風の使い魔 1
どうもM.Mです。
「ハァハァハァ、ハァーー」
「危なかったーー、ギリギリセーフ!」
路地裏に入り、追っ手から逃れた2人は休憩を取っていた。
「にしても情けないなースウ、こんなことで息切らしてたらいざとなったら戦えないぞ」
「ハァーゲホッ、荷物全部持ってんの僕なんだよ。そもそもこの国に入る時兄さんが関所で両替を忘れ……」
「にしてもこの街でかいなー!」
「最後まで話を聞けーーーい!!」
「キャッ!」
二人の漫才のような会話の中、聞きなれない高い声が挟まる。
「ねーちゃん、ちょーっとお金分けてくれねーかなー?分けてくれたら何もしねぇよ」
ヤンキー?不良?そんな三人組が道を塞ぐように寄ってくる。
「はぁー、どこ行ってもこれだからなー」
「部外者はグボッッ!!!」
真ん中の男に膝蹴りが入る。その蹴りは数メートル先にいたはずの少年の蹴り。隣にいる二人は気付かない。いや、気づけないと言った方がここでは正しいだろう。少年の後に風が吹く。その風は隣の二人を壁に飛ばし気を失わせるには充分過ぎる威力だった。
「いっちょあがり!」
「怪我はありませんか?」
何が起こったかわからないっといった顔した少女が呆然と立ち尽くしていた。
「おーい」
「は、はい!だ、大丈夫です!助けていただきありがとうございます!」
テンプレートな返事をした少女は深呼吸を二回して落ち着いたらしい。
「私はミノル・ロセウスと言います。何か恩返しがしたいのですが私に出来ることはありますか?」
「僕はスウス・アーテル、スウって呼んでね。こっちは兄さんのヴィス・アーテル」
「よろしく」
「はい、スウさんヴィスさんこの街は初めてですか?」
「うん、今日の朝着いたところだよ」
「じゃあ宿とかは……」
「まだだね」
「私の家が宿屋をやってるのでそちらに行きませんか?お礼もしたいですし」
「じゃあお言葉に甘えようかな?いいよね兄さん?」
「せっかくだしな」
「じゃあ行きましょう!」
……
…………
コンッコンッ
「入れ」
大きな扉の奥から声がする。それは太く強いものだった。
「随分と馴染んじゃないか」
「ああ、お陰様でな」
扉から入った女は持っていたスーツケースを置いた。
「じゃあこれが最後だ、私は手を引かせてもらうよ」
「わかった金は後で使いの者を渡す」
「了解、身体に気を付けなさいよ。身体にね」
その言葉は後のことを察したように注意深く放たれた。
暑いですね。