第一夜「職業体験」
サキュバスなど淫魔のうち、痴的障がいを持つものは、淫魔千体中4体に過ぎない
しかし、現在は「障がい淫魔差別解消法」が制定され、全ての淫魔が障がいの有無によって差別されることなく、マイノリティであっても共生していける魔界の実現を目指している
この法律の施行によって各地に支援センターが設立され、その活動も活発化している
~
ジョブコーチ「さあ、ここが職業体験の現場だ」
サキュバス「こ、こんばんは」
男「え? なに?」
ジョブコーチ「ああ、申し遅れた。私は群馬サキュバス障がい者支援センターのジョブコーチだ」
男「ここ大阪なんだけど…」
ジョブコーチ「今日は当センター職業訓練校の最終過程、サキュバス職業体験実習をこちらで実施する」
男「え? 全然わからないんだけど、なんで人ん家で勝手に実習を? そもそもサキュバス職業体験ってなに?」
男は混乱している
ジョブコーチ「キサマ、障がい者を差別するか!」
男「いやいや、障害者差別なんてしません! でも全然わからないんですが…」
ジョブコーチ「やれやれ、キサマは意識が低いな。もっと社会に興味を持て」
男「いや、これでもボランティアとかもしてきましたけど、意味が分からないし、突然ってのはちょっとありえないし、まずその破廉恥な格好で何を言われても聞けるものではありません」
ジョブコーチ「真面目か! 言っただろう、我々はサキュバス。男の精を吸い取るのを生業としている」
男「生業なんだ…。でもその雰囲気、確かにこの世のものではなさそうです。とするとその格好、本当にサキュバスなんですね…」
ジョブコーチ「そう言ってるだろう」
男「でもそうすると、そのとなりのジャージ姿の女性はどなたでしょう?」
ジョブコーチ「サキュバスに決まっているだろう」
サキュバス「あ、ど、どうも…サキュバスです…」
男「えええ? サキュバスですよね? 地味な格好だし、たしかに顔は可愛いけどなんかスタイルも貧弱だし、色気がないというか…」
サキュバス「あ、あ、ご、ごめんな、さい…」シクシク
ジョブコーチ「キサマあ!!」ガシィ!
男「うわあ!」
ジョブコーチ「ちょっとこっち来い!」
男「あわわ」ガクガク
ジョブコーチ「キサマ! 障がいを持つ者に向かってなんて酷いことを!」ヒソヒソ
男「え? 障害を持つ者?」ヒソヒソ
ジョブコーチ「言っただろう。私はサキュバス障がい者支援センターから来たのだ。彼女は障がいを持っているのだ」ヒソヒソ
男「それはわかりましたが…確かに色気がないは言い過ぎたかもしれませんけど…」ヒソヒソ
ジョブコーチ「ばかもの! まだ言うか。彼女はエロいことに耐性がないのだ」ヒソヒソ
男「え、それってサキュバスにとっては致命的なのでは?」ヒソヒソ
ジョブコーチ「そのとおりだ。彼女は痴的障がい者なのだよ」ヒソヒソ
男「“痴的障害”言いたいだけでは?」ヒソヒソ
ジョブコーチ「黙れ! とにかく、だから我々が支援をしているのだ。淫活保護や障がい年金をもらってセンターで生涯めんどうをみることもできるが…。やはりサキュバスに生まれてきたからには、男の精を吸い尽くしてとり殺させてあげたい」ヒソヒソ
男「いや、やめてください!」インカツホゴッテナンダヨ...ヒソヒソ
ジョブコーチ「もちろん痴的障がいのある彼女ひとりではムリだ。だから私がサポートするし、職場の君にも協力してもらう必要がある」ヒソヒソ
男「なんで精を吸い尽くされる手伝いを自らがしなきゃならないんですか! 第一職場て…」ヒソヒソ
ジョブコーチ「もちろん協力いただく事業所、いやターゲットの君には税精的にも有利になっている」ヒソヒソ
男「税精ってなんだよ…」ヒソヒソ
