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161 対抗策

 俺の打倒魔王ステラ宣言。これを受けてケネスがどう反応するのかと様子を伺っていたら、ケネスはゆっくりと立ち上がり、こちらに手を差し出してきた。


「魔王ステラを倒す。その一点で利害は一致している。これからは仲良くやっていこうぜ」

「ああ、よろしくな」


 俺は迷うことなくケネスの手をつかんだ。これでもう後には引けない。


 ケネスと交わしていた手を離してソファに座り直すと、隣からやれやれという風に小言を漏らす声が聞こえた。


「本当にいいの? あなたが手を結んだ相手は古参悪魔として恐れられている、あのケネスなのよ」

「わかってるさ。だけどいまは少しでも情報がほしい」


 これまでフィオナと話す機会はあった。だけど千年前のできごとになるとどうも口が堅くなる印象があった。それはおそらくこれからも変わらないだろう。


 それに比べてケネスは隠すことはないとばかりに何でも答えてくれる。ハッキリ言ってもっと前からケネスと交流をもっていれば良かったと思うぐらいだ。


「なあ、こうして俺たちに協力を求めてるってことは、魔王ステラを倒す方法のめどは立ってるんだろ。だけどそれをおまえ一人で行うのは難しい。違うか?」

「いいや、違わない」

「それじゃあそろそろ聞かせてくれ。あの深淵の姫君をどうやって倒すのか」

「なに、そんなに難しい話じゃない。要は不死身のステラに深淵が宿っている。これが根本的な問題なんだ。だったら一時的にでもいいからステラと深淵を切り離せばいい」

「言うのは簡単だけれど、いったいどうやるのよ?」


 当然の疑問はセレンから出た。


「切り離しに関しては俺がやる。というか俺以外にはできないだろう」

「その切り離しというのは千年前に試さなかったの?」

「試していない。というよりも当時は封印すれば役目を終えられると思っていたから考えもしなかった」

「なるほど。そうなるとその切り離しというのは」

「ステラ相手には初めてだ」


 あっけらかんと言うけど、それは大丈夫なんだろうか?


 俺の不安を感じ取ったのか、ケネスは不敵な笑みを浮かべて続ける。


「安心しろ。やり方についてはこの千年の間に考えて、悪魔相手に何度も試してる。問題はない」

「……わかった。そこについては任せる。それで切り離しをした後は?」

「おそらく一時的にステラの意識が天使の頃のものに戻るはずだ。その状態のステラを殺せばいい」


 ケネスはそう得意気に語ってみせるが、これには根本的な問題がある。


「それは無理だろ。深淵を切り離したところでステラであることに変わりはない。肉体を消滅させたとしても復活するんじゃないのか?」

「ああ、だから殺さずに殺すんだよ」


 これはからかわれているのか? それとも人間の常識では理解できないだけで、精霊に近いケネスとしてはこれで意味が通じているのだろうか。


 俺が考え込んでいると、セレンが困惑と不機嫌が混ざったような低い声で聞き返した。


「言ってる意味がわからないのだけれど、いったいどういうことなのかしら?」

「シルヴァリオ、おまえならわかるんじゃないか」

「いや、俺もわからな――」


 そこまで口にして、自分でもあり得ないと思えるような考えが頭をよぎった。


「もしかして転生させるのか?」


 半信半疑で出した答えに、ケネスは頷きを返してきた。


「いや、だが転生させたところでステラの魂がなくなるわけじゃない。切り離した深淵はステラのところに戻るんじゃないのか? 現に俺が悪魔から人間へ転生したとき、深淵は無くなったりしなかったぞ」

「おまえのように死後の世界を経由せずに転生したらそうなる」

「経由せずにって……じゃあこういうことか? 死後の世界を経由するようにステラを無理やり転生させて、ステラの魂に付いている深淵を煉獄に誘導する」


 はたして俺の読みはあっているのか。正否は小さな拍手とともに告げられた。


「狙いとしてはおまえが言ったとおりだ。とはいえまだ机上の空論。ここから細かいところを詰めて行く必要がある。悪魔が使える転生は死後の世界を経由しないから改善が必要だし、深淵が想定通りに煉獄へ誘導されるとは限らない。場合によっては行き場をなくした深淵が現世で暴走する可能性だってある」


