99 戦国勢力地図
俺の特技である、見なくても描ける日本地図はとっても好評だった。月谷和尚さまだけじゃなく、熊もリーダーもみっちゃんも欲しいというので、優しい俺は全員に描いてプレゼントした。
最初に手習いの紙の裏に描いた戦国勢力地図は俺が持ってるけどね。
だって色々と面白いし、勉強になるからな。
それにしても、月谷和尚さまって本当にスーパー爺さんだよな。若い頃から全国を布教して歩いたらしくて、色んな国を知ってるんだ。北は青森、南は博多の辺りまで行った事があるらしい。
しかも下野国足利荘五箇郷村ってとこにあった足利学校って呼ばれる、現代で言う東大みたいな最高学府で教えてたこともあったらしくて、その時の生徒から今でも連絡が来るから各地の情勢に詳しいらしい。
なるほどな~。だからあんなに物知りなんだな、と納得したね。
やっぱり今も昔も、人脈が大切だってことだ。うむ。
ただこの地図だと北海道が空白なんだよな。今だと蝦夷って言うんだっけ? まだ開拓はされてなくて、アイヌの人がいっぱいいるのかね。
でも真っ白っていうのもつまらないな。
よし。ここの函館のところにウニの絵を描いて、札幌のところは石狩川繋がりで鮭を描いておこう。
うーん。これ見てると、どんぶりに真っ白い酢飯をよそって、その上にウニとイクラとか鮭を乗せた海鮮丼が食べたくなるよなぁ。
ただ冬でも生ものの輸送は厳しいだろうから、やっぱり現地に行かないと食べられないんだろうな。
でも北海道か。遠いな。遠すぎる。
まず北海道にたどり着くまでに色んな大名の領地を通り抜けないと行けないからな。さすがに織田に友好的な大名ばかりじゃないだろう……って、そもそも織田家のことを知らない国も多そうだけど。しょせん、地方の田舎大名だしな。
いや待てよ。陸路じゃなくて、船って手もあるな。
日本海側は波が荒いから、行くなら太平洋側かな。台風と海賊が心配だけどな。
山賊はともかく海賊なんているのかよ、と思ってたけど、いるみたいなんだよ。
なんとなく海賊はカリブ海とか、あっちのほうにいるようなイメージだけど、瀬戸内海あたりにはたくさん海賊がいるらしい。瀬戸内海まで行かなくても、知多半島にも海賊がいたって聞いてびっくりだ。
なんでそんなの知ってるかって言うとさ、美和ちゃんの義理の父親になる熱田神宮の千秋季忠さんが、この間、海賊を撃退したって話をしてたからなんだけどな。
そしてそんな見ても楽しい戦国勢力地図を、あの珍しい物好きな信長兄上が見逃すはずはなかった。早速、地図を持って清須に来いって命令が来た。
ふっふっふ。信長兄上、いつまでも黙ってゲンコツを食らう俺だと思うなよ。
今日の俺は、今までとは一味違うのだ。言われなくてもちゃんと信長兄上用に清書してある戦国勢力地図を用意してるんだぜ。どーだ。参ったか!
と、意気揚々と地図を手渡したら、信長兄上はわざとらしいくらいの大きなため息をついた。そしてまたゴツンとゲンコツが降ってきた。
今回は結構手加減なしで痛い。
えええええ!?
これはゲンコツ案件じゃないだろう!?
同意を求めて、一緒に来た熊とリーダーに視線を向けたけど、そっと顔を背けられた。ついでに信長兄上の隣にいたツッチーにもだ。
う、裏切り者めー!
「またやらかしたとは聞いたが、これか。なるほどな」
あまりの痛さに頭を抱えてうずくまっていると、またもや大きなため息が聞こえた。ひどいよ。俺が何をしたって言うんだよ。暴力反対!
「して。これは天から見た日ノ本の地図か?」
天から見た地図? ああ、上から見た地図って意味ならそうだな。
「ゲンコツされた頭が痛いです。信長兄上」
「もっと痛くならんうちに答えろ」
うわわわっ。なんでまた拳をグーにするんだよ! だから暴力反対だってば!
「上から見た地図という意味ならそうですよ」
もー! なんでそんな短気なんだよ。もっと心を大らかに、広くだな……
「なぜ島津に注目した?」
ん? 別に島津に注目したわけじゃないけど。
ああ、でもこれから躍進して九州統一するからな。某シミュレーションゲームでも、島津を野放しにしてると、逆に天下統一されちゃうくらい強いんだよな。
「島津は種子島に近いですからね。鉄砲をたくさん持っているので、これから強くなりますよ」
「鉄砲か……」
鉄砲を一番有効活用するのは信長兄上だけど、島津も負けてない。しかもあいつら、バトルジャンキー並みに一人一人が強いからな。ゾンビのように追いかけてくる。
あ、いや。シミュレーションゲームの話だけどな。
「特に『釣り野伏せ』という戦法が有名ですね」
「それはどういったものだ」
「野戦での戦い方なのですが、まず兵を三つに分けます。そのうち二つをあらかじめ敵の進路の左右に伏せて隠れさせておくのです」
「そううまく、進路に隠れられるものか?」
「そこで残りの一つが重要な役割を果たすのですよ」
「ほう」
「真ん中の兵は、まず正面から敵に当たります。そして敗走を装いながら、味方の隠れている場所へ敵をおびき寄せるのです。そして十分に誘い込んだら、反転し、左右に伏せさせていた兵と共に敵を倒すのです」
「なるほど。釣りをして野伏せしている場所に誘い込むというわけか」
「はい。ですから、寡兵を以って兵数に勝る相手を殲滅する戦法と言われておりますね」
「であるか」
それからあいつら、大将を逃がすために、鉄砲隊が残って死ぬまで戦う、ってこともやるからな。ほんと、敵にすると厄介な相手なんだよな。
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