ジョブコーチ「君は元々別のサキュバスのターゲットになっていたのだが、協力いただければ精を吸い取るのは1/10という軽減税精が適用される」ヒソヒソ
男「1/10とはいえ、結局吸われるのかよ…っていうか、これほとんど脅しじゃないですか」ヒソヒソ
ジョブコーチ「じゃあ頼むぞ。さあ、戻ろう」
サキュバス「めそめそ」グスグス
ジョブコーチ「ほら、謝れ!」
男「あ…はい…
あの、先ほどは失礼なことを言いまして、申し訳ありませんでした」
サキュバス「え…あ、いいんです…大丈夫です…」ゴシゴシ
男「いや、本当にすみません…」ザイアクカン
ジョブコーチ「よし、それでは早速実習に入ろう」
サキュバス「あ、はい」
ジョブコーチ「まずはこの男を魅了するところからだ。いや、難しく考えなくていい。訓練校でやったとおりだ」
ジョブコーチ「色仕掛けその1、相手の目をじっと見つめてみろ」
サキュバス「はい、わかりました」ジー
男「え? これが色仕掛け?」
ジョブコーチ「黙れ! さっさと精を放出しろ!」
男「そんなムチャクチャな…」
男(でもこんな可愛い子に見つめられるとちょっとドキドキする)///
サキュバス「ジー」///
サキュバス「せ、先生! も、もうだめです…」バッ
男「え、10秒くらいしか経ってない…」
ジョブコーチ「よし、よく頑張ったな」
男「えええええ」
サキュバス「すみません、もう恥ずかしくて…///」
男(か、可愛い…)///
ジョブコーチ「今日は初めてなんだ。それで十分だ。この男も少し魅了できたようだしな」
男「魅了? え! いやいやいや…」/// ブンブン
ジョブコーチ「ギロ(話合わせろゴミカス)」
男「はい! 私もこんな可愛い子にジッと見つめられてドキドキしちゃいました!(本当に少しドキドキしたしな)」
サキュバス「え、あ、えへへ ^^」///
男(チョロいな…)
ジョブコーチ「よし、では今日の実習はここまでだ」
男「え、もう終わり?」
ジョブコーチ「当たり前だ。はじめての職業体験実習だぞ。これから少しずつ職場に慣れてもらう」
男「まだずっと続くんですか!?」
ジョブコーチ「ああ。次の実習も頼むぞ」
男「ええええ」
サキュバス「あ、ありがとうございました。また次もよろしくお願いします」
男「あ、よ、よろしく…」
そうしてサキュバスたちは男の部屋から消えたのだった
〜一週間後〜
男(あれから一週間。サキュバスたちは毎晩来ているが…結局最初の見つめ時間が一番長かったなあ。たった10秒ほどだけど)
ジョブコーチ「では今日も始めようか。色仕掛けでこの男を魅了するぞ」
サキュバス「は、はい」
サキュバス「ジー」///
男(やっぱりまだちょっと恥ずかしいな)///
サキュバス「ジー」///
男(お、今日はちょっと長い)
サキュバス「ジー」///
サキュバス「は、恥ずかしい…」バッ
ジョブコーチ「頑張ったな! 今までで一番長かったぞ」
男(それでも15秒くらいだったけど)
ジョブコーチ「ほぼこの男も魅了されたぞ」
男「え、あ、はい、もうドキドキです!」
サキュバス「え、本当ですか?」///
男「うん、サキュバスさん可愛いし…」
サキュバス「え、そ、そんな…」/// テレテレ
男(相変わらずチョロいな)
ジョブコーチ「よし、これで色仕掛けその1は修了だ。よくやったぞ」
サキュバス「あ、ありがとうございます」
ジョブコーチ「今日はこのまま次の実習に入ろうか。大丈夫か?」
サキュバス「はい、お願いします」
男(相変わらずこっちの都合は関係ないんだな…)
ジョブコーチ「色仕掛けその2、セクシーポーズだ」
男(えっ? マジか)
サキュバス「は、はい…」
ジョブコーチ「訓練校での成果を見せてみろ」
サキュバス「で、では…」///
男(セクシーポーズって、大丈夫なのか?)