 考えるべきことはいくつもある。だけどなにも取っ掛かりがない状態からある程度ゴールが見えてきたことで、精神的に少し余裕が生まれた。


「それでもなにも対策がないより全然マシだ。あとはどうやったら解決できるか考えればいいだけだろ」

「簡単に言うが、それが難しいんだぞ」


 ケネスは大げさに肩をすくめてみせ、それがどれだけ大変なのかをアピールしている。


 俺としては他に選べる道がない以上、あとは突き進むだけだ。どれだけ大変だろうが関係ない。


「ところでどうしてケネスはギルドと手を組むことにしたんだ?」

「理由はいくつかある。まずフィオナと勇者がステラを封印するために行動しているはずだから、それを止めてもらいたい」

「どうしてそれをギルドに頼むんだ?」

「単純に俺では話を聞いてもらえない可能性が高いからだ。いきなり俺が手を組もうと話を持ちかけたところで素直に聞くわけがない」


 さっき聞いた話が真実ならケネスとフィオナの関係はよくないだろうし、アリスに関してはついこの間精霊の里で戦ったばかりだ。ケネスが二人に協力を持ちかけてもうまくいかないだろうなと容易に想像できる。


「なるほど。他には?」

「俺はステラから深淵を切り離す作業で手一杯になるはずだ。その間にステラの勢力を抑えておくための戦力がいる。さらにいえばこの作戦の最大の要である転生魔法の使い手の確保も必要だ」

「ギルドならそれが賄えると考えたのか。ただの戦力って意味ならギルドである程度確保できるだろうけど、転生魔法の使い手はどうするつもりだったんだ?」


 転生魔法は高位の悪魔だけが使える固有魔法のようなものだ。普通の人間に扱えるものじゃない。当然、ケネスもそれは承知のはずだ。


「それは悪魔側から確保するつもりでいた。過去形なのは俺の知り合いが全滅してるからなんだが」

「それってロザリーやグラードのことだよな」

「ああ。フィオナに追いかけ回されたあとも悪魔たちと関係を持ったのは魔王ステラとの戦いを見据えてのことだったんだが、幸いなことにいまはおまえがいる」

「俺がいなかったらどうしてたんだよ……」

「最悪の場合、オーロラに頭を下げて協力してもらう腹づもりでいた。あいつなら転生魔法ぐらい簡単に扱えるはずだからな。それになんだかんだで人間を守る立場にある。魔王ステラを倒すためと分かれば否とはいわないはずだ」


 ケネスとオーロラの関係がどういうものなのか気になるけど、別にわざわざ話の流れを折ってまで聞くことでもないか。


「じゃあもしもの場合はオーロラに頼むとして、とりあえず俺が転生魔法を使うって前提でいいのか?」

「それでいいだろう」

「わかった。ステラへの対策は新しい転生魔法を開発するって方針でいいとして、魂が還る場所ってのを見ないことには誘導もなにもあったもんじゃない。ケネス、おまえはそこに行けるのか?」

「当然だ」

「俺を連れて行くことは?」

「一応、可能ではある」

「なんか微妙な言い方だな」

「昔、転生魔法の研究に協力してくれた悪魔が、手伝う代わりに黄泉(よみ)を見せてくれと言ってきてな。そのとき初めて自分以外のやつを連れて行ったんだ」

「それでどうなったんだ?」

「……まあおまえなら耐えられるだろ」

「ちょっと待て、本当になにがあったんだ!? というか大丈夫なんだよな?」


 ちょっと強めに聞くと、ケネスはなにかをごまかすように頬をかいて視線を泳がせた。


 これ、下手すると死ぬんじゃないか?


