)


サキュバス「ジョブコーチ先生とか、淫力の強い方は自由に動けるそうですが…」


男「うーん、そうだ」PCパチ「インターネットで…ほら、大阪で検索するとまず出てくる、ここが道頓堀」カチ


サキュバス「綺麗なところですね!」


男「え、ネオンがかな?」(いわゆる外国人感覚なのかな…って外国どころか外世界だった)


男「街とは違うかもしれないけど、大阪といえば大阪城」カチ


サキュバス「これが人間界のお城なんですね」


男「まあ今はただの博物館みたいなものだけど。で、これが通天閣」カチ「俺は行ったことないけど」


サキュバス「面白い形ですね」


男「普通の街っぽいところというか、ビル街というとキタのあたりかな。これがグランフロント」カチ


サキュバス「大きいですね!」


男「これが梅田スカイタワー」カチ


サキュバス「へんな形ですね。建物の中が空いてます」


男「空いてるというか、2つのビルが空中庭園で繋がってる感じかな。で、梅田じゃないけど、これが日本一の高層ビル、あべのハルカス」カチ


サキュバス「本当に高そうです!」


男「ここから見る夜景はすごく綺麗で…」(おっと、さっきからこれじゃただのビル紹介だ)「他にもUSJとか…」カチ


男「…というところかな。大阪の観光案内みたくなっちゃったけど、感じとしてはこんなものか」


サキュバス「どこも人間がいっぱいいて、街も大きいんですね!」


男(それは魔界の群馬県と比べてだろうな。魔界の大阪府があったらどうなんだろう)


ジョブコーチ「よし、二人とももういいぞ」


サキュバス「あ、先生。今日も楽しかったです」


男(今日『も』? 昨日のあれも楽しかったのだろうか…)


ジョブコーチ「うむ。今は楽しく過ごせればそれでいい。では行くぞ」


サキュバス「男さん、それではまた」


男「ああ、それじゃまた明日ね」


男(地元のことって意外と知らないもんだな…タウン情報誌でも買うか。でも結局サキュバスさんとはどこへも遊びに行けないんだよな…。二人で夜景を見たり、テーマパークで遊んだりしたいな…)


どことなく虚しさを感じながらも、明日のために人間界(地元)の情報収集を考えるのだった

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