サキュバス「すー、はー」///
男(目をつぶって直立したままだが…)
サキュバス『…ダ、ダッチューノ…><』/// ボッ
男「声ちっさ!っていうか突っ込みどころ多スギィ! 第一ポーズとってないし!」
ジョブコーチ「ギロ!(怒)」
男「おう、セクシー!」
サキュバス「恥ずかしい…」///
男(どっちの意味でだろう…)
ジョブコーチ「なかなかだったぞ。これも少しずつ慣れていこう」
サキュバス「は、はい」
男「しかし『だっちゅーの』って…」ボソ
ジョブコーチ「うむ、確かに『だっちゅーの』は魔界で今一番ナウなポーズだからな。だからと言って障がいを持つサキュバスには出来ないというのは早計だ」
男(どうなってんだよ、魔界…)「っていうかポーズは?」
ジョブコーチ「何を言っている。まずは声を出すところからだろうが」
男「はあ」(これもこの先長そうだな…)
ジョブコーチ「よし、今日はこれまでだ」
サキュバス「はい、あ、男さん、今日もありがとうございました」
男「あ、いえいえ」///
男(やっぱり可愛いことは可愛いんだよな)
ジョブコーチ「それではな」
〜数日後〜
サキュバス「だ、だっちゅーの!」///
男(とうとうポーズも付けてきたけど、どう見ても斜め下に前ならえしているようにしか見えない…
その前に、上まで閉めたジャージだから胸元なんか全然見えないし)
ジョブコーチ「おお、だいぶいいぞ」チラ
男「っ! はい、鼻血が出そうです!」
サキュバス「恥ずかしいです…」///
ジョブコーチ「よし、今日はここまでに…」
サキュバス「せ、先生! あの、もう少しやってはダメでしょうか」
ジョブコーチ「しかし今日はポーズも付けたし、だいぶ恥ずかしかっただろう。無理せずゆっくりやっていけばいいんだぞ?」
サキュバス「いえ、大丈夫です! やらせてください」
ジョブコーチ「ふうむ。やる気があるのはいいことだ。ダメそうならすぐに言うんだぞ」
サキュバス「は、はい! ありがとうございます」
ジョブコーチ「では続きだ」
サキュバス「あ、男さん」
男「え?」
サキュバス「あの、続けてもいいでしょうか」
ジョブコーチ「はっはっは。セクシーポーズを堪能できるのに断る男がいるわけないだろう」
男(ええええ。相変わらずこっちの都合はおかまいなしか。まあこの研修自体がそうだけど)
サキュバス「でも一応…」
男(それに比べてサキュバスさんは優しいな…)
男「私は大丈…、いや、ぜひもっと見せてほしいな!」
ジョブコーチ「ほらな」
男(くぅ、こいつ…)
サキュバス「ありがとうございます。それでは…すー、はー」///
サキュバス「…/// あ、やっぱりちょっと待ってください」///
ジョブコーチ「ほら、大丈夫か? やはり今日は一旦終わろう」
サキュバス「いえ! すみません、少し落ち着かせてください。絶対にもっとやってみせます」
ジョブコーチ(ほう、ガッツがあるな)
ジョブコーチ「よしわかった。時間はいくらかけてもいいからな」
男「……」
サキュバス「すー、はー」///
ジョブコーチ「おい、キサマ」ヒソヒソ
男「は、はい、何でしょう」ビクビク ヒソヒソ
ジョブコーチ「今彼女は意欲が旺盛だ」ヒソヒソ
男「とてもやる気になっているみたいですね」ヒソヒソ
ジョブコーチ「そうだ。だからせっかくの意欲を無駄にさせたくない。そこでキサマに言っておくことがある」ヒソヒソ
男「はあ」ヒソヒソ
ジョブコーチ「いいか、彼女のセクシーポーズに対してエロい視線を送るな」ヒソヒソ
男「セクシーポーズの意味とは」ヒソヒソ
ジョブコーチ「ただでさえ連続でエロいことをするんだ」ヒソヒソ
男(あれ、エロいことって言えるのか…)
ジョブコーチ「そこにエロい視線を送られたら、余計に意識してしまうだろうが」ヒソヒソ
男「あの、私なるべく見ないようにしましょうか」ヒソヒソ
ジョブコーチ「ばかもの。人間の男に見てもらわなければ実習の意味がないだろう。協力してくれるな?」ヒソヒソ
男「しない、っていう選択肢は私には無いですよね?」ヒソヒソ
ジョブコーチ「分かってるじゃないか。頼むぞ」ヒソヒソ
男(まあ、どちらにしろあの感じじゃエロい視線を送りようがないからな)
サキュバス「す、すみません、お待たせしました。やります」
ジョブコーチ「よし、やってみろ」
サキュバス(すー、はー)///「だっちゅうの!」/// マエナラエ!