「大丈夫だ。ちょっと強火の煉獄に焼かれて死にかけただけだし」

「それぜんぜん大丈夫じゃないやつ」


 ケネスから返ってきた答えは、俺の不安を解消してはくれなかった。


「いや~あのときはさすがの俺も焦ったね。協力してくれるやつを見殺しにするわけにもいかないから全力で守った。まちがいなくあのときの俺は本気だったよ」

「死にかけてるなら守れていないじゃない」


 セレンがあきれたようにツッコミをいれるが、ケネスは気にしていないようだ。


「つまり多少の危険はあるけれども、最初から対策をしておけば問題ないってことだ。あのときもちゃんと生きて連れ戻せたしな」


 ケネスは自信満々に胸を張っているけど、不安しかない。


「……まあいいや。ところで転生魔法の改造を担当するのってもうだれか決まってるのか?」


 俺がそう尋ねると、ケネスは隣に座るギルド長を指差した。


「こいつの祖父を紹介してもらった」

「なるほど。たしかにノーブルなら解決できるかもな」


 なんせノーブルは転生魔法で人間に生まれ変わった実績がある。俺みたいにたまたま人間に転生したんじゃなくって、狙ってやったんだから研究もしただろう。ただ難点は研究をした当時の記憶がどれだけ残っているのかという話だ。ノーブルもだいぶ年がいってるし、忘れてる可能性もあるよなと、そこまで考えてからふと思い出した。


 ノーブルは前世のことは隠しておきたい感じだった。ケネスと会わせるのはマズいんじゃないか? なんせケネスは魂を直接見ることができる。ほぼ間違いなくノーブルの正体にも気づくだろう。


「ケネスとノーブルってもう顔合わせをしたのか?」

「ああ、昨日済ませている」

「どんな印象だった?」


 ケネスは質問の意図を理解したのか、意味深に一度頷いて見せた。


「初めて会ったがうわさ通りの博識ぶりで期待が持てそうな人物だったよ」

「なるほど」


 初めて会った。つまりノーブルの悪魔時代のことはギルド長たちに話す気はないってことだろう。俺が気を遣う必要はないのかもしれないけど、少しだけ安心した。


 俺たちのやりとりに違和感を感じたのかギルド長が一瞬眉をひそめたけれど、特に口を挟むつもりはないようだ。


「ノーブルを黄泉ってところに連れて行ったりはしたのか?」

「いや、そこまではまだしていない」

「じゃあこの後ノーブルのところに一緒に行こう。それで黄泉に連れて行ってくれ」

「わかった」


 ケネスから黄泉に行く件の了承をもらった。これで転生魔法の研究を進めることができそうだ。


 次はアリスとフィオナが魔王ステラを封印しようと行動する前に、二人の居場所を探し出して説得する必要がある。だけど二人がどこかに隠れているようであれば俺一人で探し出すのは難しい。本当なら自分で探し出したいところだが、こういうときは人員の豊富なところに協力を願い出るべきだろう。


「せっかく新しい転生魔法を開発しても、その前にアリスたちが魔王ステラの封印に動いたら意味がない。俺はケネスとノーブルに協力して転生魔法の開発に注力した方がいいだろうし、ギルドでアリスとフィオナの探索をしてもらえないか」


 ケネスがギルドに協力を求めた理由に二人を止めてほしいとあったからすでに依頼済みかもしれないけど、俺からも改めて協力を願い出た。


「頼まれるまでもない。実をいうとフィオナ様とアリスの行方についてはケネスから協力を持ちかけられた段階で探し始めていたんだ」

「そうなのか? さっきはそんなこと言ってなかったのに」

「ケネスを紹介する前だったからな。さっきの段階でギルドが二人を探していると言っても怪しいだけだろう」

「たしかにな」


 ギルドからすればわざわざ労力を割いてまで二人を探す理由がない。だというのになんで捜索しているんだと疑問を覚えただろう。


「ギルドがアリスとフィオナを探してるのは二人を止めるためなんだよな?」

「ああ。放って置いたら二人を中心にして、魔王ステラの封印が行われるのは間違いない。それで再び平和が戻ってくるならそれもありだが、やっていることは面倒を未来に押しつけてるだけだ。他に手がないのであればそれも仕方ない。だが別の道が示されたいま、一度は試してみるべきだろう」


