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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
戦国時代に平穏はない

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95 縄張り

 意気揚々と信長兄上にアーチェリーの製作を提案したけど、動物の腱を使って弓を作るのには難色を示された。皮ならともかく他の部分はすぐ腐るだろう、って言われて、確かにそうかもしれないと思った。


 うーん。アーチェリーは無理か~。


 それよりも弓の鍛錬をがんばれ、ってゲンコツを食らった。なぜだー。


 弓もなぁ。結構難しいんだよな。あれ、そのまま真っすぐ射ればいいと思うだろ? だけど、真っすぐ射たら矢は右側に飛んじゃうんだよな。

 ちょっとひねらないとまっすぐ飛ばないんだ。それも持ち方とか力の入れ方で調整する。


 なんていうか、弓本体の機能を上げることによって性能を上げるんじゃなくて、射手の腕前によって性能が上がるっていうのは、凄く日本らしいよなと思う。


 だからこそ弓道として現代にも残ってるんだろうけどな。


 仕方ない。アーチェリーの製作は諦めよう。剛腕のリーダーすまんね。


 さて。今日の清須への訪問は、もう一つ用件がある。明智光秀改め、みっちゃんと頭を悩ませて考えた龍泉寺城の設計図が大体できあがってきたからだ。


 城造りは、「地選・地取り」「縄張り」「普請・作事」の三工程に分けられる。そのうち「地選・地取り」はもう決まってるんで問題ない。


 そして今やっているのが「縄張り」つまり、お城の設計だ。


 龍泉寺は北に庄内川がある小高い丘の上に建てられている天然の要塞だ。庄内側に面している方は崖になっているから、防衛面は南側だけを考えればいいのが利点だな。

 もっとも、既に防衛に必要な空堀なんかは作られてるんで、丘の上に建てられている龍泉寺を利用して、居住区とか天守を作る予定にしているんだけどな。


 形としては丘の斜面を利用して直線状に曲輪くるわって呼ばれる区画を配置する、連郭れんかく式の城になる。南側の斜面は少し緩やかになってるから、斜面を削って階段状に曲輪を設けて攻め難くした。

 つまり、本丸とか二の丸を四角い区画として考えると、大きな直方形の敷地を三つに分けて、その間を段差にして攻めにくくしてあるって考えるといいかもしれない。


 それから丘のふもとに大きな馬出を作って、本丸には三階建ての天守も作る予定だ。


 きっと天守から見下ろしたら、川の向こうの篠木郷も見えると思うんだよな。


 龍泉寺の南側には平野が広がってるけど、そこに小さな城下町を作りたいとこだな。川があるから荷物の運搬には便利だろうし、商売するにも良さそうだな。


 一応、モデルになってるお城はある。信濃の武田方のお城だったかな。名前は忘れたけど、凄い防衛力があったんだけど実際には防衛することなく敵の手に渡っちゃったんだよな。


 なんでそんなお城のことを知ってるかって言うとさ。


 ドラマで真田幸村の話をやった時に、ちょうど歴史オタクの山田と飲んでたんだよ。俺はあんまり熱心にドラマを見てなかったから適当に相槌打ってて、ついうっかり「そういえば、船がまだ出て来ないよな」って言っちゃったんだよな。


 いやだって、真田丸って言ったら、船だと思うだろ普通。その頃は馬出なんで知らないしさ。

 あ、今の時代でも、真田丸みたいな馬出はないみたいだけどな。虎口、つまり正面の門のとこに、中が丸見えにならないように的土あづちって呼ばれる盛土をすることはあるけど。


 馬出の構造が多く見られるのは武田信玄が建てたお城らしい。馬出って言うくらいだからな。馬が出て行くところってわけだけど、普通はそこまで騎馬隊がいるわけじゃない。武田騎馬軍団くらいのもんじゃないかな。史実でも超有名だしな。


 で、そこから怒涛の歴史談議が始まったんだよなぁ。それまでイイ感じにほろ酔いだったんだけど、そこに正座してきっちり聞けって勢いで、山田の講釈が始まったんだよ。


 うん。それで馬出がいかに凄いかは分かった。

 でもって、城跡巡りして撮った写真に加えて、ペーパーナプキンに見取り図まで書いてくれたからさ、その信濃のお城の凄さも分かった。


 酔いはすっかり醒めたけど。


 もっとも、それが今になって役立ってるわけなんだけどさ。いやもうほんと、山田大明神さまだよな。何度も言うけど、いつか夢枕に出てきてくれないかな。そしてその無駄に膨大な歴史知識を披露して欲しいもんだ。


「喜六、これは何だ?」


 縄張り図を見せると、さっそく信長兄上が天守に目をつけた。うん。信長兄上、きっとこういうのが好きだろうなと思ってたよ。


「天守といって、高いところから敵が来るのを見張ったり、普段は武器や防具を置いておいて、いざという時には籠城できるようにしておく、防衛施設です」

「ほう。ではこれは?」

「こちらは馬出と言って、敵に攻められた時に虎口が丸見えになるのを防ぐと共に、敵が入ってくるのがこの両端の入口からなので一度にたくさん攻めてこれなくなるものです。ですから大手門を閉めてしまえば狭間から敵を狙い撃ちにできます」


 狭間っていうのは、壁に開けた攻撃用の穴だ。ここから矢を射たり鉄砲を撃ったりして、敵を攻撃するんだな。

 つまり馬出を作ることによって入ってくる人間の数を少なくして狙い撃ちするという、籠城の際には非常に有効な攻撃手段が取れるわけだ。


「ほう。なかなか良いな。これを光秀と共に考えたのか」

「はい」


 もっとも、俺は天守と馬出の説明だけして、後はほぼ丸投げだったけどな。みっちゃん、サラサラと設計図書いてったけど、さすがにハイスペックだなぁ。俺の希望通りの設計図ができたよ。


 これはあれだな。本能寺の変フラグをへし折って、めいっぱい働いてもらうのが一番な気がするな。


「馬出はいいが、天守の建築はならぬ」

「ええっ。どうしてですか!?」

「このうつけが! 清須より目立つ城を造ってどうする!」


 大声で怒鳴られて、げんこつが降ってきた。


 えー! なんでダメなんだよー!

モデルのお城は伊那大島城です。

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