男(おお、エロくはないが、美少女の体操を見ているようで、なんかこう、エロくはないけど…。エロくはないんだけど! 何だろうこの感じ)
男「ジー」ドキドキ
サキュバス「きゃっ…お、男さん、そんなに見つめないでください…」///
ジョブコーチ「キ・サ・マ さっきの話もう忘れたか? (怒)」ヒソヒソ
男「いや、ちょ、ちょっと! エロくない、エロくはないです! エロい気持ち無しです!」ヒソヒソ
ジョブコーチ「(怒) (怒) (怒)」
男(ガクガク)
ジョブコーチ「サキュバス、大丈夫か」
サキュバス「あ、すみません、ちょっと驚いてしまって…。せっかく見ていただいているのにごめんなさい。真剣に見ていただいて嬉しいです」
男(セクシーポーズって真剣に見るものだったんだな…)
サキュバス「もう大丈夫です。それよりもう一回…」
ジョブコーチ「いや、せっかくやる気のところ申し訳ないが、今日はここまでにしよう。淫調管理も大切だぞ」
男(淫調管理って何だよ…)
サキュバス「そうですね…。わかりました」
ジョブコーチ「今日はサキュバスの淫調もあるからこれで帰るが、覚えておけよ(ギロリ)」ヒソヒソ
男「あわわ…」
サキュバス「男さん、どうもありがとうございました。今度は驚かずにやりますので、また見てください」
男「うん、待ってるよ」(やっぱり良い子だなあ。淫魔だけど)
そうしてこの日もサキュバスたちはどこへとなく帰って行くのだった
-魔界の群馬県、支援センター-
ジョブコーチ「……」カリカリカリ
ジョブコーチ「ふう」パタン
所長「ちょっといいですか」
ジョブコーチ「あ、所長。ちょうど日報が完了したところです」
所長「どうですか、サキュバスさんは」
ジョブコーチ「そうですね。彼女は非常に意欲が高いですね。今日も自分の淫調も気にせず実習に取り組んでました。さすがに止めましたが」
所長「なるほど。そのやる気を削がないよう支援してあげたいですね」
ジョブコーチ「はい」
所長「しかしあの子を見ていると、健淫な我々ももっと頑張らないといけない気がしてきますね」
ジョブコーチ「ええ。 魅了術とかもまだまだな彼女ですが、私も色々教えられることが多いですよ。ははは」
所長「ほほほ」
魔界では障害者支援も始まったばかりなので、支援センターの職員でも発言がこのように謎の上から目線になるのだった
-人間界の大阪府、男の部屋-
男「『人間界の』っている?!」
男「いや、そんなことより。最初は可愛いけど色気は無いって思ってたのに…何だろう。色気は確かに無いんだけど…」
男「色気は無いけど、なぜかドキドキするし。『エロい』とは違うんだけど、同じような感じというか…」
男「あああ! 自分でもよく分からない! もう今日は寝よう」
男は自分が魅了されつつあることに気づいていないのであった
~数日後~
サキュバスの厳しい職業体験実習は続いていた。
ジョブコーチ「よし、次は色仕掛けその3、耳元での甘い囁きだ」
サキュバス「コ、コンニチハ!」///
男(耳から3mくらい離れていて、いつもの方がまだ近いんだが…)
〜数日後〜
ジョブコーチ「次は色仕掛けその4、ボディタッチだ。背後から回り込んで包み込むようにやってみろ」
男(え、いきなり大丈夫か!?)
サキュバス「ど、どうですか?///」タントンタントン
男(肩たたきやん…しかも微妙に肩に当たってないし)
サキュバス「たんとん、たんとん」///
男「口で言ってるんかい!」
〜○日後〜
ジョブコーチ「色仕掛けその69、ぱふぱふだ。魅了の体験実習はこれで最後だぞ」
サキュバス「は、はい、頑張ります」
男(色々しょうもない実習もこれで終わりか…しかし、ぱふぱふ?!)
サキュバス「えい!///」ギュッギュッ
ラッパホーン『パフパフ♪』
男「色仕掛け関係ねーー!!」
ジョブコーチ「痴的障がいを持つものにぱふぱふなどさせられるわけなかろう(物理的にも)」
男「正論! だったらこの実習やる必要ないのでは…」
〜数日後〜
ジョブコーチ「今日からはいよいよ体験実習の最終過程だ。精を吸ってもらうぞ」
男(えっ! 本当にサキュバスさんが体験とはいえ吸うのか?! ど、どうやって…いやそもそも大丈夫なのか?)