 俺のアリスを死なせたくないという理由とは別に、ギルド長も魔王ステラは倒せるならいまの時代に倒しておきたいって考えなのか。


「それじゃあ二人の探索はギルドに任せる」

「ああ。二人を見つけたらすぐに知らせよう。シルヴァリオは魔法の開発に集中してくれ」

「魔王ステラへの対抗策と、アリスたちの探索について方針は決まった。あとなにか話しておくことってあったっけ?」


 セレンに確認すると「ギルドの今後について話を聞くんじゃなかったのかしら」と苦笑混じりの答えが返ってきた。


「ギルドとしてはケネスと協力して魔王ステラを倒す方針で動く。それはこれまで話してきたとおりだ。他になにか聞きたいことがあるのか?」

「ヴィルダージュへの対応はどうするんだ?」

「そっちの話か。もしこの都市や各地にあるギルド支部を攻めてくるようであれば応戦するが、基本的には中立を貫くつもりだ」

「他の国に対しての侵攻なんかは静観するってことだよな?」

「そう受け取ってもらって構わない」


 ヴィルダージュは世界中に宣戦布告をしている。どこかの国だけに肩入れするということはできないだろうし、だからといってすべての国に対してギルドが手を差し伸べるのは現実的じゃない。


 それに治癒魔法が使えなくなったいま、回復薬を作れるギルドの価値は高い。ギルドが優先的に狙われる可能性は十分考えられる。よそに戦力を出すような余裕はないだろう。


 そう考えると中立を貫くというギルド長の考えは、冷たいようだが妥当な判断だと思える。


「仕方ないのかもしれないけど、どうにかできないかな……」

「ヴィルダージュとグレイル、そして魔王ステラが協力関係にある以上、すぐに他を心配している余裕はなくなるだろう」

「どういうことだ?」


 ギルド長は腕を組み、眉を寄せて厳しい表情を作った。


「アルバとレイザーの報告を聞いた限りでは、アスラ皇帝は魔王ステラやグレイルの力も使って世界征服を進めるのではないかと思う。もしそうなった場合、従来の戦争とは異なる流れになるだろう。普通の戦争では兵や食糧、武具などの輸送関係で地理的に遠い国を攻めるのには膨大な時間と資金、物資が必要だ。資源に乏しいヴィルダージュが戦争を何度も繰り返せるほど備蓄があるとは思えない。勝った後も優秀な武官、文官といった配下がたくさん必要になる。それは国が大きくなればなるほど必要な人材が増えるということだ。もろもろ考慮すると世界征服なんて労力に合わない。だが魔王ステラ、そしてグレイルの協力があればそれらを無視できる可能性がある」


 人間同士の戦いと、悪魔が絡む戦い。その一番の違いは転移魔法が使えるかどうかだ。


「もはや距離は関係ないってことか」

「そういうことだ。あとはそうだな……戦争といったが、なにも正面からやり合うだけが戦いじゃない。たとえば国の上層部を洗脳すれば戦わずに支配下に置くことも可能だし、優秀な手駒が簡単に手に入る。実際いくつかの国は戦う前からヴィルダージュの手に落ちているような状況だ」


 洗脳という言葉が出たところでセレンが手をギュッと握りしめ、顔をしかめた。以前、アンジェリカさんたちが洗脳されたときのことを思い出したのだろう。


「いまはまだヴィルダージュの近くにある国が優先的に狙われているが、すぐに海を越えたアルカーノや聖教会といったところにも手が伸びることだろう」

「悠長にしていられる時間はなさそうだな」

「ああそうだ。それに魔王ステラへの対策は話したが、ほかにも気を付けるべき相手はいる。おまえから見てアスラ皇帝と剣神ミツルギの実力はどうだった? もし次戦うことがあれば勝てそうか?」