ジョブコーチ「今回は体験実習だから実際の精は放出されないが、本番のつもりで望むように」
サキュバス「は、はい」///
男(いつもより顔が赤い…大変なんだな…)
男「サキュバスさん、大丈夫?」
サキュバス「だ、大丈夫です。今までの実習で少し自信もついてきました。これも男さんとジョブコーチ先生のおかげです」
男(あの実習で自信がついてもなあ)
ジョブコーチ「良く言ったぞ、サキュバス。ここまで完璧に実習をこなしてきたんだ。自信を持っていい」
サキュバス「はい!」
ジョブコーチ「とは言え、精を吸う体験実習だ。ゆっくりでいいからな」
サキュバス「は、はい」///
ジョブコーチ「では始めよう」
男(一体これから何が…)ドキドキ
サキュバス「エト・オムニズ・レギア・アボリカ・アドジャマズ・テ・
セサ・デシパ・ハマナ・クリータズ…」
サキュバス「魔界にまします我らの淫主よ、願わくば我を守り給え
彼が放ち給わんことを伏して願い奉る
淫主と悪霊の名において命ずる
魅了されし汝よ、淫主の御力によりて、せ、せ、せせせせ…」/// ボッ
男「何その聖職者の呪文みたいの!!?」
ジョブコーチ「大丈夫か、サキュバス。しかし良くやったぞ。いい感じだった」
サキュバス「あ、ありがとう、ございます…」ガクッ ハァハァ
男「悪魔祓いを終えたエクソシストみたいになってる! いや、それよりサキュバスさん大丈夫?」
サキュバス「は、はい、ご心配、なく…」ハァハァ
ジョブコーチ「よし、今日はもう戻って休もう」
サキュバス「は、はい」ハァハァ
男(いつも辛そうでも繰り返し実習をやっているサキュバスさんが素直に…相当大変なのか)
〜翌日〜
サキュバス「淫主と悪霊の名において命ずる
魅了されし汝よ、淫主の御力によりて、せ、せい…」///ハァハァ
ジョブコーチ「よし、良くやった。少しそのまま休め」
サキュバス「はい」ハァハァ
男「すごい大変なんですね」ヒソヒソ
ジョブコーチ「ああ。この実習は『エロいことをしている』という気持ちがどうしても強く出てしまうからな」ヒソヒソ
男「実際、精を吸うのってこんな感じなんですか?」ヒソヒソ
ジョブコーチ「これはあくまで障がい者向けのものだが…普通どう吸うかは…体験してみるか?」ヒソヒソ
男「いえいえ!」ゾクリ「遠慮させていただきます!」ヒソヒソ
サキュバス「もう、大丈夫です」フゥ
ジョブコーチ「そうか。では行こう」
〜○日後〜
サキュバス「こんばんは…」
男(なんか今日のサキュバスさん元気ないな)
ジョブコーチ「体験実習は今日で最後だ」
男「えっ!?」
サキュバス「私、訓練校もこれで卒業なんです…」
男「えっ、いやおめでとう! サキュバスさん、良かったじゃないか!」
ジョブコーチ「おいおい、まだ卒業じゃない。今日の実習が無事終わったらだぞ」
サキュバス「そ、そうでした…」
男「それでもよかったじゃないか! サキュバスさん、あんなに頑張ってたもんな」
サキュバス「ありがとうございます…でももう実習もこれで最後かと思うと…」
男(そうか、サキュバスさんともこれで…)
男「いやいや! 卒業できるんだろ! 胸を張って! 最後の実習頑張ろう!」
サキュバス「は、はい。これまでの成果、お見せします!」グス
ジョブコーチ「いい心がけだ。それでは最終実習、やってみろ!」
サキュバス「はい!」
<ヒュオォォ!>
男(なんだ? 風が…いや、これが『気』か?!)
サキュバス「エト・オムニズ・レギア・アボリカ・アドジャマズ・テ・
セサ・デシパ・ハマナ・クリータズ…」
サキュバス「魔界にまします我らの淫主よ、願わくば我を守り給え
彼が放ち給わんことを伏して願い奉る
淫主と悪霊の名において命ずる
魅了されし汝よ、淫主の御力によりて精を放出し給え」
サキュバス「退け、理性!」
<ゴオゥ!>