 空島での戦いを思い返してみる。実際に剣を交えたミツルギの実力はある程度予想がついているが、アスラ皇帝の方は他の人と戦っているところを横目で見ていただけだ。しかしそれでもアスラ皇帝がヤバいというのは本能が理解している。


「……厳しいだろうな。ミツルギの方は相打ち覚悟で挑めばどうにかなるかもしれないけど、アスラ皇帝の方はまだ底が見えてない。何の確証もないただの勘だけど、ミツルギよりもアスラ皇帝の方が強いと思う」


 技術的な話では長い年月を積み重ねているミツルギの方が圧倒的に上だろう。だがそれを凌駕するなにかがアスラ皇帝にはあると感じた。


 実際にあの場にいたセレンは、俺の見立てが意外だったのかポカンとしている。


「アスラ皇帝の方が強いって本当? 天照で強化した結界は厄介そうだったけど、あれだってアリスが破っていたじゃない」

「あの結界は面倒だけど、極論力任せに破れるから問題ないんだ。それよりも天照と深淵の両方を使って攻勢に出られた場合にどうなるのか予想がつかない」


 率直な意見を口にすると、ギルド長は眉間にしわを寄せた。


「おまえでも厳しいとなると、他の者では話にならないな」

「転生魔法の開発があるから修行をしてる余裕はないし、手っ取り早くなにか強くなれる方法でもあればいいんだけど……」

「そんなことができれば誰も苦労はしない。現実的なところでギルドが開発した薬を飲むとか、そんなところか」

「でもあれって一時的にしか強化されないんだろ? しかもしばらくすると弱体化するんじゃ、使ったあとに撤退できる状況でしか役に立たないだろ」

「ふむ……たしかに弱体化は解決すべき課題ではある。だがその研究には時間がかかる。すぐにどうこうできるものではない」

「そうだよなぁ。じゃあさ、弱体化する前にあの薬をまた飲むとどうなるんだ?」


 強化時間が延長できるのであれば有用じゃないだろうか。そんな程度の思い付きではあったが、ギルド長は大きく顔を左右に振ってその可能性を否定した。


「連続服用はできない。二本目を飲んだ時点で意識を失い、それから三日三晩寝込んで戦いどころじゃなくなる」

「すでに検証済みか。というか意識を失うって危険すぎるだろ……」


 俺とギルド長が話している最中も、セレンがずっとなにか考え込むようにうつむいていたのが気になった。


「セレン?」

「えっ? あぁ、ごめんなさい。ちょっと考え込んでて聞いてなかったわ」

「なにか気になることでもあるのか?」


 セレンはなにか迷うように目を下の方にそらして口を結んだ。


 しばらく待っていると、セレンはなにかを決心したかのように面を上げて、体ごと俺の方を向いた。


「いまよりも強くなる方法があるかもしれないって言ったらどうする?」


 そう口にしたセレンの表情は真剣そのものだった。どうやら冗談でもただの思い付きでもないらしい。


 ギルド長とケネスが興味深そうにセレンを見ている。


「詳しく聞かせてくれ」


 俺はセレンの瞳をまっすぐ見つめてそう言った。


「わかったわ。ただ……あなたが大変な思いをするかもしれないけれど、大丈夫?」

「具体的にどう大変なのか教えてくれないとなんとも言えないけど、たぶん大丈夫じゃないか」


 なにか特別な修行方法で肉体的、精神的に苦痛が伴うとかならなにも問題ない。その程度で強くなれるならむしろ大歓迎だ。そんな風に考えていたら予想外の答えが返ってきた。


「そうね。一言で言うならシヴァ――あなたは英雄として歴史に名を刻む覚悟はある?」

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