男(っ!!『気』がサキュバスさんの方に向かって!……って……)
男「なに私の後ろでサーキュレーター回してるんですか!」
ジョブコーチ「サキュバスだけにな」
男「シャレにすらなってませんから!」
サキュバス「ハァハァ」
ジョブコーチ「良くやった! 素晴らしかったぞ、満点だ!」
こうしてサキュバスの職業体験実習は終わったのだった
ジョブコーチ「よし、これでサキュバス職業体験実習は全て終了だ。よく頑張ったな」
サキュバス「ハァハァ は、はい、あ、ありが、とう、ご、ご…」グスグス ポロポロ
男(やれやれだけど、これでサキュバスさんと会えるのも最後か…。何か胸が締め付けられるような感じだ)ポロリ
男(!! 俺、泣いているのか?)ゴシゴシ
サキュバス「お、男さん…、ありがとう、ござい…ました」グスグス ポロポロ
サキュバス「私、こ、この実習のこと、絶対、わすれ、ません」グスグス ポロポロ
男「ああ、よく頑張ったね。おめでとう。俺もサキュバスさんのk
ジョブコーチ「よし、じゃあサキュバスはちょっと外で待っててくれるか」
男「私のセリフが途中なんですが」
サキュバス「え、でもまだ男さんと話が…」グスグス
ジョブコーチ「いや、男と仕事の話があるだけだ。終わったらまた呼ぶから」
サキュバス「は、はい、わかりました。男さん、また後で…」ゴシゴシ
<バタン>
ジョブコーチ「さて、キサマともこれで最後だな」
男「ジョブコーチさんともこれで最後かと思うと少し寂しいですね。サキュバスさn
ジョブコーチ「なのでこれから精を吸わせてもらう。ちょっとサキュバスには見せられないから席を外してもらった」
男「セリフが途中! って言うか忘れてた!」
ジョブコーチ「契約のとおり軽減税精が適用され、吸い取る精は1/10とする」
男「ジョ、ジョブコーチさんが吸うんですか」オソルオソル
ジョブコーチ「なんだ、私に吸って欲しいのか? ただ私の場合、手加減しても勢いが余って全部吸ってしまうかもしれんが」
男「いえ、めっそうもない!」ガクガク
ジョブコーチ「吸うのは最初にお前をターゲットにしていたやつだ。おい、もういいぞ」
後輩「どもども。ジョブコーチ先輩チーッス」
男「うお、どこから?」
後輩「あ、男さんよろしくっス。って言っても自分のこと知らないっスよね。自分が精を吸わせてもらうっスよ」
ジョブコーチ「では頼むぞ」
後輩「任せてくださいっス。ただ自分まだ未熟なんで、間違えて全部吸っちゃったらメンゴっス」
男「同じやんけ! って言うか、契約は1/10なんだから守ってくれるんですよね?」
ジョブコーチ「勿論だ。しかし重過失でない過失や事故でそうなってしまった場合は免責になる」
男「契約書の下の方にちっちゃく書いてあるやつ!」
後輩「まあまあ。そうならないよう『一応』頑張るっスよ」ニヤニヤ
ジョブコーチ「フフフ」ニヤニヤ
男(そうだ、こいつら淫魔、つまり悪魔だった…この実習も勝手に始めたし、約束なんか守るはずなかった…)
後輩「じゃあ始めるっスよ」
<もわん…>
男「…! 急に雰囲気が!」
後輩「ほほほほ、妾が其方の精を吸い取って進ぜよう」
男(なんだ、この甘いにおい! 頭の中が真っ白になりそうだ)
後輩「どうれ、恐れずとも良いのじゃ。妾に身を任せてくりゃれば快楽の海へと誘うぞよ」
男(うおお、何そのエロいからだと仕草! エロいと言うか淫靡? 『だっちゅーの』がナウいとか言ってるから魔界の連中はみんなポンコツかと思っていたのに…!)
後輩「ふふふ、どうじゃ、妾のからだは…」ミッチャク
男(からだを密着させてきた! 柔らかくて吸い付くような…そして耳元で甘く囁いてきた!)
後輩「ほほう、其方良い顔をしておるの。妾の好みじゃ」サワリ
男(ゾクゾク…そして微かに流れる甘美な旋律の音楽…ってこれゼルダの大妖精の泉のテーマやんけ!)
後輩「ほーっほっほっほ!」
男(これが本物の吸精…ダメだ、せめて最期にサキュバスさんに…そうだ、サキュバスさんの顔を見ればきっと正気に戻r
ジョブコーチ「ここは結界を張っているから、誰も入ってこれないぞ」
男「心の声途中ぅ!」
男(でも何だろう、色々ヤバいけどなんとか我慢できるぞ)
後輩「ほうれ、妾にすべてを委ねて……あー、これダメっスね」
男(何だ、急に? とにかく助かった)
ジョブコーチ「どうした?」
後輩「この男、すでに魅了されてるっスよ」
ジョブコーチ「なに?」
後輩「あー、魅了って言ってもめちゃ薄いっス。こうやって魅了してみないと分からないっスよ」
ジョブコーチ「他のサキュバスに魅了されている人間をさらには魅了できないからな。私もこのゴミカス男を魅了しようなどとは一度も思わなかったし、気づかなかった」
男「なぜか俺がディスられる展開に…」
後輩「この感じ、たぶんサキュバスちゃんっスね」
ジョブコーチ「っ!! なんと! 魅了が成功していたのか!」
男「俺がサキュバスさんに魅了されている?!」
ジョブコーチ「これはあくまで『体験実習』だからな。本当に魅了するとは…」
後輩「まあかなり薄いっスけどね。サキュバスちゃん、良かったじゃないスか」
ジョブコーチ「確かにな。改めて魅了するのも元の魅了者が解除すれば済む話だが……ふうむ……」
後輩「? どうかしたっスか」
ジョブコーチ「これは貴重なケースだ。痴的障がい者が職業体験で魅了してみせるなど…」
男「?」
ジョブコーチ「ちょっとこの件預からせてくれないか。センター内で検討したい。後輩、せっかく来てもらったのに精を吸えなくてすまん」
後輩「問題ないっスよ! 臨時のお休み貰ったようなモンっスから」
男(精を吸うのって本当に仕事なのかよ…)
ジョブコーチ「すまんな。よし、もう結界も解けてるな…」
ジョブコーチ「サキュバス、もういいぞ」
<ガチャ>
サキュバス「は、はい。……男さん…」ゴシゴシ
男(目を腫らして…ずっと泣いてたのか…)
後輩「サキュバスちゃん、やるっスね!」
サキュバス「あ、後輩さん、なぜここに…」
後輩「まあ自分はもう戻るっスよ。じゃあ先輩、失礼するっス」
ジョブコーチ「ああ、じゃあな。さてサキュバス、我々も一旦戻るぞ」
サキュバス「え、男さんとまだ話が…」
ジョブコーチ「『一旦』と言っただろう。近いうちにまた来る」
ジョブコーチ(どっちにしろ魅了を解きに来ないといけないしな)
サキュバス「ほ、本当ですか!」パアァ「でももう私は卒業なのではないでしょうか…?」
ジョブコーチ「ああ、実習も終わったし、これで卒業になる。詳しくは後で話そう」
サキュバス「はい、また来られるならば大丈夫です!」
ジョブコーチ「では行こう」
サキュバス「男さん、ではまた…」
〜
男「またどこへとなく行ってしまった。俺がサキュバスさんに魅了…? それより本当にまた来るのだろうか」
こうして男の疑問と心配を残して、サキュバスたちは消えていったのだった
-魔界の群馬県、支援センター-
ジョブコーチ「所長」
所長「日報読みました」パタン「サキュバスさんのことですね」
ジョブコーチ「はい」
所長「私もこのような例は聞いたことがありません。実習中ジョブコーチに魅了されてしまった人間の話はよく聞きますが」
ジョブコーチ「恥ずかしながら、私にも若い頃経験があります。未熟でした」
所長「どうしても健淫なほうに注目してしまいますからね、人間は。ジョブコーチさんも今は良くやってるじゃないですか」
ジョブコーチ「恐縮です」
所長「さて、サキュバスさんの話ですよね。彼女に実は障がいがなかった、もしくは実習中に障がいが回復した可能性は?」
ジョブコーチ「それはないと思います。彼女のIQ※はほぼゼロですし、それは実習中も変わっていません」
※IQ:Inran Quotient、痴能指数のこと。OQ(Obscenity Quotient)とも。
ジョブコーチ「職場の人間の男も『色気が不自由だ』というようなことを言っていましたし、人間から見ても普通の痴的障がい者だったはずです」
所長「IQとは別の、何か特殊な能力で魅了した可能性は?」
ジョブコーチ「それもないと思います。あればそばにいた私が何らか気づきますし」
所長「ふうむ。そうですね。そうなると私もあなたと同じ意見です」
ジョブコーチ「やはり職場側、あの『男』にカギが…」
所長「はい。今のところそれ以外考えられません」
ジョブコーチ「いったいあの男にどのような…」
所長「それはわかりません。しかし、例えば我々淫魔の魅了を強く受ける体質だとしたら…」
ジョブコーチ「っ! 実習先にうってつけじゃないですか」
所長「まだわかりませんけどね」
ジョブコーチ「しかしそんな体質の人間が本当にいるんでしょうか…」
キートン山田『男がサキュバスさんのことを好きになってしまっただけである』
所長「そこでです…」
〜〜〜
ジョブコーチ「…なるほど、わかりました」
所長「前例はないですが、よろしくお願いしますよ」
ジョブコーチ「承知しました。お任せください」
キートン山田『後半へ続く』
-人間界の大阪府、男の部屋-
ジョブコーチ「邪魔をするぞ」
男「ジョ、ジョブコーチさん! あれ、サキュバスさんは…」
ジョブコーチ「後から来る」
男「そうですか…」ホッ
ジョブコーチ「さて…魅了の件だが」
男「やはり私はサキュバスさんに魅了されてるのでしょうか」
ジョブコーチ「ああ」
男「サキュバスさんのことを考えるとドキドキというか、胸のこの辺がこう、ギュっというか…」
ジョブコーチ「ふうむ。やはり間違いないか。完全に魅了されているようだ」
男「でも体験実習で魅了することはないって…」
ジョブコーチ「そのとおりだ。これは前例がない、珍しいケースなのだ。痴的障がい者が魅了した例は稀にあるが、障がいが奇跡的に回復したとか、軽度の痴的障がいの場合だ。重度の痴的障がい者が、しかも職業体験実習で魅了したなどという話は聞いたことがない」
男「…」
ジョブコーチ「正直原因もわからないのだ」
男「不思議なこともあるのですね」
ジョブコーチ(まあお前が原因かもしれないのだがな)
ジョブコーチ「そこでだ。我が群馬サキュバス障がい者支援センターではこのケースを研究対象とすることになった」
男「研究対象?」
ジョブコーチ「そうだ。まずは経過観察する。そして色々試験や実験を行い、原因を究明していく」
男「試験や実験というのはどういう…」
ジョブコーチ「それは経過を見てこれから検討していく」
男(まさか魅了された人間の人体実験とか解剖では…)ブルブル
ジョブコーチ「そのために、サキュバスにはここに就職してもらおうと思う」
男「就職!? ここに!?」
ジョブコーチ「ああ。本当は別のところにほぼ決まっていたのだが…」
男「っていうか就職っていうのもよくわからないし、ここに就職ってどういうことでしょうか?」
ジョブコーチ「就職は就職だ。人間に取り憑いて精を吸う。障がい者の場合我々ジョブコーチも憑くが」
男「付くんじゃなくて憑くんですか! って言うより精を吸うってできるんですか?」
ジョブコーチ「健淫なものと同じようには当然できない」
男(またわからない単語が出てきた)
ジョブコーチ「例えばキサマが偶然パンチラを見てドキッとしたとする。そのときちょっとだけ精が放出されるのでそれを吸ったりするのだ」
男「えええええ」
ジョブコーチ「重度の痴的障がいを持つサキュバスにはそれも無理だから、教会か修道院への就職を考えていたのだ」
男「え、教会って…そんなところに就職?したら、退治されてしまうのでは…?」
ジョブコーチ「退治? ははは、何を言っている。人間に我らを退治するなどできるわけないであろう。 我らは魔界の眷族だぞ?」
男「いや、でも聖水や、ほら、神の力とかで…」
ジョブコーチ「聖水なぞただの水だろう。あと神などいるわけないだろう」
男「淫魔はいるのに!? それにエクソシストだっているかもしれないし…」
ジョブコーチ「実習中もエクソシストがどうこう言ってたな。結局ただの人間だろう」
男「※淫魔個人の感想であり、実際のキリスト教・カトリックなどとは違うことがあります」
ジョブコーチ「キサマは何に気を遣っているのだ」
男(教会とかでどうやって精を吸うんだろう…)
ジョブコーチ「そんなわけでキサマのところへの就職は正直悩んだのだが、やむを得ない」
男「では、これからもずっとサキュバスさんがここに来るんですか?!」
ジョブコーチ「ああ、就職すればそうなる。しかし覚えておけ」
男「?」
ジョブコーチ「その場合サキュバスに少しでもエロいことをしたり見せたりしてみろ。精を吸い尽くす前にキサマの血を全て吸い尽くしてやるぞ?!」グワッ!
男「デ、デビルマン!」ガクガク
ジョブコーチ「以上の話はサキュバスにはもうしてある。サキュバスはこの話承諾したぞ。キサマはどうする?」
男「え?」
ジョブコーチ「今回はキサマにも拒否権を与えてやる。しかし答は決まっていそうだな」
男「はい! お願いしますっ!」パアァ
ジョブコーチ(ニヤリ)「おい、そういうことだ。サキュバス、入ってこい」
サキュバス「男さん…」キラキラ
そこには微かに涙を浮かべながらも満面の笑みで立っているサキュバスがいるのだった
男「サキュバスさん!」グスッ
ジョブコーチ(特殊体質の人間と痴的障がいを持つサキュバスか。これからどのような物語を紡いでみせてくれるのかな)フフフ
〜男とサキュバスの物語は、いま始まったばかりだ〜
後輩「最終回じゃないっスよ。もうちっとだけ続くっスよ」